映画『悪魔の手毬唄』(1977)
本日ご案内する映画は、市川崑監督による金田一耕助シリーズの第2作目『悪魔の手毬唄』(1977)です。探偵・金田一耕助役はもちろん石坂浩二。
前作『犬神家の一族』は角川春樹事務所の製作で『悪魔の手毬唄』は東宝映画の作品です。前作の大ヒットにより二作目が作られたのでしょう。
今回もネタバレ気にせず筆を進めています。ご了承ください。
シリーズと申しましても前作とは雰囲気の違う作品に仕上がっています。例えて言うならば『犬神家の一族』がハリウッド映画で、『悪魔の手毬唄』はフランス映画かな。
季節が冬らしく舞台となる山村は寂しい風景をしている。そのせいもあって全体的な色調は抑制されている。これが物語の哀しさとあっている。
犯人は前作同様「母」であすが、「女」でもある。重要人物に岸恵子が配されているので、そんなところからもフランス映画だなんて言ってみたのかもしれませんが、彼女は地味な和装の田舎の温泉場の女将の役です。
物語は、金田一耕助はかつて一緒に仕事をしたことのある岡山県警の磯川警部に、岡山県の鬼首村の亀の湯に招かれたところから始まる。
ここで磯川警部は、二十年前に起きた忌まわしい事件の調査を金田一に依頼する。
二十年前の事件とは亀の湯の青池源治郎が、村で詐欺を働いていた恩田に殺されてしまう。しかし恩田の行方は杳としてつかめず事件は迷宮入りに。
ところが磯川は被害者と加害者が実は逆ではないか、つまり殺されたのが恩田で、殺したのが源治郎ではないかと考えて、地道な捜査を続けていた。
そろそろ決着をつけたい磯川は金田一に事件の調査を依頼することになる。警察の人間が探偵を雇うというのは、ちょっと変わってますね。
そんな折、人気歌手となった別所千恵が故郷の鬼首村を訪れることになった。金田一は別所千恵の父親が恩田であると知らされる。千恵を歓迎する村の幼馴染たち。そんな矢先、千恵の幼馴染のひとり由良泰子が殺される。
鬼首村に伝わる手毬唄になぞらえた殺人事件。むかしの忌まわしい事件が現在の事件の遠因となっているのは横溝正史らしい設定。
二十年前の事件の被害者とされる亀の湯の源治郎は、かつて活動写真の弁士をしていた。弁士を紹介する映像に『丹下左膳』の一場面が使われ、トーキー映画として『モロッコ』の一場面が使われている。
『悪魔の手毬唄』は、ひょんなところで大河内伝次郎、ゲイリー・クーパー、マレーネ・ディートリッヒが顔を見せるわけで、これは映画ファンの心をくすぐる。
出演者では、亀の湯の青池リカを演じた岸恵子が素敵。磯川警部を演じた若山富三郎も良かった。
磯川は鬼首村には休暇で来ているので、一連の殺人事件の捜査を指揮するわけではありません。金田一との旧交をあたため、リカさんにほの字なところをみせ、老齢で閑職の刑事でありながら、時折鋭い眼光を放つ。
さて、この犯人は老婆の扮装をしたり、時には人の先回りもしなきゃならない。ちょっと現実的にはこの犯行はキビシイんじゃないかと思われる部分もあるにはありますが、あまりお気になさらずに楽しんでみてください。