「女性から女性へ」押し付けられる“女性らしさ”とは？
—調査データが示す“地域性とジェンダーバイアス”の実態、まずは自分のアンコンシャスバイアスに気づくことから—
2024年9月に行われたによると、東海三県（愛知・岐阜・三重）を中心に「女性は家事・育児を担うべき」「男性は家族を守るべき」という旧来的な性別役割のイメージが、いまだ根強く残っていることが明らかになりました。注目すべきは、同じ女性から女性へ“女性らしさ”を押し付けるケースが意外にも多い点です。
とりわけ、職場では女性上司・先輩による押し付け、プライベートでは義母や祖母からの押し付けの割合が高くなるなど、男性からの押し付けとは別の問題として深刻化している可能性があります。本記事では、そのような“女性同士”だからこそ起こる押し付けの背景と、まずは自分自身のアンコンシャスバイアスに気づくことの重要性を考察します。
女性同士だからこそ起こる“女性らしさ”押し付けの背景
1. “当たり前の価値観”が無自覚に継承される
調査では、女性の多くが「家事や育児は女性の仕事」「男性は家庭を守るのが当たり前」と捉えていることが示唆されました。こうした価値観は、長年の慣習のなかで無自覚に受け継がれてきたものといえます。例えば、母や祖母も「自分はそうしてきたから」という理由で、若い世代の女性に同じことを求めがちです。
2. 上下関係や家族のしがらみが声を上げにくくする
職場の女性上司・先輩、家庭の義母・祖母など、相手が“目上”であるほど拒否や意見がしづらく、押し付けに気づいても「とりあえず従う」という選択肢しか取れないことがあります。調査結果でも、会社・仕事の現場で「押し付けを受けた際、従った」と答えた女性が圧倒的に多かったことが示されています。
3. “女性同士なら分かるでしょ？”という思い込み
「同じ女性ならあうんの呼吸で分かり合える」という暗黙の前提から、「私は我慢してきたんだから、あなたも当然できるよね？」と一方的に押し付けられる場合があります。こうした期待が外れたときには、女性同士のあいだで強いプレッシャーや対立が生じやすくなるのです。
“女性から女性”の押し付けがもたらす弊害
1. ライフスタイル・キャリア選択の阻害
結婚・出産後もキャリアを継続したい女性にとって、「母親なら子育てに専念すべき」「家事は女性が担うのが当たり前」といった認識が周囲にあると、思うように働きづらくなります。地域の慣習が強く残る地域などでは、こうした空気が目立ち、自由なライフプランをあきらめてしまう人も少なくありません。
2. 世代を超えた負の連鎖
押し付けられた価値観が、自分の中で“当たり前”として固定化されると、次の世代へ同じ押し付けをしてしまう負の連鎖が起こります。調査でも、母（義母）や祖母の立場の女性が押し付ける事例が顕著に見られたことは、こうした連鎖を如実に示しています。
3. 女性同士の対立や萎縮
当人同士では「大きなお世話」と思いながらも、義母や職場の先輩の立場が強いほど、言い返せない状況が続いてしまいます。そうして不満が溜まると、結果的に女性同士で関係がギスギスし、協力関係を築くどころか互いに足を引っ張り合うような事態になりかねません。
まずは自分のアンコンシャスバイアスに気づくことから
今回の調査が明らかにしたように、私たちは「女性らしさ」「男らしさ」とはこうあるべきという思い込みを、無自覚に抱えていることがあります。これを心理学では「アンコンシャスバイアス（無意識の偏見）」と呼びます。アンコンシャスバイアスは、自覚できないまま他者への言動に影響を及ぼし、結果として“押し付け”に繋がることがあるのです。
「家事は女性がこなすべき」「男性は家庭を支えるべき」という思い込みがないか？
「女性ならこれくらいこなせるだろう」という期待を、無意識のうちに他人に強いていないか？
母や義母、職場の先輩女性と接する際、自分自身も何らかの先入観を持っていないか？
まずは、こうした視点で自分のアンコンシャスバイアスを点検してみることが、状況を変えていく第一歩となります。気づいたバイアスを少しずつ言語化し、周囲と対話することで、「そういえば、私も同じように思っていたかもしれない」と互いに理解を深めやすくなるでしょう。
まとめ
地域や世代によっては特に強く残る「女性らしさ」や「男性らしさ」の固定観念。そこには、多くの人が長年無意識に抱えてきたアンコンシャスバイアスが潜んでいます。同じ女性であるからこそ、相手の立場や気持ちを汲める反面、その“分かり合えるだろう”という前提が、お互いに息苦しさを生み出す原因にもなり得るのです。
女性同士での押し付けを生まないためには、まず自分自身の言動を振り返り、「自分は本当にどうしたいのか」「相手の意思をきちんと尊重しているか」を問い直すことが重要です。アンコンシャスバイアスに気づけば、そこで終わりではなく「どうやって周囲と対話を進めるか」という新たな課題が生まれます。しかし、こうしたプロセスを重ねることで、「女性らしさ」や「男性らしさ」の固定観念を少しずつアップデートできるのではないでしょうか。
同じ女性から女性に対する“女性らしさ”の押し付けは、長く続く風潮のなかで無意識に再生産されてきました。まずは自分のアンコンシャスバイアスを自覚し、言葉にするところから始めてみる。その積み重ねが、“女性らしさ”に縛られずともお互いを尊重できる社会づくりへの一歩になるはずです。