【アルゼンチン.見つけていく最適解】 カタールW杯グループC第3節 ポーランド×アルゼンチン|マッチレビュー
W杯グループリーグも最終節。決勝トーナメントが決まる最終節は今まで以上に緊張感がある。そして同時刻で行われる、他会場で行われる同グループの試合状況も気になるところ。
今までにない緊張感、思惑がひしめくグループリーグ最終節はやっぱりヒリヒリ、ドキドキする。
そして今回お届けする対戦カードはポーランドvsアルゼンチンの試合。
第2節を終えてポーランドは勝点4で首位。引き分け以上で文句なしのグループリーグ突破を決める状況。
対するはアルゼンチン。開幕カードのサウジアラビア戦でまさかの敗戦。負ければ敗退の中挑んだ第2節メキシコ戦では団結とプライドを見せて見事勝利。それでも置かれた状況は厳しく、この最終節も勝利が求められた(他会場の結果次第で引き分けでもOKの状況でもあった!)。
それでは試合を振り返っていきましょう!
▪️バスを置いたポーランド
引き分けでも決勝トーナメント進出の決まるポーランドは、試合開始からリスクのかけない、重心を後ろに置いた戦いぶりを見せた。
ゴール前に4-4の分厚いブロックを形成し、猛攻を仕掛けるアルゼンチンの攻撃を跳ね返した。前半半ばからは2トップの一角も下げて、レヴァンドフスキだけを前線に残して、より分厚い“バス”を形成した。
これに対してアルゼンチンは左SBのアクーニャを高い位置に上げる。そしてこの試合左のワイドに入ったアルバレスを中に入れて、前線の厚みをもたらしたアルゼンチン。
後方は3-1の菱形を形成して、前線で待つ6人の選手たちにボールを供給。引いたポーランドに対して試合序盤から猛攻を仕掛けたアルゼンチン。
前半だけで枠内シュート7本を放つも最後は守護神GKシュチェスニーの前にシャットアウトされてハーフタイムへ。
▪️右サイドの循環を変えたアルゼンチン
前半破れなかったポーランドの壁を、後半開始早々アルゼンチンがぶち破った。
後半に入るとアルゼンチンは右サイドに少しの変化を加えた。
前半後方で前線への配球役をこなしていたSBメリーノがより高い位置でプレーする様になった。これにより先制ゴールのような形が生まれた(右ワイドのディ・マリアを回ったオーバーラップやインナーラップ。攻撃的なアクションが増えた)。
そしてメリーノが開けたエリアにIHのデ・パウルが斜めに落ちて後方と前線の繋ぎ役となり、より右サイドに好循環が生まれた。
そして先制ゴールを奪ったアルゼンチンが試合の状況を見ながらベンチが動く。アルゼンチンは先制ゴールを奪った後のベンチワークが2節目のメキシコ戦同様に非常に早かった。
よりリスクを考えたゲーム運び、戦術変更を加えていった。
▪️リスクを軽減しつつ、隙あらば
60分アクーニャとディ・マリアに変えて、SBのタグリアフィコとパレデスを投入。これによりボール非保持の陣形に修正を加えて。
これまでは4-3-3のWG外切りプレスでポーランドのボールにプレスをかけて長いボールを回収していた。
今度はメッシとアルバレスの2トップにし、中盤右にデ・パウル、左にマクアリスターを配置する4-4-2を形成。
前からかけていたプレスもやや抑制し、中盤に下がって4-4-2ブロックを形成し、ポーランドのボール保持をスピードダウンさせていった。
リスクを軽減しながらも、ボールを奪えば左右にボールを動かし、ポーランドの選手たちを動かしていった。
そしてボールを動かしている間に、ポーランドの布陣に亀裂が入るや否や一気に攻撃のスイッチを入れて攻め込んだアルゼンチン。
65分アルゼンチンにとっては大きな、ポーランドにとっては痛恨なゴールが決まる。
リードを2点に広げたアルゼンチンは伸び伸び攻撃を展開。ポーランドはこの時点で他会場のメキシコがサウジアラビアにリードしている状況で、勝点が並んでいた。
得失点差も同じ。フェアプレーポイントで僅かにリードするポーランドが2位につける状態だった。
メキシコが追加点を奪わないことを祈りつつ、ポーランドは最後は6-3-1のようなドン引きでなんとかこれ以上に点数をアルゼンチンには渡さなかった。
そして試合はアルゼンチンの2-0で勝利。アルゼンチンが文句なしの首位突破。そしてポーランドもメキシコの結果を踏まえて、本当ギリギリの状態でグループリーグ2位突破を決めた。
◾️アルゼンチン.見つけていく最適解
悪夢の開幕戦から見事首位突破を決めたアルゼンチン。どん底から這い上がる中で確かな最適解を見つけたアルゼンチン。
ここまでアルゼンチンの予選リーグ3試合全て見てきたが、この試合第3節のチームとしてのパフォーマンスが一番よかった印象を受けた。
2戦共に布陣はメッシとラウタロの2トップの4-4-2。そして迎えた最終節は4-3-3の布陣に変更。メッシがトップのアルバレスの左WG起用。
守備ではアルバレスとディ・マリアがサイドを切りながらの中央へのプレッシング。メッシは中盤に落ちてスペースケア。
アルバレスの守備能力、献身性は申し分なし。逆サイドのディ・マリアサイドはやや守備局面で難があるが、そこはデ・パウルが右IHにいることで補完。
アンカーにエンソ・フェルナンデスがいることで、攻守でデ・パウルが持ち前の運動量を活かしたプレーを解放。
左IHマクアリスターも持ち前の器用さで、攻撃のバランサーに。機を見てはドリブル侵入からのチャンスメイク。そして先制ゴールとなるペナへのランニングもお手のもの。
アルバレスはボール保持時には中に入りストライカーの役割。左SBのアクーニャが左の幅をとりサイドを抉る。
アルバレス、デ・パウル、エンソ・フェルナンデス、マクアリスターと豊富な運動量、柔軟性のある4人がいることで、メッシやディ・マリアはより自由に解放したプレーを見せた。
そして色んな手札もこの厳しいグループリーグの中でベンチは手に入れた。状況に応じてはロメロ、オタメンディ、リサンドロ・マルティネスを最終ラインに並べる3バックも。
この試合のようにバレデスを投入してより強固な中盤を形成することも。
苦しみながらも、確かなチームとしての感触を手に入れていった印象のアルゼンチン。決勝トーナメントからの戦いは更にギアが上がるはず。
メッシ最後のW杯に試合を重ねるごとに団結するアルゼンチンを見逃す訳にはいかなそうだ。