【武器を隠して、出して】カタールW杯 グループF 第1節 クロアチア×モロッコ|マッチレビュー
前回大会準優勝国のクロアチアの登場。この4年間で上手く世代交代も上手くいき、前回大会よりも強いのでは?という呼び声も高くカタールに乗り込んできた。
生きる伝説モドリッチは健在。それに加えて中盤を形成するブロゾビッチ(インテル)、コバチッチ(チェルシー)は世界屈指のタレントが揃う。
しかし対するモロッコもタレント!という面では負けていないほどの粒ぞろいの選手たちを有する。
昨季ラ・リーガ最優秀GK賞を受賞したボノ(セ ビージャ)。SBにはハキム(PSG)やマズラウィ(バイエルン)。前線にはツィエク(チェルシー)、エン・ネシリ(セビージャ)が揃う充実ぶりだ。
果たしてこのタレントたちは活躍を見せたのか?そんな期待とはややかけ離れる焦ったい、我慢が必要なそんな試合となった。
それではゲームを振り返っていきましょう!
(私のイチオシ左利きCBグヴァルディオルがバットマンになっている!今月に入って鼻骨折しちゃったみたいですね!今現在私の左利きCBコレクションの上位の上位にいるので皆さんも是非ご注目ください!)
◾️守備は武器を隠しながら
クロアチアがボールを持つとモロッコは4-5-1のミドルブロックを形成。このブロックの1番の見所は中盤に並んだ5人の守備ラインだ。
横幅68mを5人の中盤が横並びに立つことで、クロアチアの最終ラインから前へ前進するスペースを消しにいった。
縦パスも刺せない。横幅も使えない。どこにボールを出そうか?とクロアチアは最終ラインで出しどころを探す時間が増えていく。
そしてそうやってクロアチアがもたついている間に、モロッコの中盤5人の1人が自分の持ち場からクロアチアの保持するボールに対して縦方向にプレスに出る。
守備は武器を隠しながら。
前進を立ち位置で塞ぐだけでなく、ボールを奪う武器も隠し持っているモロッコの中盤5人がクロアチアの攻撃を停滞させていった。
◾️攻撃は武器を振りかざしながら
非常に組織化された守備を見せたモロッコ。守備では隠した武器を、攻撃では打って変わって持っている武器を振りかざしながらクロアチアゴールへ迫っていった。
モロッコ自慢の武器といえば、世界屈指の選手が並ぶ右サイドだろう。右SBハキミと右WGのツィエクの右サイドを中心に攻撃を組み立てていった。
クロアチアのボール非保持の陣形は4-2-3-1。トップのクラマリッチとモドリッチが縦関係となり、中央のスペースをケアすることを最優先していた。
モロッコの後方は2CB。クロアチアはワントップでプレスに出たのでここで一つの優位性が生まれる。モロッコの両SB共に左利きだったのは面白かった。
特に右CBに入った左利きアゲルトンは前方にスペースがあると持ち運ぶこともでき、クロアチアのファーストプレスを悠々と超えるシーンも。
モロッコは2CBに加えてアンカーのアムラバトンもボールに上手く関与させて後方からのビルドアップをより安定させることに。
そして保持したボールを自慢の右サイドへ送り込むと攻撃にスイッチが入る。
右サイドのSBハキミ、IHウナヒ、WGツィエクの3人が上手く旋回することでクロアチアのプレスが定まらない状態を作り出した。
SBのハキミが高い位置に上がれば、WGツィエクは中に。WGツィエクが幅をとれば後ろにSBハキミ、中へのパスルートはウナヒが作り出す。
そして右サイド深くを抉るとツィエクとハキミの武器を存分に使ってゴールへ迫っていった。
そして中に待ち受けるFWもモロッコの大きな武器だ。
セビージャに所属するエン・ネシリ。彼の良さであるポストプレーや高さを活かすボールが送り込まれシュートに持ち込むシーンも見られた。
しかしクロアチアに決定的な打撃を与えるまではいかず、試合経過とともにボールを保持される時間が増えていき、単発なカウンターが目立つようになっていったモロッコ。
◾️それでも仕事をするモドリッチ
モロッコの5-4-1ブロックによって中盤よりも前へ進入する術を取り上げられてしまったクロアチア。
モロッコの中盤5人を超えられないことで、下がって受ける選手が多くなり、それを反対に狙われて中盤でボールをロストする回数も増えていったクロアチア。
ボールを保持した時の組織的な配置チェンジも見られずに攻撃は停滞していったクロアチア。しかしこういう時に個人で局面を打開できるのがタレントであり、クロアチアにはそんなタレントがいる。
モドリッチがモロッコの守備の外から徐々にチャンスを演出していく。
モドリッチが最終ラインまで落ちて2CBと同じラインでボールを受けるようになる。これに対してモロッコも縦のスライドでボールに出るもそれをひらりとかわすモドリッチ。
そして前半終盤モロッコのブロック外からモドリッチが好機を演出する。右に落ちたモドリッチが前を向くと、一枚相手をかわして左足で浮パス。モロッコの分厚い中盤5枚の頭上を通すパスから決定機を演出。
しかしここはGKボノの前に阻まれゴールとはならなかったが、徐々に亀裂を入れていったクロアチア。
後半に入るとクロアチアのボール保持率は高まり、少しづつモロッコの陣形が後ろに下がる。
しかしそれが更にこの試合を停滞させることに。下がったモロッコをクロアチアも最後まで崩し切ることは出来ずに、勝点1を分け合う結果となった。
◾️おわり
守備では武器を隠し、攻撃では武器を出したモロッコに戦い方は非常に組織化されており面白かった。気になったのはやっぱり選手個人の質の部分。質がある選手もいる一方やや足りない選手もいるという感じ。優位性は作れているけどパスを通せない!少し立ち位置が悪い!という具合にボールをロストするシーンが目立ち、それが結果としてチームがジリジリと下がってしまった要因かと。
クロアチアは反対に個人に頼る面が多かった。守ってはロブレンやグバルディオルのCBの質で最後は守る!攻撃ではもう少し全体の配置を整備したら、モドリッチやブロゾビッチの展開力が活かされるよね!というシーンもあった。
SBとSHの関係性が特に気になった。SBが高い位置に上がってモロッコの4バックのSBに数的優位作ってサイドチェンジ!を織り交ぜてもモロッコの分厚い5人の中盤も超えられて攻め手が増えた感じはした。
スコアは動かなかったが両チームの思惑、らしさは垣間見えたので個人的には面白いゲームだった。グループFは結構力が均衡していると思うので、第3節まで目が離せないゲームが続くのではないかと思っている。ベルギー、カナダも普通に強いもんね!
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