錦織士朗

FF7Rを真に深く楽しむために。FINAL FANTASY 7の秘密を公開します。「ゲームを文芸評論の対象に」を合言葉にFF7のテクスト分析を試みる。

錦織士朗

FF7Rを真に深く楽しむために。FINAL FANTASY 7の秘密を公開します。「ゲームを文芸評論の対象に」を合言葉にFF7のテクスト分析を試みる。

マガジン

  • 論考FF7 人と火の物語|Chapter 2 ミッドガル

    FF7の謎を解き明かす知的冒険の旅,第2章 #ケット・シー,#ヴィンセント,#ルーファウス神羅

  • 論考FF7 人と火の物語|Chapter 1 魔晄の煌めき

    一言で言えば『ファイナルファンタジーⅦ』は「人」と「火」の話である 。 レッドⅩⅢの故郷コスモキャニオンには太古から燃やされ続けているという「火」が出てくるのはなぜか。 FF7の主要登場人物はすべて火に関係している。 クラウドの名前(Cloud Strife)には火(fire)が隠されている。 エアリス(Aerith Gainsborough)にはラテン語の火(ignis)が。 その他,クラウドのパーティー「全員」火に関係している。FF7の秘密を解き明かす知的冒険の旅,第1章

最近の記事

Chapter 2-4 現代のバベルの塔,魔晄都市ミットガル

北欧神話の他にも,Chapter 1でも見てきたようギリシャ神話やキリスト教神学がFF7の背骨となっている。スクウェアのプロモーションによれば,『ゼノギアス』(FF7の翌年に発売されたRPG)はFF7から分化したもので元々は一つであったという。 当時打たれたゼノギアスの販促*文を引用する(太字引用者)。 ゼノギアス,それは裏FFⅦかも知れない。 FFⅥのプロジェクト終了後,グラフィックの高橋哲哉は,FFⅦのための世界観として,ある壮大な設定をあたためていた。それはFFⅥ

    • Chapter 2-3 ヴィンセント,罪と罰

      このように,FF7の中で語られる「問題」とは,実は我々の世界にも当てはまるということ,そしてその「問題」と決して無関係ではない我々は,責任のある当事者であるということを見てきた。 ここまでくればヴィンセントの役割はおのずと決まってくる。ヴィンセントに託された最大の役割とは,当事者でありながら傍観者の立場を取り,何もしない人々の罪を訴えることにあるのだ。 ヴィンセント「この身体は……私に与えられた罰……私は……ガスト博士や宝条

      • Chapter 2-2 ケット・シーの住む都市

        現代社会において「問題」というのは往々にして人間が自ら生み出したものである。エデンを追放され,自らの知恵を使って生きていくことを宿命づけられた人類。社会が未発達であった大昔,敵(問題)とは多くの場合自分の外部にあり,その意味でまさに外敵であった。しかし社会が発展するにしたがって問題の多くは社会内部から発生するようになる。 問題というのは我々の中に内包されているのであって,被害者としての我々は往々にして加害者でもある。これがいわゆる社会問題の特徴で,例えば核エネルギーの被害に

        ¥100
        • Chapter 2-1 ミッドガル

          神話から着想を得るというのはRPGの常套であるが,スクウェア(『ファイナルファンタジーⅦ』の発売元。現,スクウェア・エニックス)のRPGには北欧神話からのネーミングが多い。「裏FF7」としてプロモーションされた『ゼノギアス』の「ユグドラシル」,「ヘイムダル」などがそうだし,FFのシリーズでは「オーディン」,「ラグナロク」などがお馴染みだろう。FF7では「ニヴルヘイム」,「ケット・シー」などがそれにあたる。 魔晄都市「ミッドガル」も北欧神話のMidgard〈ミッドガルド〉からき

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        • 論考FF7 人と火の物語|Chapter 2 ミッドガル
          5本
        • 論考FF7 人と火の物語|Chapter 1 魔晄の煌めき
          6本

        記事

          Chapter 2-序 ミッドガル/神羅

          MIDGAR/Shin-Ra ブーゲンハーゲン「ホーホーホウ。いかんな,ナナキ。せのびしてはいかん。せのびをするといつかは身をほろぼす。天にとどけ,星をもつかめとばかりにつくられた魔晄都市。あれを見たのであろう? あれが悪い見本じゃ。上ばかり見ていて自分の身のほどを忘れておる。この星が死ぬときになってやっと気づくのじゃ。自分が何も知らないことにな。 「そもそも、人間の高慢、不遜の象徴として、「天までとどく塔」ほどふさわしいものはない。それはまさに、人間が神と肩をならべ、神

          Chapter 2-序 ミッドガル/神羅

          Chapter 1-5 光(ひかり)

          旧約聖書に出てくる神の最初の言葉「光あれ」。 クラウド「……輝いている」 ブーゲンハーゲン「ホーホーホウ! あわ~いグリーンじゃ!!」 クラウド「……エアリス。エアリスはすでにホーリーをとなえていたんだ。(中略)エアリスは俺たちに大きな希望を残してくれた」 プロメテウス神話でパンドラの壺に唯一残ったもの,希望。火はやはり災いの素であると同時に人にとって希望でもある。 ひ・・・・・・かり・・・・・・ 光だ・・・・・・ これが・・・・・・ この光が・・・・・・ホーリー?

          ¥250

          Chapter 1-5 光(ひかり)

          ¥250

          Chapter 1-4 第三の火

          原子力はしばしば,人類が手にした「第三の火」と形容される(「燃料の空気中での燃焼による第一の火,電熱線の発熱などによる第二の火に対して,核分裂による発熱をいう」『大辞泉』)。原発推進派も反対派も,プロメテウス神話を援用して持説を展開するのが常套となっている。核エネルギーの是非をプロメテウス神話に寄せて書いた本も多く,試みにいくつか例を挙げるなら,トーマス・スコーシアの『プロメテウス・クライシス―崩壊する巨大原子力発電所』,西村陽一『プロメテウスの墓場―ロシア軍と核のゆくえ』,

          Chapter 1-4 第三の火

          Chapter 1-3 “科”学と神羅

          英語で「科学」を意味するscienceの語源はラテン語の scientia「知識」であるが,scienceのscは「切り分ける」ことを表す(例えばscissors「はさみ」)。分けることは分かることなのだ。 日本語の「科学」は明治初期にscienceの訳語として作られたものだが,scienceは分析・分類をその本分とする。そこで明治の知識人は「分ける」を意味する漢字「科」*を使い,分ける学問「科学」と訳したわけだが,いみじくも科学の「科」は「罪科」の「科」,すなわち「科〈と

          Chapter 1-3 “科”学と神羅

          Chapter 1-2 原罪とりんご

          セフィロス「この星のすべての知恵・・・・・・知識・・・・・・。私はすべてと同化する。(中略)今は失われ、かつて人の心を支配した存在・・・・・・『神』として生まれ変わるのだ」 プロメテウスが神殿の火を盗んで人間にあたえたことに腹をたてたゼウスは,その報いとして人間に災いをもたらそうと考え,人類最初の女「パンドラ」をプロメテウスの弟のもとに差し向けた。パンドラは神々からのみやげ物として,のちに「パンドラの箱」として知られるようになる一個の壺〈つぼ〉を持参したが,決して開けてはな

          Chapter 1-2 原罪とりんご

          Chapter 1-1 プロメテウスの盗んだ火

          ギリシャ神話のプロメテウスは天界から神が持つ火を盗み出し,地上の人間に与えた文化英雄*でありトリックスター**である。プロメテウスから火を与えられたことで,人間は過酷な自然を生きていけるようになった。一方プロメテウスは主神ゼウスの怒りをかい,岩山に縛りつけられる。 この神話における「火」とは、正しく「知恵」の比喩である。蒙〈もう〉(暗いこと。無知なこと)を啓〈ひら〉くことの比喩として,暗闇に生きる者に火を与える寓話ほどふさわしいものはない(「啓蒙する」を英語でenlight

          Chapter 1-1 プロメテウスの盗んだ火

          Chapter 1-序 「魔晄」の煌めき

          人と火の物語ティファ「ねえ,クラウド。たき火って不思議ね。なんだかいろんなこと思い出しちゃうね」 一言で言えば『ファイナルファンタジーⅦ』とは「人」と「火」の話である 。 レッドⅩⅢの故郷コスモキャニオンには太古から燃やされ続けているという「火」が出てくるのはなぜか。 人と火の物語であるから,FF7の主要登場人物はすべて火に関係している。 クラウドの名前(Cloud Strife)には火(fire)が隠されている。 エアリス(Aerith Gainsborough)

          Chapter 1-序 「魔晄」の煌めき