サミュエル・スマイルズ著、三輪裕範編訳(2023)『超訳 自助論 自分を磨く言葉 エッセンシャル版』株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン
自己啓発本の元祖らしい言葉の数々
今回もkindle版でunlimitedのメンバーシップのコスト分は読んでみないと損とばかりに、このエッセンシャル版を読んでみた。
実はスマイルズの自助論はかつて読んだことがあるけれど、その内容をそっくり忘れていたようで、この本を途中まで読んでみて、昔読んだものとそっくりと思いながら読み進めるという不思議な感じの読書でした。
確かに現在の多くの自己啓発本に掲載されている内容は、ほぼこの自助論で述べられている観点が多いのは事実のようです。本書にもありますが「いつの時代も本当に大切なことは変わらない」ですね。特に「天は自ら助くる者を助く」というフレーズはいろんなところで聞き及んでいると思う。それが自助論の凄さかも知れない。
「意志さえあれば何でもできる」というのも、困難を乗り越えるためのポジティブな言葉ですね。また、人間、土地などは相続できても「知識や知恵は相続できない」ものというのも、今や納得の考え方。「苦労が最高の教育」というのも、私個人が高卒で就職し、働きながら大学、大学院と進み、何とか苦労して経営学と情報学の学位を取得したけれど、それが生かされるようになったのが早期定年退職した後であり、まさに当時の苦労が今の自分を作っていることを切に感じられるわけで…
「幸福の女神は常に勤勉な人にほほ笑む」というのも、努力をし続けるとそれなりに頑張った成果というものを自分なりに得るものでもある。「不遇の時代を耐え抜く」のも、その耐えたことそのものがやがて自信につながったりするから本当に不思議である。
人間は思うだけではダメで、「行動を起こせば願望は実現する」可能性は、やらないよりはやった方が高いわけで、人間は思っていても行動に移さない人が多いので、その差は結構端的に現れるものですね。
わたしは、この自助論の中では「遠回りこそ最良の道だ」というのが好きで、個人的な心情も、迷ったら苦労する方を意識的に選んできたので、その分の経験が今の自分を助けていると思う。本書の中には「正確な仕事をする人は信用される」という当たり前の言葉もあるが、「指摘や苦言は大いに歓迎せよ」というのは苦労してきた人には、その意味がよく分かるだろう。
スマイルズの残した言葉は、今もわたしたちの生活や生き方に対する視座を与え続けている。本書はエッセンシャル版だけれど、また自助論全文を再読したくなってきた。