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読書note『サド侯爵夫人』三島由紀夫

2024年大晦日の投稿は、三島由紀夫の戯曲『サド侯爵夫人』。副題に「澁澤龍彦著「サド侯爵の生涯」に拠る」とある。1965年初演。

 来たる年は読書量を増やそうという
 淡い抱負のような
  微かな願望のような
   茫漠とした夢想のような

三島は澁澤の著書を読んでサド侯爵よりも、サド侯爵夫人ルネに興味を覚えた。サド侯爵夫人ルネは、牢獄の夫を献身的に支えながらも、彼が自由の身になると修道院へ入ってしまった。

登場人物は女性6人。

ルネ … サド侯爵夫人
モントルイユ夫人 … ルネの母親
アンヌ … ルネの妹
シミアーヌ男爵夫人
サン・フォン伯爵夫人
シャルロット … モントルイユ夫人家政婦

舞台は3幕
第1幕 1772年 秋
第2幕 1778年 晩夏
第3幕 1790年 春
いづれも、パリにあるモントルイユ夫人邸のサロンが舞台。

第1幕。
1772年、アルフォンス(サド侯爵)はマルセイユで事件を起こします。
売春婦相手に行った悪徳。
ここでは詳しく書く必要はありますまい。告訴されたことだけ分かればいい。劇中でもある程度は教えてくれますが、そもそも貴族のご婦人方の会話ですから、売春婦というだけでも恥ずかしいわけです。

さて告訴された当人は逃亡をはかっていた。しかも妻ルネの妹アンヌとイタリアへ。アルフォンスと別れることを望む母モントルイユ夫人に対して、ルネは夫と別れないという。

第2幕。
第1幕から6年後。マルセイユ事件で牢獄に入れられたアルフォンスの再審請求が叶い、罰金で出獄することになった。
この朗報に喜ぶルネ。ところがモントルイユ夫人はこの知らせを一か月以上もルネに知らせずにおいていた。

第3幕。
第2幕から12年後。フランス革命が勃発して9ヵ月後。
民衆が立ち上がり、王や貴族に身の危険がせまっていた。価値観が変わろうとしている。牢獄のアルフォンスが放免になるというのに、ルネは修道院へ入ると母のモントルイユ夫人に告げる。

登場人物は6人だが、基本的にはルネとモントルイユ夫人が中心になる。
アルフォンスを支え別れようとしないルネと、法と秩序の化身のようなモントルイユ夫人の台詞の応酬が芝居を進める。

今回読んだのは新潮文庫版。これには三島由紀夫の自作外題と平野啓一郎の解説がつく。戯曲を読んでもピンとこない部分もあるのだが、自作外題と解説は作品の理解への手引きとなっていてありがたい。

役者が演じているのを見てみたい。戯曲は文字で読んでいるだけでは不十分で、役者を通して見えて来るものが少なくないとおもう。
自分が演じるかのように読むのがいい。黙読より音読がいい。

ちなみに新潮文庫は戯曲『わが友ヒットラー』も収録されている。こちらは登場人物が男性4人だけ。

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