【肥満で使用される漢方】
皆さんこんにちは
産婦人科医の内田美穂です。
皆さんの疑問に思っていることにお答えしていきながら、産婦人科を身近に感じていただくことでかかりつけの婦人科を探す際のご参考にお役に立てればと思っています。
今回は、「肥満に対してよく使用される漢方」について防風通聖散を中心にお話したいと思います。
ドラッグストアで販売している肥満の漢方は、名称が違っていても「防風通聖散」であることが多いので商品の内容を確認してみてください。
防風通聖散(ボウフウツウショウサン)
防風通聖散は代謝を上げて、汗や便、尿から体内の余分なものを排泄するという作用があります。
また下剤成分の大黄(ダイオウ)や芒硝(ボウショウ)が配合されているため、便秘を解消する際にも有効です。
肥満に使用されるイメージが強い漢方ですが、江戸時代では肥満の方の皮膚疾患にも使用されていました。
肥満を改善するメカニズム
肥満を改善するメカニズムについて説明します。
脂肪組織には、全身に中性脂肪としてエネルギーを蓄積する「白色脂肪細胞」と、余剰エネルギーを熱として体外に放出させる「褐色脂肪細胞」があります。
防風通聖散は、体内に脂肪を蓄積する白色脂肪細胞での脂肪分解作用に加えて、褐色脂肪細胞を活性化させて脂肪燃焼効果を発揮すると報告されています。
基礎研究から防風通聖散に配合されている生薬の一部が関与していることが示唆されています。
白色脂肪細胞には麻黄(マオウ)
褐色脂肪細胞には甘草(カンゾウ)、連翹(レンギョウ)、荊芥(ケイガイ)の成分が関与しているといわれています。
これだけ聞くと防風通聖散がダイエット薬として最適であるかのように思えるかもしれませんが、残念ながら漢方だけを服用しても肥満は改善されません。食事療法と運動療法の併用が必要です。
また、効果発現についても非常に時間がかかります。
副作用について
最近は多くの医療機関で痩身目的にこの漢方が処方されていますが、処方数と比例して副作用報告も増えています。
肝機能障害や間質性肺炎、含有成分の麻黄による副作用などが挙げられます。
▼麻黄の副作用についてはこちらの記事でお話ししています!
漢方は副作用がない安全な薬と思われがちですが、市販薬やサプリメントも含め副作用がない薬はありません。
どのお薬でも副作用の可能性があるということを理解していただき使用してください。
そして安全に使用していただくためにも定期的な検診を受けることをお勧めします。
その他、肥満に使用される漢方
最後に、肥満に使用される防風通聖散以外の漢方についても簡単にご紹介します。
防己黄耆湯(ボウイオウギトウ)
水太りタイプの方で汗をかきやすい、筋肉のしまりが少ない方に使用される漢方です。
大柴胡湯(ダイサイコトウ)
固太りのがっちりタイプでストレスをため込む方向けの漢方です。
どれも肥満体質の方に処方される漢方ですので興味のある方はかかりつけ医にご相談ください。
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