【CL仕様の戦い】|FCコペンハーゲン×マンチェスター・シティ|マッチレビュー|23/24 チャンピオンズリーグround16 1stleg
ペップ・シティのチャンピオンズリーグ2連覇への挑戦の始まり始まり。
決勝トーナメント1回戦。round16で対戦するのはグループAを勝ち上がったFCコペンハーゲン。バイエルン、マンU、ガラタサライが揃った熾烈なグループリーグを堂々の2位で勝ち上がり、13季振りの決勝トーナメントへ進出。
そんな彼らの本拠地パルケン・スタジアムへ乗り込んだCL王者は堂々の戦いぶりを終始見せつけた。
それでは簡単ではありますが試合を振り返っていきたいと思います!
▪️CL仕様の戦い方
試合開始からシティは、ホームの大声援を受けるコペンハーゲンに臆することなく主導権を握っていった。
そんな中でもシティは普段のプレミアリーグや国内のカップ戦とは異なりCL仕様の戦いぶりを見せた。
シティはボールを保持すると左CBに入ったストーンズがアンカーロドリの位置まで上がり、中盤でプレーをする偽CB戦術を採用。
それにより最終ラインは3枚となり中盤の底には2枚が並ぶ、後方[3-2]配置でボールを動かしていった。
ペップ・シティの後方[3-2]配置といえば昨季欧州を圧巻した形だが、今季はここまでこの配置でボールを保持することは少なかった。
今季のペップ・シティは新たな試みとして、両SBが高い位置に上がり、WGの選手をインサイドに押し込みより中央、よりライン間に人をかけて中央突破を試みる形を多くの試合で採用している。
しかしこの試合、そんな新たな形は封印した。
両SBはまずは最終ラインのケアにつとめ、相手を押し込み切ってから高い位置に上がる。最初から高い位置に上がり、WGをインサイドに解放するシーンは今季の戦いぶりを見ている中では本当に少なかった。
なぜ両SBを早い段階から高い位置に上げなかったのか?それはいつもよりも守備に重心を傾けていたから。CLという舞台。しかも決勝トーナメント初戦であり、アウェイの地を踏まえ、ペップがそうさせたのだろうと私は解釈している。
WGの人選やWGの振る舞いからもCL仕様になっているなと感じた。
前述したが今季のペップ・シティのボール保持の陣形は早い段階でSBが高い位置に上がってWGはインサイドに入ってプレーすることが多く求められた。それにより出場時間を減らした選手がいる。ジャック・グリーリッシュだ。しかしこの試合のスタメンに彼の名前があった。
偽CBストーンズを用いた後方[3-2]ビルドアップを採用したことで大外ワイドでプレーする役割を与えられたのはWGの選手。グリーリッシュが一番得意なプレーが発揮できる陣形というわけだ。
そして彼はボールを持つとチームのスピードを落とせる選手。相手を集めてゆっくり攻め込んでボールを保持する時間を増やし、カウンターを受けるリスクを下げる。ゲームのスピードを落とせる。それによりオープンな展開をコペンハーゲンに起こさせない狙いが左WGにグリーリッシュを採用した意図だったはずだ。
逆サイドWGに入ったフォーデンもCLだからこその自分に授けられた役割をしっかり理解していた。
フォーデンは今季グリーリッシュとは正反対で出場時間が増えている選手だ。それはハーランドやデ・ブライネの怪我に伴う理由もあるが、彼がインサイドに入ってプレーする力に長けている理由が挙げられるはずだ。
SBが高い位置に上がることで、フォーデンは解放され、インサイドでその持ち前のスキルで狭いスペースで圧倒的なパフォーマンスを発揮。
そんなフォーデンはゲームが落ち着くまで、インサイドに絞ってプレーする振る舞いはあまり見せなかった。
右サイドでタッグを組む右SBカイル・ウォーカーもいつもの様にサイド高い位置に上がらなかったのも理由だが。
この試合フォーデンが与えられた役割とは?
サイドに一度り相手のバック4をピン留めすること。そしてボールをワイドで受けたらゆっくり周りのサポート、関わりができるまで無理をして攻め込まない。相手SBがワイドでボールを持つフォーデンに食いついた瞬間に、チャンネルへ走るデ・ブライネへスルーパスを流し込む。
試合経過と共にフォーデンはインサイドでプレーする回数を増やしていった。
(デ・ブライネが怪我から帰ってきた時フォーデンはどうなるの?デ・ブライネとフォーデンが共演できるのか?というシティファンが抱えていた嬉しい悩みを解消するような連携がうっすら見えたのも嬉しかったね)
この試合シティが奪った全ての得点はフォーデンのサイドが起点となった。その解説は次の章で。
CL仕様となっていた理由をまとめると、
CLの戦いぶりはいつもと違うんだぞ!いつもよりも安全に。ゆっくりと。守備を重視した戦いぶりが必要なんだぞ!というようなメッセージがペップから伝わった。
▪️ペップ・シティの十八番炸裂
この試合のペップ・シティはとことん自分達がここまで作り上げてきた得意技を炸裂させていった。前述したストーンズを用いた後方[3-2]ビルドアップも彼らが得意とする形。
そしてペップ・シティと言えば!?と言われた時に思い浮かべる攻撃戦術がポケット侵入だろう。
この試合何度も何度もポケット侵入からゴールを奪って見せた。後半4バックから5バックに変更したコペンハーゲンだったが、それでもペップ・シティの十八番であるポケット侵入を止めることはできなかった。
コペンハーゲンは前半、[4-3-3]の陣形で自陣にブロックを形成して中央をしっかり固めていった。それに対してシティは後方[3-2]でビルドアップ。
シティの最終ラインが4枚から3枚になったことでコペンハーゲンの3トップとプレスが噛み合いそうだが、コペンハーゲンの中盤、前線の[3-3]は非常に中央にコンパクトな陣形だった。3トップのサイドをつとめたアシュリとエルユヌシは中盤の底に立つロドリとストーンズのパスコースを切る役割もになっていたので、思いっきりシティの3バックへプレスに出れない状況でもあった。
またシティのSBウォーカーとアケもコペンハーゲンのプレスの状況を見てサイドに広がって、アシュリとエルユヌシのプレスが届き難い位置どりをすることも。そんな彼らが広がたことで開くスペースにストーンズやロドリがドロップしてボールを引き受ける連動性も見せることでコペンハーゲンの3トップがシティの可変した3バックにプレスが噛み合うことはなかった。
この様にしてシティは安定的にボールを保持していった。ボールを保持し、相手を押し込む状況を作れば次の段階が。それはフィニッシュワーク。どのようにして中央を固めるコペンハーゲンの[4-3-3]ブロックを攻略していったのか。
中央を固めてくるので当然空いてくるのはサイドのエリア。ワイドで待つフォーデンとグリーリッシュへ悠々ボールが入る。怪我により20分交代となってしまったグリーリッシュだったが、そんな短い時間でも彼は自分の良さを遺憾無く発揮。グリーリッシュがサイド深くでゆったりボールを持つと相手はWチームを形成して対応。
その瞬間に後方支援する左SBのアケへマイナスパス。グリーリッシュが相手サイドを2枚引きつけることで開くマイナスハーフスペースエリア。フリーでボールを受けたアケがダイレクトでクロス。それを頭で合わせたデ・ブライネがこの試合最初の決定機を演出した。
そして逆サイドのフォーデンもゆっくり、周りのサポートが入った瞬間にコペンハーゲンの4バックの泣きどころを突く一手を打ち込んでいった。
中央を固めるのであれば外から!と言わんばかりに全3ゴールをサイドを起点に奪ったペップ・シティ。
▪️おわり
幸先良き先制点を奪ったシティだったが、GKエデルソンの配給ミスから試合を振り出しに戻されるも王者は決して慌てることはなかった。戻されたリードはしっかり前半のうちに再び点差を開ける。そして後半はより試合をスローダウンさせて慌てずじっくりボールを保持。最後は再びフォーデンの右サイドを起点にデ・ブライネとフォーデンの共演で3点目をゲットしたシティがしっかり点差も開けて勝利を持ち帰った。