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映画鑑賞記録「ビバ・マエストロ!」
祖国への愛と音楽
知り合いのSNS投稿にこの映画を観てきた感想があり、ノーマークだった自分は、ぜひ観に行かなくては!と急きょチケットを予約して今日の午前中に鑑賞してきた。
この作品、グスターボ・ドゥダメルをめぐるドキュメンタリー映画であるが、何年か前からドゥダメルを知って、多くの動画を観て、ベネズエラの英雄ともいえる才能あふれる指揮者であり、世界の名だたるオーケストラを指揮したり、音楽監督を務めたり活躍しているが、青少年の指導にも愛情を持って当たっていることがとてもよくわかった。バーンスタインのウエストサイドストーリーをベネズエラの「シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ」で指揮している動画は、胸が熱くなり、何度も繰り返し視聴した。
ベネズエラの「エル・システマ」は、夢と希望のある制度であり、子供たちにクラッシックの楽器を無償で与えてトレーニングしてオーケストラに参加できるようにするものだ。ドゥダメルもこのシステムの中で育って、大変な才能を開花させた。「100年に一人の才能」とも言われているようだが、威張ったところが少しもない、純粋で愛情にあふれた人、という印象を受ける。
政治の混乱によりベネズエラは国民の大半が貧困層に陥り、独裁政権の治世が続き、厳しい状況に立たされている。当然治安も悪くなり、将来が見えない不安定な情勢に、やむなく国外へ逃れてしまう人も多いようだ。そして、エル・システマを支える経済基盤も当然盤石とは言えない状況と理解した。
祖国と音楽を愛してやまないドゥダメルは、国外から独裁政権を批判する声明を出したことにより、祖国に入国することも、ユースオーケストラを指揮して海外公演することも禁止されてしまった。
指揮者として世界的に成功しているものの、ご本人にとって大変つらい状況が続いているようだ。
そこで、メキシコで結成されたユースオーケストラに、ベネズエラから若い奏者を呼んで演奏したり、ベルリンフィルの客演指揮の際に、ベネズエラのオーケストラのヴァイオリン奏者と共演したり、ドイツに留学が決まったベネズエラのコントラバス奏者と交流したり、など、つねに祖国の同胞との絆を大事にしている様子が映画では記録されており、応援したい気持ちになる。ベネズエラのオーケストラをドゥダメルが指揮する場面も多いのだが、観ていてこみあげることが多かった。
クラッシック音楽は問題解決になるのか
楽器を子供のころから修得するには、まずは習い事として始めるだろうし、楽器を購入したり、演奏会の衣装を用意したり、先生にお礼を包んだりなどなど、大変お金がかかるものであり、一定レベルになるには当然大変な投資が必要なので、裕福で教育熱心な家の子の特権、のように感じていたが、エル・システマのような仕組みで楽器の修得やオーケストラで合奏することで得られるものの大きさに改めて気がつくことができて、この制度はぜひ続いてほしい、と思う一方、ベネズエラという国の問題解決には、もっと強い方法も必要なのだろう、とひしひしと感じた。
個人的な感情としては、この大事な花はなんとかして咲き続けてほしいと思わずにはいられない映画ではあった。マエストロ・ドゥダメルがますます活躍されて、財団の資金がこのシステムを支えるとよいな、と、現実的なことを考えた。
都内では恵比寿ガーデンシネマ、他都市でも順次鑑賞可能なのでご興味ある方はぜひ。
課題図書の抜き書き
正確に考える人は、感情が信頼できるとは限らないことを知っている。だから、理性と論理を働かせて注意深く検証し、感情に左右されて誤った判断を下さないように、万全の態勢をとる。
私たちはできていないが、成功者はやっている52のこと
ナポレオン・ヒル