Chapter 1-序 「魔晄」の煌めき
人と火の物語
ティファ「ねえ,クラウド。たき火って不思議ね。なんだかいろんなこと思い出しちゃうね」
一言で言えば『ファイナルファンタジーⅦ』とは「人」と「火」の話である
。
レッドⅩⅢの故郷コスモキャニオンには太古から燃やされ続けているという「火」が出てくるのはなぜか。
人と火の物語であるから,FF7の主要登場人物はすべて火に関係している。
クラウドの名前(Cloud Strife)には火(fire)が隠されている。
エアリス(Aerith Gainsborough)にはラテン語の火(ignis)が。
その他,クラウドのパーティー「全員」火に関係している。
ファイナルファンタジーⅦを理解するために,この論考は「火」を考えることから始めなければならない。
どんな行為も平気でやり遂げる人間は,禁じられた非道の行いへとまっしぐらに突き進む。
大胆にもイアペトゥスの子(プロメテウス)は,悪しき奸計を用いて人類に火をもたらした。
火が天の館から盗まれた後,困窮と新しい熱病の群れが大地を襲い,
かつては遠ざけられ,ゆるやかに訪れた死の必然は,その歩みをはやめた。
ダエダルスは人間に許されぬ翼をもって広大な空に挑んだ。
ヘルクレスの功業は,アケロン(冥界)まで突き破ったのだ。
人間にとって,困難なことは何一つない。
人間の愚かさは,天そのものを乞い求め,我々の罪により,
ユピテルが怒りの雷を投げ落とすことすら許そうとしない。
(ホラティウス『ホラティウス全集』玉川大学出版部 鈴木一郎訳)