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#11 趣味の芽生え−架空鉄道の趣味的側面

多趣味な人もいれば無趣味な人もいます。こと鉄道マニア、特に架空鉄道作者には多趣味な人が多い印象です。

人が何かを趣味にするその過程は何か。
私の直感では、

・自分の好みを自覚する
・自分の好きなものを調べる
・好きなものを自分で実践する

の三段階だと思っています。


多趣味な人は、好きなものが多いです。好きなものが多いというのは、日常目にするものにアンテナを張り、目にしたものに疑問を持ったり、美的感覚が向いたりしやすいということです。
また好きだと思ったものを、それを好きであると自覚し、趣味の対象にすることを憚らないことも重要です。

そんなことを考えているうちに、架空鉄道をやりたいという気持ちが趣味として芽生えるのはどうしてかという疑問が浮かびました。

好きになったものについて好奇心を持ち、調べることで、趣味として本格的に稼働していきます。展開、仕組み、歴史など、その対象には様々な背景・動きがあります。好きなものについて詳しくなること、マニア化・オタク化していくことで、立派な趣味として成立します。アイデンティティにも繋がります。もちろん、ここでマニアとなることを躊躇しては意味がありません。

そして、好きが講じて趣味の世界に入る人もいます。幼少の頃から鉄道が好きで鉄道員になったり、テレビを見るのが好きで芸能の道に入ったりするのがそうです。

また、自分がその好きなものの世界に入る以外にも、模倣をすることで、「好きの上澄み」を極限まで楽しむこともできます。「好きの上澄み」とはつまり、対象を好きだなと感じる時、対象そのものではなく、その対象が帯びている、「自分が好きだと感じる要素」です。
鉄道で例えるなら、特急ひたちの上野〜水戸間ノンストップが好きだという時の、特急ひたちそのものではなく、ノンストップで走るという要素です。

現実の鉄道が好きで、それを模倣したものが架空鉄道です。それは現実の鉄道が帯びている自分の好きな要素を用いて作り上げたものとなります。上記の例でいえば、特急ひたちに影響を受けて、ノンストップ特急を空想した架空鉄道です。

さて、この三段階を命名するならば、

・自分の好みを自覚する→発見
・自分の好きなものを調べる→探究
・好きなものを自分で実践する→願望・美学

となります。

趣味が多いとは、「好きなものへの興味が湧きやすく、探究や実践に多く踏み出せる」ということです。
架空鉄道作者に多趣味な人が多いのは、逆に、好きなもの・興味に対して行動的な人が架空鉄道を作るから、といえるかもしれません。

最後に、架空鉄道の趣味的側面を改めて考えてみます。

まず、鉄道に興味を持つ、カッコいい・素敵だと思うことです。そしてそれについて調べる、鉄道マニアとしての下地が必要です。
その上で、鉄道の何に惹かれているのかを自己分析し、自分の中の鉄道美学がある閾値に達すると、模倣による架空鉄道を作ろうとします。
ある閾値とは、鉄道に詳しくなる中で、その面白さ・美しさ(好きの上澄み)を自覚し、そのパターンを追い求めるのでは飽き足らなくなった段階(=模倣しようと思った段階)を指しています。現実では物足りなくなったと言ってもいいかもしれません。

趣味としての架空鉄道は、鉄道マニアの模倣段階、現実の鉄道への興味関心が高まったことで、そこから一歩、自分の理想に逸れた状態、鉄道の美学の段階なのかもしれません。

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