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#12 架空鉄道の四象限マトリクス−ほぼ現実の架空鉄道も?

架空鉄道の分類を、四象限マトリクスで考えてみました。

こちらが私が提唱する、架空鉄道の四象限マトリクスです。
縦軸に「土地・今、この時の路線図の現実性」(以下土地・路線図の現実性)を、横軸に「要素(町などの配置、路線の形、車両、ダイヤ、文化)の現実性」(以下要素の現実性)を置いています。縦軸は下半分が、横軸は左半分が架空、もう半分が現実となります。

なおこの四象限マトリクスの限界をあらかじめ記述しておきます。
・各要素は、何かの現実性が高くて、別の何かの現実性が低いこともある。
・筆者の数学的素養の乏しさ
の2点が、現状感じている限界です。

第一象限
【土地・路線図の現実性ー高、要素の現実性ー高】

両方の現実性が最大になったものは、「今、この瞬間の鉄道」です。北陸新幹線が敦賀まで開業し、東北本線の盛岡以北は第三セクターとなっています。
一見、第一象限は現実の鉄道しかないように思えます。しかし過去や未来の鉄道というものは、今この瞬間に比べたら相対的に架空度が高いものになります。リレーつばめやリニア中央新幹線は、少し架空度があるものになるので、これらのダイヤを考えることは、極端に広い意味では架空鉄道と言えなくもないです。

第二象限
【土地・路線図の現実性ー高、要素の現実性ー低】

土地は現実ですが、町や路線図、ダイヤが架空というものです。例えば、小田急線の快速急行が全区間で快速運転をしたり(鶴巻温泉や渋沢を通過するダイヤ)、新幹線が存在しなかったり、福岡市と北九州市を結ぶ私鉄が存在したり、という妄想のもと生まれた鉄道です。
これの最たるものとして、例えば「自動車が禁止の世界」(この場合要素=文化)なんかが挙げられるかなと思いました。自動車がなければ、鉄道が果たす役割は必然的に大きくなるため、考え甲斐があるのではないでしょうか。

第三象限
【土地・路線図の現実性ー低、要素の現実性ー低】

土地も架空で、現実の影響もあまり受けていない架空鉄道です。一般に(そもそも架空鉄道自体が一般的ではないかもしれませんが)架空鉄道と言ったときに、土地が架空である場合を想定したものがこれにあたります。とはいえ、現実の影響は完全には無視できないかと思います(例えば、10分サイクルダイヤや千鳥停車といった現実の知見を使うなど)。
最たる例は、物理法則や言語までもが現実と異なる、ファンタジー・架空言語の世界の架空鉄道でしょうか。


第四象限
【土地・路線図の現実性ー低、要素の現実性ー高】

土地は架空ですが、町の配置の仕方や文化、鉄道車両やダイヤが現実のものに酷似したものがこれにあたります。この架空鉄道が一番ピンときづらいのではないでしょうか。わかりやすい例でいえば、日本の近くに架空の島があるとか、現実の鉄道車両を自分の架空鉄道に流用するといったものです。

しかしそれ以外にも重要なものがあります。
前回の記事でも書いた通り、架空鉄道は好きの上澄みから生まれたものである可能性が高いです。

そしてその好きは、必ず現実の鉄道に対する感情です。現実から影響を受けたその好きな要素は、また現実の別の要素から影響を受けているはずです。

例えば特急成田エクスプレスの運行形態を好きと感じるとします。NEXのその運行形態を支えているのは、首都東京と国際空港である成田空港の距離の遠さ、不便さです。また、山手線の東側と西側、東京から近い衛星都市横浜、成田寄りにあるがために通過されてしまう千葉という影響元も無視できません。
そうした好きな要素とその影響元が増えれば増えるほど、好きな要素と影響元の要素のネットワークは現実と同じようになります。そのため架空鉄道を全国規模で作ろうとした時、土地を架空にしたとしても、好きなものを取り入れようとすれば、現実の日本に非常に近しいものが生まれてもおかしくないのです。

私の作っている架空鉄道の舞台である架空国家日陽が日本に酷似した形をしているのも、現実の日本の鉄道が大好きであり、その大量な好きな要素を表現する場としての架空鉄道を作っているからです。

現実の日本が好きでありながら架空鉄道を作っているのは、現実は刻一刻と自分の理想とする状態から離れていくからです。

変わりゆく現実の鉄道、好きな鉄道が変わっていくことを嘆くくらいなら、自分の理想を体現するための架空鉄道を作ってほしいです。
そのために、この第四象限の架空鉄道のあり方がもっと広まってほしいなと思います。

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