Fender LEAD Series(新旧)の個体差(追記:2021/1/20)
新旧LEAD Seriesについては、これまで各部の比較やボディー材、カラーの変遷などについて記事にしてきました。今回はその個体差について記述したいと思います。
概要
・2020 Player LEAD Series
結論としては2020 Player LEAD Seriesに大きな個体差はなさそうです。ただし、おそらく製作開始初期のものと思われる個体と、その他の間には複数の相違点があるようです(後述)。
各部の測定数値については、近年の優秀な工作機械・技術を用いて作られているからか、所有機においては誤差範囲に留まり重量は概ね3kg前後です。ただ、アッセンブリーの違い(Player LEAD2はシングルコイルピックアップ×2、Player LEAD3はハムバッキングピックアップ×2)のため、Player LEAD3のほうが100g程度重めとなるようです。
・相違点その1
上の画像は2020 Player LEAD Seriesのヘッドを並べたものです。個体差と言えるかどうかわかりませんが、黄色の円で囲まれたものでは「Fender」のロゴがややヘッド寄りに貼られており、1・2弦用と3・4弦用のストリングガイドは5弦のペグ付近で隣接しているのに対し、青い円で囲まれたものでは「Fender」のロゴがナット寄りに貼られており、1・2弦用のストリングガイドがヘッド先端側にズレて取り付けられています。
これらの特徴は、同一のヘッド形状を持つPlayer Stratocaster(ストリングガイドは1・2弦のみ)と共通していて何らかの関連性が疑われますが、詳細は不明です。
・相違点その2
上の画像は、1・2弦用のストリングガイドがネック先端方向に変位しているPlayer LEAD2のピックガードとその他のPlayer LEAD2のピックガードを重ねたものです。青い丸の部分で形状が異なりますし、ネジ穴も複数の箇所で重なり合いません。ピックアップ・POT・ジャック・スイッチの各マウントホールについてはズレは無いようです。(2021/1/20追記)
・その他
ストラップピンとボディーの間にはフェルトが入っている個体といない個体があり、所有機における割合は50:50です。
このように、個体差というよりも仕様のばらつきがPlayer LEAD Seriesにはあるようです。製作時期との関係性については不明ですが、Player LEAD Seriesに限らず製作初期における仕様のばらつきは少なくないため、怪しまれるところです。
・Original LEAD Series
Originalについてはある程度の個体差が認められます。ただ、1982年頃にヘッド形状やナット幅等に関する仕様変更があるため、この点については個体差とは区別する必要があります。詳細はこちらにてご確認ください。仕様変更の概要は下の表のとおりです。
ヘッドストック
・ヘッド形状
Original LEAD Seriesにおいては仕様変更前の最初期に、他とは異なる形状のものがあります。最初期のものの特徴としては、6弦ペグ付近のエッジが丸みを帯びていることと、1弦ペグ付近のヘッド先端部の丸みがやや潰されたように歪であることが挙げられます(下の画像黄線枠内)。
ヘッドの厚みにはある程度の個体差があります。仕様変更前では最も厚いもので約16mm、薄いもので約14.5mmです。
仕様変更後では仕様変更前では最も厚いもので約15.3mm、薄いもので約13.65mmです。
ネック
・ナット幅
ナット幅の個体差は比較的小さく、仕様変更前では約40.5mm、変更後では約42.5mmをそれぞれ中心値として±0.5mmの範囲に収まっています。
・厚み
ネックの厚みですが、Player LEAD Seriesではどの個体も概ね21.5mm程度、Original LEAD Seriesにおいては、仕様変更前の中の最大値が23mm、変更後の中の最小値が19.9mm(いずれも1フレット付近での厚み)です。制作が後年になるほど薄くなっていく傾向があるようです。
ボディー
・厚み
Fender社ソリッドギターの多くは、ボディーの厚みが概ね45mm(約1 3/4インチ)程度であり、新旧のLEAD Seriesも例外ではありません。Original LEAD Seriesでは、全体的に仕様変更後のほうが変更前よりもわずかに薄い傾向があるようです。
・コンターと重量
Player LEAD Seriesについては個体差は殆どありません。コンターの深さや形状に大差はなく、重量は前述の通り3.0kg前後です。
Original LEAD Seriesの場合、仕様変更前のボディーコンターはバック・エルボーともに小さめですが個体差があり、仕様変更直前のものでは大きめのものが存在します。重量は所有のLEAD2で2.8kg~4.2kgと個体差が大きいです。要因としてはコンターの大きさやボディーに用いられた木材自体の違い(ホワイトアッシュ、ライトウェイトアッシュ)などが考えられますが、詳細は不明です。
変更後のボディーコンターはバック・エルボーともに大きめとなり、個体差は殆どありません。重量は3.0kg~3.5kgの範囲に収まっています。
上記は全てLEAD2でのデータとなります。LEAD1&3においては、搭載されているハムバッキングピックアップが1個約219g(LEAD2に搭載されているシングルコイルピックアップのX-1は1個約66g)と重いため、木部の重量が同様であった場合、LEAD2に対しLEAD1では+80g程度、LEAD3では+300g程度の重量となるようです。
・ストラップピン
ストラップピンとボディーの間には仕様変更後フェルトが入っているそうですが、所有機においてフェルトが確認できる個体は2本に留まります(交換・廃棄されているのかもしれませんが)。
その他
ボディーエッジのRが小さい個体の画像です。比較用のTelecasterとほぼ同程度に見えます。
そのボディーエッジのRが小さい個体とは対象的に、非常にしっかりとエッジが丸められた個体です。全く別種のギターに見えますね。
記事冒頭に既出の通り、新旧のLEAD Seriesにおいてはその個体差の程度に違いがあります。Player LEAD Seriesにおいては、工作機械の精度や加工方法、使用する木材の選び方など個体差が小さくなる方向に進化していると言えそうですが、一方でOriginal LEAD Seriesにおける様々な「ブレ」を愛おしく思う気持ちがあることも否めません。中には個体差の範疇から逸脱していると言えそうなクセの強い個体もあり、アバタもエクボというかそのあたりにも魅力を感じてしまいます。
【了】