人生はRPG
どうやら恋人タミオ君も、郵便受けが開けられないらしい。
絶望。
今のおうちには宅配ボックスがないので、宅急便のお届けには細心の注意を払わなければならない。時間指定にしておいても、どうしても仕事が終われなくて間に合わない なんてケースもある。
昨日がまさにそうだった。不在通知が届いていたのは、私が家に帰ったほんの3分前。
今世の中は数年前と比べると爆発的にネットショッピングの頻度が高まっていると思う、宅配業者の努力は計り知れない。休みなんて滅多にないとか聞くし、できるだけ無駄なご足労をさせなくて済むように私も日々努力しているが、昨日はトラブル続きでどうしても間に合わなかった。
宅配ボックスって便利なんだな。
前のマンションではボックス自体が埋まってることも多かったけど。住民にとってもそうだけど 宅配業者の皆様にとっても、また来なきゃいけないのか…と思いながら荷物を持ち帰る気持を味わう回数が減る画期的なシステムだと思う。
妹の家とか毎日のように宅急便が届いているし、もはや宅急便のおじさんやお兄さんと仲良くなっちゃって、不在時には実家に届けられたりその逆があったりなんかしている。WinWinだからいいけど臨機応変の極み。
本当に毎日ご苦労様です、ありがとうございます。
だから私は今日必ず19時には家に帰って、20時から21時の間に届く宅配便を確実に受け取ります。
宅配ボックスがついていた前のマンションは、ついに明日が退去の日。もうすでに家が空っぽになって、どこもかしこもピカピカに磨かれて放置されたまま一週間が経つ。先週退去でもよかったぐらいだ。
空っぽになった思い出のマンションに、恋人タミオ君は一度も足を踏み入れていない。『今日は遅くなるけど仕事終わってから行く?最後の夜をあっちで過ごそうか?寝袋あるよ。』と言われた。
寝袋はあっても電気もガスも止まっちゃう。
そしてこの日記を書きなぐっている最中に水道局から電話があって、旧マンションで新住民の方が水道の契約をされていると教えてくれた。要するに私が解約できていなかった。引継ぎ処理したはずだったのにな。
ということで、水道は今日で止まるそうだ。
おトイレ行けなくなっちゃうからもうお泊まりは無理だね…夜中にトイレに起きちゃうタイプだから私たち…。
月曜日からもう新しい人が入るんだって。
もうこれで完全に旧マンションともお別れだな。
今のマンションで過ごす日々が、この先何年あるのかわからないけれど、また新しい思い出が刻まれていくんだな。感慨深いぜ。
ふたりのおうち感があんまりなかった新マンションだったけど、衣食住を完全に回すようになってから少しずつ実感も湧いてきた。
タミオ君は毎日作業着を手洗いしてからお風呂に入っているし、私が作ったご飯を美味しいと言いながら食べる。
私より先に帰った日には、お願いすればご飯も炊いてくれるし、こないだは家に帰ったら先に帰宅していたタミオ君が掃除機をかけていた。私がテレワークの日にはごみ捨てをお願いしているし、夜は寝ちゃうことも多いけど割と高確率でお皿洗いもしてくれている。
私はその度に、今でも全力で感謝を述べて体中でハグをする。いってらっしゃいのチューは忘れることもあるけど、一人暮らしの時にお客さんとして通ってくれていた時代の 残したい部分を残す努力はしている。
気付けばめっきり写真を撮らなくなった。
小一時間で返された初デートで、パンを切る手しか撮れなかった思い出から『これからは毎回一緒に写真を撮ろうね』と言ってくれたタミオ君の言葉を鵜吞みにして、会う度に写真を撮ってきた。
会う時間が短時間だったり寝るだけだったり、そうじゃないのに単純に忘れる日もあったけど、ほぼ毎回撮ってきた。
2ショットだったり、一緒に食べたご飯だったり、一方的に相手を(私がタミオ君を)盗撮したり、いろいろ。
一緒にいることが日常になった証拠かもしれないけれど、それがピタッとなくなった今月、カメラロールには新旧マンションの写真と、引っ越し初日の記念写真、お誕生日の日に連れて行ってもらったパスタ屋さんの写真だけ。
写真が増えないから、写真を振り返る機会も減る。
一緒にいることが日常になったのは、とても嬉しいことだけど、少し寂しい気がしちゃったので、新しいおうちでも気が向いたら撮ろう。
最初のうちはお片付けするので精一杯で
毎日疲れ果てて寝ていたような気がする。
今はある程度荷物が片付いて(見えなくなっただけで減ってないけど)日常生活を送れるようになったものの
毎日仕事から帰ってからご飯を作ったりお弁当を作ったり、二日に一回のペースで洗濯を回したり、平日は簡単にだけど気が付いたときに掃除したり。
今までもやってきたことだし、やること自体は全く苦にならないんだけど、二人分になったというだけで、なんだか時間がかかる。
食材もすぐになくなるし、浄水器がついていないのでスギ薬局の純水を汲みに行く頻度も倍になった。
大して凝った料理は作ってないし作れないけど、最初から無理していつかパンクするより 適度に手を抜きながら健康的に暮らせればいいじゃないか、と自分に言い聞かせている。
しかし昨日は、帰宅後に台所の床に降ろしたリュックを片付けるのを忘れていて、タミオ君に『そんなに急いで帰ってきたり頑張ってご飯作ったりしなくてもいいからね』と言われた。
床に置いたリュックも、スギの水を運んできた袋も、料理中は一切目に入らなかったけれど
頑張ってやろうとしてたんだな、と思った。やろうとはしてた。料理だってできるだけ作りたいし、一緒に食べたいし、お腹一杯にさせてあげたいし、冷めてもおいしく食べれるお弁当を用意したい。
最近は気付けばレシピばっかり見ているし、冷蔵庫の中に残っている食材の把握で脳みその半分が埋まってるような気がしてる。
今日の帰宅時間予定や、お弁当準備の要否を、毎日朝のうちに伝えてくれるようになったタミオ君のおかげで、効率的に時間も使えるようになった。
完璧を目指すつもりなんてないけれど、一緒に暮らせるようになってよかった と思ってもらいたいという気持ちがどこかにあって、無意識に頑張ってたのかもしれないな。
まだ二人分のお弁当を作る場合のおかずの量がうまく計算できなかったり、ドラム式洗濯機の洗剤自動投入機能が使えなかったり、郵便受けを開ける鍵の仕組みを攻略できていなかったりしているものの
総合的に見たらとても平和に暮らせているんではないかと、思う。
ほんの1~2週間で、この人と同棲してよかった という結論なんて出ないと思っているし、最初は楽しい嬉しいことが多くて当たり前だと思っている。
他人と確固たる信頼関係や絆を構築するのって、RPGみたいなもんで(私はゲームやらないからこれから適当なこと言いますけど)
ただゴールを目指して突っ走ったって駄目で
途中寄り道した部屋で見つけた秘密のカギがないと次のドアが開かないとか、途中で遭遇した別の人との会話に重要なヒントが隠されてたりとか
最短ルートを通ればいいわけじゃなくて
いろんな経験を積んだり、時には意図しないことに遭遇したり、遠回りして初めてゴールが見えるというか。
愛する人だろうが想い合っていようが、所詮は他人。
いくら似てるところが多くても、これまで生きてきた環境も感覚も考え方も違う二人が、支え合って分かり合って暮らしていくためには 努力や歩み寄りや時には妥協も必要よね。
私はマリオカートとかドンキーコングみたいな、見えてるゴールに向かって突き進むゲームはできるけど、国民的RPGと言われるドラクエ とかもうちっとも面白くなかった。
昔爆発的に流行ったよね、みんなやってたしな。
多分私の脳みそは当時から効率重視のせっかちだったんだろうな。
ドラクエは無理でも、これから タミオ君という他人を攻略するための人生のロールプレイングゲームを楽しもうじゃないか。
(おあとがよろしいようで)
こんなことを金曜日に途中まで書いていたけど
忙しくて投稿できてませんでした。
が、無事に宅急便は受け取れて
リビングも明るくなる予定(2個必要な電気を1個しかつけてなかった)。
お部屋も心も明るく年越ししよう。
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