どんな所でも家族がいたらそこは安心する所だった。
無意識に寂しかったんだと思う。
引っ越してきてすぐに
火事になって家が燃えて、
いじめられて孤立して、
ずっとうまくいかなかったこの土地。
来週仕事の都合で引っ越す私は、まだからの段ボール箱と汚い部屋を持て余していた。
「早く片付けろよ」
わかってる。
だけど、なんだかゆっくりにしか動かない手と、なんとなく先延ばしにする体。
それでも時は刻一刻と過ぎるから、頑張って重たい体を起こしてみた。
意外とあっさり詰められた私の荷物が思った以上に小さくて悲しくなった。
綺麗になっていく部屋からは、私のものが無くなっていく。
なんでこんな気持ちになるんだろうと思った。
自分の居場所がここから無くなってしまう気がしたんだと今は思う。
もう二度と帰って来てはいけないような、帰ってもきっと誰もここにはいないような、
そんな感覚が押し寄せて来てまた手を止めた。
どんな土地でも、嫌なことがあっても安心する家族がいるここは私にとっては大切な場所だった。
きっと、これから先このアパートから引っ越してもこの部屋の窓から見える暖かい日差しのかかる布団の光景は忘れないだろう。
青く広がって、ふわふわと掴めそうに浮く雲も、
小鳥が私に向かって飛んでくるのも、
全部愛おしい私の居場所だった。
なんて、思い出に浸ってみたりした。
今日この頃。