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映画『戦場にかける橋』(1957)

本日ご紹介する映画は、デヴィッド・リーン監督の『戦場にかける橋』〔原題:The Bridge on The River Kwai〕です。1957年の作品。
映画はご存知なくとも、劇中で流れるクワイ河マーチは耳にしたことがあるかもしれません。

この年のアカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞、脚色賞、作曲賞、撮影賞、編集賞の7部門でオスカーを獲得。主演男優賞は、英国軍人ニコルソンを演じたアレック・ギネスです。
また助演男優賞には日本軍斉藤大佐を演じた早川雪洲がノミネートされていました。早川雪洲は無声映画時代にハリウッドで活躍したスターです。
ちなみにこの年のアカデミー賞で助演女優賞を受賞したのは日本人で『サヨナラ』に出演したナンシー梅木です。

古い映画なので多少ネタバレ気味で書いてます。あらかじめご了承ください。

デヴィッド・リーン監督の作品は『戦場にかける橋』以降、『アラビアのロレンス』『ドクトル・ジバゴ』など壮大なスケールのある作品が続きます。
これらはジャングルや砂漠、あるいは極寒のシベリアなど人間を寄せ付けないような場所が舞台であり、厳しい自然の中で人間の葛藤がよく描かれている。そんなところがわりと好きです。

また、デヴィッド・リーン監督のこれらの作品には鉄道がでてくる。きっと監督は鉄道が好きなんじゃないかと思う。
鉄道はリュミエール兄弟の時代から映画と付き合いがあって、相性がいいと思ってます。

さて『戦場にかける橋』。
時は第二次世界大戦。いちおう戦争映画ですが、人間ドラマです。
舞台はタイとビルマの国境付近。このジャングルの中にある日本軍の捕虜収容所にイギリス軍が捕虜として送られてくるところから始まる。

捕虜収容所の所長である斉藤大佐の喫緊の課題は、収容所の近くを通る鉄道の建設。特に川に架ける鉄道橋の建設に難航していた。イギリス軍の捕虜たちは鉄道建設のために移送されてきたらしい。
期日までに完成させたい斉藤大佐はイギリス軍捕虜の将校らにも労役させようとする。銃口を向けて脅します。

一方、捕虜となったイギリス軍のニコルソン大佐は、将校の労役はジュネーブ条約で禁じられているとして、これを拒否。オーブンと呼ばれる炎天下の営倉(懲罰坊)に入れられても彼は信念を曲げることはなかった。

ルールや原則を守ることが文明社会の云々といったところで敵の捕虜となり文明社会から隔絶された密林の中の収容所にいるのですから、もうすこし融通をきかせてもよかろうと私なんぞは思うのに、ニコルソン大佐はそうゆう人ではないようです。

この信念信義の衝突はニコルソンが勝ち、斉藤は屈辱を味わいます。しかし面白いのが、このあとニコルソンはちょっと意外な行動をとります。
それは英国軍人が指揮して鉄道建設を進めるのです。

実は日本軍の指揮による鉄道建設は惨憺たる状況でした。しかも橋を建造するには地盤の選択も良くなかった。
それよりもニコルソンを悩ませたのは、イギリス軍捕虜たちの規律が乱れてしまっていることです。
捕虜は労役の義務があるといえども、まじめに働くものはいない。ところがこれがニコルソンには耐えがたいもののようです。

ニコルソン大佐という人はいついかなる時でも規則やルールを守ることが文明社会の原則だと考えています。
捕虜は労役を課せられるならば、これに準じる。準じる以上は手を抜くことなく真面目に労役を行うべきと信じている。仮病をつかうとか、なまけているとか、川で水浴びしているなんて、ニコルソンにしてみれば規律ある軍隊の姿ではない。

英国軍人の士気を高めるため、規律ある軍として行動するためイギリス人の指揮による鉄道建設を斉藤に申しいれる。斉藤にとってみればきわめて屈辱的だが期日までに完成させるにはこれを受け入れるより仕方がない。

さて、この捕虜収容所にアメリカ海軍のシアーズという人物がいた。彼はなんとか収容所を脱走できた。
ところが連合国側には日本軍が建造中のこの橋を爆破する計画があり、現地の状況を知るシアーズをチームに参加させようとしていた。

ジャングルから脱走して来たところへまたジャングルへ戻れとは過酷な話である。だが、シアーズにはある事情があって軍の命令を拒否することもできず、結局のところ再びジャングルの中へ向かうことになる。

戦争という状況の中で、なにが人間らしいのか。斉藤、ニコルソン、シアーズらの運命は鉄道橋開通のその日へと収斂してゆく。

クライマックスは川に架かる橋の爆破です。それも通過しようとしている列車ごとです。CGじゃない。本当に橋を作って、列車を走らせ、爆破させるのですから、これが映画の醍醐味といわんばかりの作品です。
できれば映画館の大きなスクリーンでみることをお勧めします。

『戦場にかける橋』(1957)
The Bridge on The River Kwai
監督:デヴィッド・リーン
製作:サム・スピーゲル
原作:ピエール・ブール
脚色:マイケル・ウィルソン、カール・フォアマン
撮影:ジャック・ヒルデヤード
音楽:マルコム・アーノルド
美術:ドナルド・M・アシュトン
出演:
ウィリアム・ホールデン … シアーズ
アレック・ギネス … ニコルソン大佐
ジャック・ホーキンス … ウォーデン少佐
ジェームズ・ドナルド … 軍医クリプトン
ジェフリー・ホーン … ジョイス
早川雪洲 … 斉藤大佐


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