【リベンジを果たしたイングランド】 イタリア×イングランド EURO2024予選第1節|マッチレビュー
EURO2024予選。EURO2020決勝で相まった両者がいきなりのアゲインマッチ。イングランドにとってはあの時の決勝の借りを返すべくイタリアへ乗り込んで行った。
前半はイングランドのゲームに。しかし後半はイタリアが巻き返す展開に。非常にスピーディーで戦術的なやり合いも多かった非常にハイレベルの90分間だった。
それでは簡単ではありますが試合を振り返っていきたいと思います!
▪️イングランド.攻守でイタリアを制圧
試合開始こそホームの後押しを背にイタリアが攻め込むシーンも見られたが、イングランドがあっという間に攻守でイタリアを制圧していった。
まずはイングランドのボール保持局面の解説。
▼イングランドのボール保持
イングランドは後方からしっかりボールを動かしながら、イタリアの出方に合わせてショートパス、そして長いボールを織り交ぜたビルドアップを見せていった。
イタリアのボール非保持のプランは4-2-3-1のような陣形でのプレッシングだった。4バックでイングランドの3トップを監視し、サイドアタッカーはイングランドのSBへプレス。
中盤のヴェラッティはフィリップスを。ジョルジーニョはベリンガムを捕まえた。
そしてもう一人の中盤バレッラはトップのマテオ・レテギと縦関係となりイングランドのアンカー、ライスを捕まえながら、イングランドのCBへのプレスに出るタスクを担った。
そうなるとイングランドの2CBもしくはアンカーのライスがフリーになる噛み合わせてとなった。そこをしっかり利用してイングランドの2CBにバレッラが一列前にプレスに出た瞬間にフリーとなるライスにパスを繋いで前進するイングランド。
そのイタリアのプレスの噛み合わせんズレはイングランドのSBに時間とスペースを与える要因になるシーンも。
イタリアのWGがやや内側に絞ってイングランドの2CBにプレスに出ると、イングランドの両SBウォーカーとショーはややサイドに位置どりボールを引き受ける。この二人は相手の出方に合わせて色んな立ち位置を取れるSB。
CBで試合に出場したり3バックのサイドを務めることも出来るユーティリティー性の高すぎるSB。そんな選手が両SBに入れば戦術的な決まりもあまり設定しなくても、その場で起きている状況に合わせて最適な答えを出すのも非常に容易。そんなプレーをウォーカーとルーク・ショーが披露することも前半は多く、イタリアのプレスはさらにかかりづらくなっていった。
そして右SBのウォーカーはサイドでボールを受けると、すかさず右の幅をとるWGサカへ縦パスをつけていく。逆サイドのルーク・ショーも左の幅をとるWGグリーリッシュへ縦パスをつけていく。
SBからWGへの縦パスは相手のプレスの標的になりやすいがイングランドのWGはサカとグリーリッシュ。
サイドで相手を背負ってボールをキープするのがべらぼうに上手い二人。そこを上手く利用してWGが背負う→時間作る→WGが中盤へ横パスor縦パスを出したSBが上がってリターン→イタリアのファーストプレスを剥がすというシーンは前半何度も見られた。
そして困った時のロングボールもしっかり準備されていたイングランド。イタリア代表にとってはさらに頭を悩まされる要因に。
後方が手詰まると前線のケイン目掛けてロングボールが蹴り込まれる。難しいボールでも涼しい顔をしてボールを収めてしまうケイン。ビルドアップの出口となるだけでなく、しっかりゴールも決めて世界一万能と言われるFWの仕事っぷりを大いに見せつける結果となった。
▼イングランドのボール非保持
ボールを持っていない局面でもイタリアの思い通りにはさせなかったイングランド。
マンチーニのイタリアのボール保持局面での大きな特徴といえば左SBのスピナッツォーラが高い位置に上がって左サイドに厚みをもたらして攻め込むスタイルだ。2020のEUROではこの形が大いにハマり優勝の立役者となった。
そんなイタリアの特徴的なビルドアップにもしっかりと対応を見せたイングランド。
高い位置に上がる左SBスピナッツォーラにはサカが下がって対応。もしくはCBからスピナッツォーラへパスコースを背中で消していったサカ。
スピナッツォーラが高い位置をとると、それに合わせて中盤のヴェラッティが斜めに落ちてCBからボールを引き受けるアクションを見せる。しかしそのアクションにもフィリップスがしっかりプレスに押し出され簡単にはヴェラッティにプレーはさせなかった。
イタリアのボールに触ると大きな仕事ができる選手には厳重にマークについていったイングランド(ジョルジーニョにはベリンガムはマーク)。
しかしこれではイタリアの2CBのどちらかがフリーとなる構造だがそれは容認済みだったイングランド。イタリアの2CBがパスを出した先でボールを奪うことがイングランドの狙いで、前半はその思惑通り何度もイタリアのCBからの縦パスを奪い去った。
▪️イタリアの巻き返し
前半攻守でイングランドにしてやられたイタリア。2点のビハインドを負って後半へ。ホームでこのまま終わるわけにもいかないイタリアは、後半から猛攻を仕掛けていった。
▼より前に出たプレッシング
イタリアはプレスのかからなかったイングランドの2CBへより圧力をかけに出るようになった。
ビルドアップの始まりとなるイングランドの2CBにバレッラが明確に一列前に出てプレスに出るように。そうなるとイングランドの中盤にフリーマンができてしまうが、そこは横のスライドでサイドのアタッカーがボールサイドに絞ってその穴を埋めた。
すると後半入って10分で1点を返す。起点はバレッラのイングランドのCBへのプレッシングからだった。
イングランド陣内でCBマグワイアの縦パスを回収しショートカウンターを発動したイタリア。そのボールを左WGのペッレグリーニが中に絞ってバイタルでボールを引き受けて、最後はイングランドのDFライン3人を引きつけてパス。絶好のパスを受けたレテギが冷静にゴールに打ち込み1点を返したイタリア。
アシストをしたペッレグリーニのこのアクション、プレーをする立ち位置が後半イタリアの攻撃を活性化させた一つの要因となった。
▼前線中央の厚みを確保
前半イタリアはイングランドに前線への縦パスを何度も引っ掛けられボールをロストしていった。
その要因の一つが縦パスを受けるトップのレテギの周りにサポート選手が少なかったことだ。イタリアのCBからのパスの先の選択が少なければ当然イングランドはどこにパスが入るのか予測しやすい。
そこで左WGのペッレグリーニはよりインサイドでプレーするようになった。
ペッレグリーニは高い位置に上がる左SBスピナッツォーラとサイドで被ってしまうシーンが前半あったがその辺りを修正することで、中央前線に厚みをもたらし、よりスピナッツォーラが高い位置でプレーできるスペースも提供する相乗効果を作り出していった。
▪️おわり
試合は段々とヒートアップし80分にこの日2枚目となるイエローカードをもらった左SBルーク・ショーが退場。
これによりさらにイタリアが攻撃を加速させると思いきや、一人少なくなったことで、また残りの時間も考えてイングランドがやらなければいけないことは明確に。
そしてそれを実行するための交代カードもサウスゲートが切ったことも重なり(カイル・ウォーカーとリース・ジェームズの縦関係は対人強すぎて笑ってしまった)、イングランドのゴール前はより強固になり、イタリアの攻撃は停滞。そのまま試合は終了。
2-1でイングランドがEURO決勝の借りを返す結果となった。非常にハイレベルで戦術的にも興味深かった90分。さすがヨーロッパといったクオリティのフットボールを見せてくれた。