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グヴァルディオルから読み解くグアルディオラの変化。|23/24 マンチェスター・シティ

前人未到のプレミアリーグ4連覇を達成したペップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・シティ。

そんな偉業に大きく貢献した新加入のグヴァルディオル。どんなプレーを見せてくれたのか。どんな影響をチームに及ぼしたのかを振り返っていきたいと思う。

そしてそんな話を考える中で、何だかペップ・グアルディオラの頭の中の変化。心境の変化を汲み取れるように…そんな話も添えて…


▪️懸念点を正解にするペップらしさ

今季ライプツヒィから加入したグヴァルディオルはすぐさまペップ・シティのレギュラーの座を掴んだ。

彼がペップから与えられた主戦場は左SBだった。主戦場が左SBはまだ腑に落ちたが、問題はそのポジションで与えられたタスクに私は正直、懸念点を持っていた。

なぜ私はそんな気持ちを抱いたのか?

その大きな要因は彼がスカイブルーのユニフォームを着る前のプレー印象が強くあったからだ。

W杯やCLでのグヴァルディオルのCBでの対人守備の強さ。無双っぷりは凄まじかった。

そんなプレーっぷりから私は。新加入が決まってから勝手に。左CBを主戦場にカウンター時には相手の攻撃をシャットアウトしてくれる!左SBに入った場合は、ストーンズやアカンジの偽CBや偽SB戦術に伴い、後方3枚の左に入ってウォーカーやルベン・ディアスと共に最終ラインの番人になってくれるんだろうと勝手にイメージしていた。

しかしペップがグヴァルディオルに与えたタスクは私の想像をことごとく裏切るものだった。左SBでの起用は前述した通り予想はできたが、予想外だったのはその中身。タスクだった。

ペップがグヴァルディオルに授けたタスクはより攻撃的な左SBタスク。より高い位置に上がり攻撃に厚みをもたらすSBタスクだった。

確かにライプツィヒやクロアチア代表でCBからドリブルで持ち上がるのは彼の持ち味の一つだった。そんな一面もペップが自チームに招き入れた要因だったはず。ペップの求めるDFラインの攻撃適正もあったはずだが、それをSBのポジションでやらすのか。グヴァルディオルには出来るのか?というのがシーズン序盤の正直な感想だった。

案の定クロスの質が伴わない。幅をとった時のSB→WGタスクが足りない。SBの守備が怪しい。中に絞り過ぎてサイドにボールを入れられすぎ!という問題が当初発生。

でもそれらの課題をどんどん解決していったグヴァルディオル。見えない努力の賜物。上手くさせていったペップ・シティの功績が見られるように。

シーズンを通してグヴァルディオルはどんどん攻撃力をアップ。出来ることを確実に増やしていった。

懸念点を正解にしちゃうペップ。実にペップらしい。

多分ペップにはこんな未来が明確に見えていたんでしょう。ただ単に私の見る目がなかった。グヴァルディオルがどんな選手なのかというリサーチ不足。初めからグヴァルディオルのSB起用は間違いではなかったんでしょうね。

(でも私と同じ気持ちを抱いたサッカーファンは少なくなかったはず。ここまでグヴァルディオルがSBとして攻撃的なパフォーマンスを見せることは想像していなかった人はいっぱいいたと思っています。)

シーズン終盤には印象的な崩しのお膳立てやゴールを量産。ゴールへ直結する仕事も増やしていった。本当にDFとは思えない動きを連発。

誰も知らなかったグヴァルディオルをグアルディオラが引き出したのだ。

▪️解放されたシティの至宝

グヴァルディオルのSB起用はチームにも大きな好循環をもたらした。昨季浮き彫りとなったシティの課題。昨季に限らずにその前からという表現の方が正しいだろう。

自陣に5バックを形成するチームをどう崩し切るかという課題だ。昨季のCL決勝ではインテルの5バックの前に何度も攻撃を阻まれて何とか勝利を勝ち取った。そんな試合の前に行われたリーグ戦。昨季リーグ最終節のブレントフォード戦では5バックをベースにしたブロックを崩し切ることが出来ずに試合終盤に1点を奪われ敗戦。もっと過去を掘り返せば20/21シーズンのCL決勝。トゥヘル率いるチェルシーにこちらも5バックを形成した相手を崩しきれずに苦い思いをした。

そんな過去に何度も苦しめられた5バックベースのブロックを、今季は攻略するシーンを多く見せてくれた。

その大きな要因は両SBの攻撃参加だった。左SBグヴァルディオルと右SBのカイル・ウォーカーは積極的にサイドの高い位置へ。前の陣形に合わせて右SBのウォーカーはその立ち位置を微調整したが、左SBのグヴァルディオルは積極的に前線へ攻撃参加していった。

SBが高い位置に上がることでWGの選手たち今までよりもよりインサイドでプレーするようになった。そしてこの戦術で一番恩恵を受けた。才能を解放されたのがシティの至宝。フィル・フォーデンだった。

SBが高い位置に上がる。ワイドのフォーデンが中へ。相手の5バックの前のスペース。狭いライン間で縦パスを受けて相手の守備網を壊し続けたフォーデン。今現在このエリアでターンをさせたら世界で一番巧くて、試合を決定づける力のある選手に成長したと私は思っている。

デ・ブライネの長期離脱に伴い出場時間を増やしていったフォーデン。それ+このSBの高い位置に上がる戦術によって攻撃の自由を与えられて、今季一気にその才能を爆発させたフォーデン。今季のプレミアリーグMVPを獲得する程の大活躍を見せてくれた。

▪️やっぱり両利きだった

私はスカイブルーのユニフォームを着てプレーし始めてからずーっと『グバルディオルは両利きだ!』と言わせて頂いたがやっぱりそうだったみたいですね。

左サイドの幅をとった際に左足でボールを止める→中にボールを運ぶ→カットイン→右足でリリース→左ハーフスペースへのスルーパスや、斜めへの楔パスは彼の得意技の一つに。

これは同じ左利きのナタン・アケも向上させているプレーでチームとしての狙いも感じられる。

左利きに限らずに右利きの選手も。特にサイドでプレーする選手には利き足から逆足に持ち替えてからのボールリリースは相手の狙いを定めさせない。逆を突ける!ので習得しておいて損はないスキル!

サッカー少年には是非真似して欲しいプレーだ。

パスだけでなく、ファーストタッチ、ドリブルでも難なく逆足の右足を使えるグヴァルディオル。

右足でミドルまでうてるように。本当に底知れぬポテンシャルを見せつけ、これから、さらに、ペップの元でどんな進化を遂げるのか本当に楽しみだ。

そしてグヴァルディオルが左SBとして右足でもボールを扱えるメリットはこんなプレーにも。

▪️カンセロが担ったタスクも

左SBに右利きのプレイヤーを配置した時期がペップ・シティにはあった。その男の名はジョアン・カンセロ。

かつてこんな記事も書かせてもらいました。

逆足サイドバックには様々なメリットがある。そんな話をさせて頂いた。そんな逆足サイドバックが担うプレーも両利きのグヴァルディオルには出来てしまう。

懐かしのカンセロの左SBでのプレー↓

ん?違う違う。こう言ったプレーではなく。カンセロが自陣でのビルドアップ時に担ったプレーを、グヴァルディオルも担っているなという話。

自陣深くでGKもしくはCB。後方中央でプレーする選手がプレッシャーを受けた際、一つの逃げ道となったのが、グヴァルディオルの相手を背負って右足でボールを扱うプレーだ。

左サイドで右足でボールを触ることで、相手からボールを離して、ボールを守ることが出来る。逆足WGのポストプレーを思い浮かべると分かりやすいかもしれない。

サカやグリーリッシュのお得意技。

右足も難なく扱えるグヴァルディオルだからこそのプレー。本当に地味かもしれないが、後方からビルドアップを試みるチームとしては相手にプレスを受け止めれるプレーは非常に助かる。

ボールを受けたグヴァルディオルは相手を背負ってキープ。相手のプレスバックを引き付けてリーターンして最終ラインの味方をフリーに。もしくは背負って中へのカットインからの右足リリースで中央のロドリへパス。一気にオープンな展開を作り出す役割も担った。

▪️ペップの頭の中の変化

最後にペップの頭の中の話をしたいと思う。

グバルディオルしかり、ストーンズしかり、アカンジしかり。元々守備的な選手に攻撃タスクを与える様子が近年見られる。

今までペップがシティで採用してきたSBタイプを頭に思い浮かべて欲しい。

過去にはCBのラポルトが左SBを担うシーズンもちらっとあったが、それ以外のほとんどは元々中盤より前を主戦場とする選手がペップ・シティのSBを務めることが多かったはずだ。

デルフ、ジンチェンコ、カンセロ。昨季はベルナルド・シウバが左SBを務める試合もあった。

そんな人選からアケ、ストーンズ、アカンジ、グヴァルディオルへとSBの起用が移り変わっている。

この人選の変化に皆さんは何か感じることはないだろうか?私は次のようにペップの心境が。頭の中が変わっているのかなと予想した。

攻撃的な戦術やスキルを後発的に教える(伸ばす)ことはできるが、守備的な戦術やスキルを後発的に教える(伸ばす)ことは難しい。

そんな心境の変化がペップから感じるように。

元々攻撃的な選手をSBにコンバートしてボールを保持した際に攻撃的なスキルを発揮してもらう。それが今までのペップ・シティのSB像だった。しかし当然SBに入ればSBの守備タスクも同時に求められる。ポジショニング、対人守備、スピード、高さ…色んな守備的な要素が求められる。相手が強くなるほどそんな要素は多く求められる。

CLを勝ち上がるためにも。群雄割拠のプレミアリーグで勝ち続けるためにも攻撃センスよりも、守備のスキルの高い選手を最終ラインに並べるようになっていった。

その守備スキルを伸ばすのは難しい。攻撃スキルを伸ばすよりも難しいと感じるようになったのかなと私は考察している。

守備力のある選手に攻撃的なスキルを授ける方が伸ばせる。そっちの方がペップは得意。そんな頭の中の変化を今季、SBのグヴァルディオルのプレーを見る中で感じるようになった。

高い攻撃力の素材を持った選手の守備力を上げていく。から
高い守備力の素材を持った選手の攻撃力を上げていく。へ。

アカンジもどんどん攻撃的スキルが増している。CL準々決勝2nd legのマドリード戦のアカンジの攻撃参加はすごかった…

どんどんCBがペップ・シティのスタメンを埋め尽くしていく。来季は是非6CBが並ぶスタメンを見たい(右からアカンジ、ルベン、アケ、グヴァルディオル。2CHロドリ、ストーンズ。右のWGにカイル・ウォーカーを置いたらCBができる選手が7人並ぶことに!?)。

ペップ・バルサではMFがスタメンを支配し、ペップ・シティではDFがスタメンを支配する。そんなペップの頭の中の変化が…

▪️おわり

いかがだったでしょうか。ここまで今季新加入のグヴァルディオルを中心に話を進めてきたが、まだまだこの男はポテンシャルを秘めているプレイヤー。まだ年齢は22歳と日本の大学生!?と変わらない。最近Jリーグでも話題の多い大卒Jリーガーと変わらない年齢。ペップの元で更なる進化が本当に楽しみだ。

個人的には来季。グヴァルディオルには純正CBとしてのプレーも見てみたい。守備的な仕事に専念させたらどんなパフォーマンスを見せてくれるのかは見てみたい。

前線のフォーデン、ハーランド。そして後方にはグヴァルディオル。シティの未来は本当に明るい限りだ。来季はCLの奪還。そしてプレミアリーグ5連覇を目指してほしい!

今季も皆さんお疲れ様でした!


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