戦略のシンプルだけど重要な本質
社会人人生の中で「戦略」という言葉は何度も耳にするキーワードだと思います。ただ、「戦略」というタイトルがついているスライドには「目標数値」や「気合と根性」が掲げられているだけで、”「戦略」というものは一体何なんだろう?”と思うことが多々あったり。単に穴埋め式にテンプレートに、ブレインストーミングしたみんなの意見の寄せ集め、になっていることも。「戦略」というキーワードは雰囲気で使われていて、それを明らかにし実装することは、リーダー陣にとっても非常に難しいものであると言えます。
そんな永遠の課題とも言える「戦略」について理解するために、リチャード・P・ルメルトの『良い戦略、悪い戦略』を読んだところ、とても良かったので、今回は『良い戦略、悪い戦略』で説明されている一部についてご紹介したいと思います。戦略の基本構造や強固にするためのポイントが企業や政府機関(軍事なども)の事例も含めて理解できる良書です。
ちなみに、リチャード・P・ルメルトは、ハーバードビジネスレビューの経営思想家トップ50の第20位に入るような方です。
https://www.dhbr.net/articles/-/1802
ちなみに、以下のツイートにぶら下げて気になったハイライトを共有しています。本書の内容で刺さる文章だったのでこちらもご参考ください。
戦略とは
戦略と戦術の違いはもとい、目標と戦略も混同しがちです。まず、戦略とはどういうものかをトップレベルで理解するのにいいのは以下の文章かと思いました。
戦略策定の肝は、つねに同じである。直面する状況の中から死活的に重要な要素を見つける。そして、企業であればそこに経営資源、すなわちヒト、モノ、カネそして行動を集中させる方法を考えることである。
ここで重要だと思うのは、「状況」から「重要な要素を見つけ」、「行動を集中させる方法」の3つだと思います。これは、トヨタ生産方式の”現場に降りる”の考え方にも通じますが、そもそも「状況」を知らずして勝つための戦略などたてられない、ということだと思っています。これは意外に見落とされていると思っていて、状況を分析せずに、目標からたどって戦略やプランを立てていたりすることは自分も含めて陥ってしまっているポイントだなと思います。
悪い戦略とは
第3章では悪い戦略の4つの特徴が紹介されています。この章を読むだけでも戦略ではないものが分かるようになると思います。そして、4つの特徴は自分自身も陥っているだろうし、聞いてて違和感のあった戦略プランを思い出させ、耳が痛いところが多く説明されていました。
ちなみに、悪い戦略がはびこる理由として、①困難な選択を避ける、②穴埋めチャート式で戦略をこしらえる、③成功すると考えたら成功する、が挙げられているのですが、その中で『学習する組織』で有名なピーター・センゲを批判している部分があり少しびっくりしました。流れとしては、③の流れで引き寄せの法則などのマインド系本と同類のように扱われていたので尚更です。『学習する組織』では、社員のエネルギーを集中させるために、共有ビジョンを設定するというのがあるようですが(ちゃんと読んでいないのでこれくらいの理解です・・)、これだけでは組織は動かない、これも気合と根性論と同じようなものだ、と言っているようでした。このことから、リチャード・P・ルメルトは実践主義的かつ、実行可能なプランを伴わない戦略は単なるお飾りでしかないというポジションなのかと思いました。
良い戦略の基本構造
良い戦略の基本構造は至極シンプルなものです。冒頭でも紹介したように、状況を理解することがスタート地点となることはもちろん、実行計画として策定される必要があります。良い戦略の基本構造、カーネル(核)は、①診断、②基本方針、③行動、の3つで構成されます。
すごく、普通な感じなのですが、これが1つでも抜けてしまうと戦略として成り立たない、というように僕は理解しました。例えば、いきあたりばったりの行動や、診断を伴わない基本方針の設定などは、イメージしてみると、フワフワと地に足がついていない感覚をもちます。
良い戦略に活かされる強みの源泉
戦略を強固なものにするための源泉として本書では9つのポイントが事例とあわせて紹介されています。これらは頭ではわかっていても、実装は難しいものですが、少しでもこれらの観点を知っておくと打ちての質が変わり大きなブレイクするーのきっかけになる可能性があると思います。
わかりやすいのは「テコ入れ効果」あたりだと思いますが、ここではトヨタやセブン&アイ・ホールディングスといった日本の企業を成功事例として紹介されていました。「テコ入れ効果」は、的確に未来を予測できたり、状況をしっかり理解すると、テコを入れるポイントを明確になり、効果が大きく現れるものです。
セブン&アイホールディングスのCOO 村田氏の例では、日本人は新しいもの好きで多様性を好むという洞察から、店長や店員から地元の好みの情報を収集し、それに即応するためのマーチャンダイズチームを設置し成功した。また、中国ではスーパーは雑多な場所という印象があったため、清潔さを売りとしたところ単位面積あたりの売上がライバルの2倍になったなどの例が挙げられていました。これらの打ち手は単なる思いつきではなく、現状を診断した結果だったからこそ成功したと考えられます。
NVIDIAの事例
戦略を強固にする9つの要素をふんだんに組み合わせている、ということで紹介されているのがNVIDIAです。NVIDIAは「謎の企業」と日経の記事タイトルになった会社でもありますが、GPUを製造販売している企業です。
この事例を読むだけでも本書を読んだ価値があると思います。
すべて捉えきれていない気がするのですが、NVIDIAの戦略とその結果をチャートで表してみました。これを描いていて、「基本方針」はすべての行動や結果をオーケストレートするようなものだと思いました。つまり、「基本方針」である、”6ヶ月毎のリリースをする”ために具体的な「行動計画」がたち、これが実現すると様々な効果が得られるということです。このようなクリティカルパスを見出すのが戦略であり、このクリティカルパスを見出すのが難しいから戦略がなかなか策定できないのだと思いました。
おわりに
今回は『良い戦略、悪い戦略』を紹介していきました。営業戦略、マーケティング戦略、プロダクト戦略・・と戦略という言葉は多く使われているかと思いますが、まずは現状を診断するところからはじめる、というところはとても納得感ありますし、自分自身もなるべくそうするように努力しています。
ただ、現状を観察はできるけれど、ボトルネックになる部分を明確に見出すのがすごく難しいので、このあたりは『ザ・ゴール2』あたりが参考になるかもしれないなと改めてこのあたりを掘り下げてみたいと思いました。
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