増える色水
最近、ペットボトルに入った謎の色水が増殖中である。
本日3本目。
1本目は小ぶりのペットボトル、2本目は一般的な500mlのペットボトル。そして、本日、2リットルのペットボトルに入った色水が、台所にデーンと置かれた。
息子によると、学校でスライムを作ろうとしたらしい。しかし、全部シャバシャバなのである。
台所の床に、ペットボトルが3本。私がすぐに処分しようとしないのにはワケがある。
かくいう私も、似たようなことを小学生時代にやった。当時、クーピーペンシルというのが「新しい色鉛筆」として流行った。私も誰からからのいただきもので、持っていた。
クーピーの利点でもあり難点は、本体が芯であるという点だ。細かなところを塗りたいと思って削るのだが、その削りカスがもったいない。捨てるにはしのびないのである。
そこで私はひらめいた。「このカスを溶かして固め直したらまたクーピーができるのではなかろうか」と。無限クーピー爆誕の瞬間である。
溶かすといえば、鍋。鍋に直接入れて熱するのはこわかった。このあたりから雲行きがあやしくなる。鍋に水を入れる。クーピーの削りカスを入れる。煮る。
何も起こらない。私がその”実験”に使用したクーピーは鮮やかな緑色。沸騰する湯の中でその緑のヤツが踊っているだけだった。
しかし私は諦めない。溶けなかったけれど、固めたい。私の母も、鍋くらいまでは貸してくれたが、それ以降は豆腐の空きパックなどでやれということで、空きパックに形状が一切変わらなかった削りカスを入れることにした。そして、私は同じくらい鮮やかな緑色の絵の具を入れ、水を少し入れ、緑色の色水にした。その頃はもう、削りカスはどうでもよくなり、「この色水をクーピーの形状しつつどう固めるか」ということに考えが集中していった。
私はストローを豆腐の空きパックに入るくらい短くし、そこに色水を入れた。シャバシャバだから、とても苦労した。両サイドはがんばってラップでくるんだ。輪ゴムで留めたように思う。そして豆腐の空きパックへ。
母親が私に尋ねる。「それでどうするの?」
もちろん、冷凍庫行きだ。暑い時期にやった記憶がある。それは勿論固まった。色水の氷ができた。
でも、私も知っている。それはクーピーでもない、ただの氷だ。しかも食べられないやつ。何回か冷凍庫を開けて見た。でも、みぞれ状になった色水が見えるだけだ。冷凍庫をそっ閉じする。そのうち、意識してその「緑のみぞれ状のヤツ」を忘れようとしたが、捨てようとは全く思わなかった。
半年くらい経ったある冬の日。冷凍庫の片隅で、霜もつきながら、ひっそりと鎮座している豆腐の空きパックに入った「色水氷」を指しながら、とうとう母は言った。「これいつまでこうしておくの?」
「もういいや。捨てる。」
エコなひらめきをした私であったが、ただただ、緑色の絵の具と水を無駄に使っただけとなった。
歴史は繰り返す、ということだろうか。息子に尋ねたところ、「ホウ砂」を入れすぎて、固まらなかったのだそうだ。例えば何かを追加したり減らしたりしたらスライムになるのではないか?と尋ねたところ、「何にもならない」とのこと。
捨ててよいか尋ねたら、「でもジュースっぽいからいいじゃん」。なるほど、目で楽しむということか。
多分、こいつらも、あのときの「色水氷」と同じように、年明けくらいまで狭い台所近辺に鎮座しつづけることになるのだろう。
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