自分の体を大切にしよう
抗がん剤は弱い所を狙ってくる
今回、自分で移植を受けてみて、一番感じたのがこれです。移植を決めて、あれこれ検査する中で、私の場合はびっくりするくらい健康(?)だったので、正直な所、まあ大丈夫じゃないかな、と思っていた部分はあり、そういう意味では割と悲壮な感じにはならずに移植に入ったわけですが、入院期間を通じて一番苦しめられたのが「胃」でした。
胃は、だれでもやられるので、あえてそんなに精密検査とか事前検査とか言われなかったしやってなかったのですが、考えてみたらもう何年も、というか社会人になる前からずーっと(学生時代から胃痛持ち)苦しめられてきたのは胃でした。
離婚のドタバタとかの時にも「そうだよ、考えたらあの時胃カメラ呑んだじゃん……」みたいなことを思い出していました。
また、抗がん剤及び移植後の免疫抑制剤やGVHDでやられやすいのは肝臓と腎臓です。私はこの二つは事前の検査では問題なしだったのですがやっぱり多少は数字に変化が出て、先生方バタバタしておられましたし(薬の変更など何度かあった)、何よりびっくりしたのが(ブログを読んでいただいた方はご存知かと思いますが)狭心症発作でした。
血圧はどちらかと言えば低め、動脈硬化などもなし、血液もあえて言うならサラサラ系(コレステロールや中性脂肪はいつも下限値ギリギリ)だった私がまさかの「狭心症!?」という感じでしたので、本当に造血幹細胞移植というのは、体に負担を掛けるんだなぁ、というのが実感です。
他に大きいものとして、粘膜障害は、私の場合口腔内にはほぼ出なかったのですが、8割以上の方が口内炎や味覚障害に苦しめられますし、私は口腔内こそ出なかったものの、下痢にはずいぶん苦しめられました。
普段お通じも問題なく、こちらもまさかあんなに苦しむとは、というのが思い出した範囲の実感です。
……と、脅すようなことばかり書いてきたのですが、言いたいことというのは、とにかく「健康な状態であれば、多少は出ても、なんとかなる」ということです。
と言っても、ゼロにはならない。ただ、私が「苦しかった/しんどかった」と思っている、上記のような症状は、実は「もっと大変な人がかなり多いらしい」のです。
私は、もともとの状態がかなり良く、だから「少なくて済んだ」し「リハビリとかも出来た」し、「早くに退院できた」のだと思います。
ということで、移植に向けて、とにかく「自分の健康をちょっとでも良い状態で保つ」というのは、とても大事なことだと思います。
自分の状態をきちんと伝える能力
もう一つ、いつか移植に向かうかどうか、はともかくとして(それも含めて)私が「大事だな~」と思うのは、主治医に「今の自分がどういう状態であるか」をきちんと伝えることが出来るかどうか、ということだと実感しています。
これは通常の外来においても、多分まったく一緒で(移植するまではそこまで考えたことがなかったのが本当の所なのですが)例えば「気分が悪い」といった場合でも、吐き気があるのか、むかむかするのか、あるいはどこかがピンポイントで痛いとか、張った感じがするとか、色々あると思います。
それを自分できちんととらえ、きちんと主治医に伝える、これが出来なかったり間違うと、お医者様でも「あれかな、これかな」がなかなか絞れず、結果的にしなくてもよい検査をすることになったり(分からないなら「分からない」と伝えることも、きちんとした情報です)逆に見当違いの予測になって、肝心の疾患に気づいてもらいにくくなる(あまりないとは思いますが……)ということがあるのかなと思います。
入院中に、何か症状があって訴えた時、先生から「分かりやすい」と褒めてもらったり、すぐに理解してもらえたりした、というのは「ここ(指や手で指す、先生に触ってもらって、「もう少し下です」とかしてもらって、具体的に)が〇〇の感じで痛い(食べ過ぎた時、握りしめられたよう、など)」とお伝えしたときでした。
こういうこと、というのは実際に入院などしなくても、日ごろからちょっとした不調になったときに、細かく主治医に伝えておくこと、それは練習というか、訓練というか、日々の生活の中で「これって、先生にどう伝えよう?」と思いながら過ごしていくのが一番いいんだろうなと思います。*5
日々のケアを習慣づけよう
抗がん剤治療や放射線治療の際によく語られるのが「味覚障害や口内炎」です。
私は幸いにして、どちらも発生することがなく、歯科の先生などにもびっくりされましたが、歯科衛生士の方が(この方はオリエンテーション入院の時から、最終退院まで、一番よく来てくださってお世話になりました)「(ならなかった理由を)色々考えてみたんだけどね」とお話いただいたことを、ここにも記しておきます。
一つは、虫歯などがなく、口内の状態がすごく良かったこと。「虫歯は逐次歯医者さんに行って直してもらってた?」と確認されました。逐次、というのはどのくらいかな~ と思いつつも、「痛いな、と思ったら歯医者さんに行って、来なくていいと言われるまでは通うようにしてました」と言うと、「そういうの、大事なのよ」とのこと。
痛いけど、多分悪くなってると思うけど、忙しいとかお金がないなどの理由でなかなか歯科に行けず、積もり積もって移植の時は虫歯だらけ、歯周病だらけ、という方は結構多いのだそうです(これはM先生からも少し聞いていて、事前の歯科受診の話をしていた時に「普通にメンテナンスをしていただいていれば、そんなにびびるようなことにはならないですよ」と言われていました/←歯を削ったりする、と聞いてめちゃくちゃ怯えていたため)
また、歯科の方で、口腔内の菌の採取(データ取り)にも参加したのですが、その先生から教えていただいた話では、移植時に悪いことになる菌というのをいくつか想定してそのデータ取りをやっているのだけど、私の場合はそれがどれも発見されてない、とのことも言われました。それに加えて、一日8回以上のうがい、一日5回の歯磨き、というのを指示されるのですが、それをかなり執拗に(何度も「しんどかったら、無理してまでしなくていいですよ」と看護師さんに言われる位)行なっていたので、その効果もあったのかなぁと思っています。
また、粘膜の保護もかねて、唇に常にワセリンをしっかり塗るのですが(膜が出来るくらい)、前半の抗がん剤~移植までの所は、ワセリンをしっかり塗った上に、就寝時は(粘膜及びのどの保湿のため)マスクをして寝ていました。
スキンケアに関しては、主に後半、慢性GVHDの方で皮膚症状が出てきやすいとのことなので、私は多分まだまだ油断が出来ない時期なのですが(2020.3月現在)、保湿がとにかく重要になってきます。
退院のオリエンテーション(担当看護師さんと、退院後の生活について資料の読み合わせなどを行なう)の前後で、看護師さんと色々「いよいよ退院ですね」みたいな話になった時に、この保湿の話が出たのですが、「女性はまだちゃんとされるんだけど、男性がねー」ということでした。
これは何かというと、(特に年配の男性などは)体中に保湿剤を塗る、という習慣がなく、気持ち悪がってあまり好まない、という話でした。入院中は上記の口腔ケアにも絡んで、唇に白色ワセリンをしっかり塗ってください、という指示が出るのですが、これも気持ち悪がってあまりしないし、体の保湿も、症状が出てから慌ててするのですが、圧倒的に塗布量が少なく(べたつくので嫌がるらしい)結果、GVHD症状が悪化したり、QOLが落ちたりすることが多いのだそうです。
ということで、これもまた、日ごろからの習慣だよなぁと。移植でしんどい時に、慣れてない「気持ち悪い」状態でいるのはイヤ、という気持ちも分かります。が、それでGVHDでかゆかったり、痛かったり、皮膚がボロボロになったり、というのはもっとイヤかなぁと。
となると、常日頃からある程度体のメンテナンスなども習慣づけておくのがいいのだろうなと思います。
移植後は紫外線対策もきちんとしないといけないので、これを書いている私も、これからの時期、本気で、こまめにメンテナンスをしていかないといけない時期となります。
なお、保湿剤とか、口腔ケアについてはおそらく病院によって方針などもいろいろあると思います。ネットにはいくつかの資料があり(病院の退院パンフレットなどを公開している所も結構あります)、それを見ればおおよその雰囲気が分かると思いますが、実際に移植が決まったら早めにその病院の移植のパンフレットなどをもらえるよう、主治医経由でお願いすると「この病院はこういうことを事前/事後のケアで行うんだな」というのが分かって良いかと思います(そうすると、準備に何を持って行こうかとか、帰ってからの分も家に置いておこうか、とかも考えやすくなりますしね)
*5 お医者様とどのように付き合えば良いか、と言ったことなど結構この本に詳しく書いてありますので、もしよろしければどうぞ↓
医者が教える 正しい病院のかかり方 (山本健人/幻冬舎新書)