【やっぱり至高な90分】プレミアリーグ第11節 リヴァプール×マンチェスター・シティ|マッチレビュー
さぁやってきましたこの一戦。
ペップシティ×クロップリヴァプール
このカードは毎回世界最高レベルの戦いを見せてくれる。
今回も言うまでもなく、そんな世界最高峰の最高の90分を見せてくれた。
今季ここまで調子の上がらないリヴァプールは多くの不安を抱えてこのビックゲームに挑んだはず。しかしアンフィールドの声援も力にそんな不安も、うるさい外野も、結果という形で吹き飛ばして見せた。
対する赤い要塞に乗り込んだペップシティ。非常に勇敢さを感じるプレスや、設計されたビルドアップからチャンスを量産しただけに悔しさはいつも以上に多かったかもしれない…
それでは簡単ではありますが試合を振り返っていきましょう!
▪️前に出たのはシティ
こういうはじまりを多くのサッカーファンが予想したのではないか?しかしピッチで広がった光景は違った。前から出たのはマンチェスター・シティだった。
リヴァプールのおかぶを奪うかのように、ペップシティがキックオフから非常にアグレッシブな勇敢なプレッシングからペースを掴んでいった。
リヴァプールが自陣でボールを握ると、シティはマンマーク気味で人を明確に掴まえてショートカウンターを発動させていった。
ギュンドアンとデ・ブライネが2CBを掴まえに前に出る。ハーランドがアンカーのファビーニョを監視し、ベルナルドとロドリがIHをそれぞれ掴まえた。右SBミルナーにはフォーデンが、左SBのロバートソンにはカンセロが縦にスライドをして出て行く。そしてリヴァプールの3トップには、アカンジ、ルベン・ディアス、アケが時には数的同数になりながら対応していった。
いつもより明確に。いつもよりもメッセージ性が強いハイライン・ハイプレスを見せたペップシティ。リヴァプールの陣内でボールを奪い、ショートカウンターを発動させるシーンも見られた。
しかしリヴァプールもやられっぱなしの訳がない。前半15分を過ぎたところでリヴァプールが少しづつシティのハイプレスに対して糸口を見つけていった。
▪️リヴァプールの4つのハイプレス対応
リヴァプールはシティのハイプレスに対して4つの対応を見せた。
①.長いボールを使ったスクランブル
シティがハイライン・ハイプレスという事。そして明確に人を掴まえにくるという事で、前線の数的同数を狙って長いボールを蹴り込み、そこでセカンドボールを拾って前向きを作り、一気にスピードアップしていった。一つの長いボールに対して複数の選手が一気に関わりスクランブルを作り出し、ハイプレスを掻い潜るシーンも。
②.左SBロバートソンの深い位置どり
リヴァプールは長いボールだけでなく、後方でボールを繋いで、シティのハイプレスを受け止めて掻い潜るビルドアップも見せた。そのキーとなったのが左SBのロバートソンとIHのチアゴそしてフィルミーノだった。
まずはロバートソン。左SBのロバートソンにボールが入ると、カンセロがプレスに出る。カンセロは初めからロバートソンを掴まえる訳ではなく、ボールが出てからプレスに出た。
これを踏まえてロバートソンがボールを受ける位置を深くしていく。
下がって深い位置どりをする事で、カンセロのプレスの届く距離を長くし、プレスを緩める効果に。僅かな時間とスペースが出来ると色んな選択が広がるのがこのレベルの選手たち。
左SBのロバートソンから少しづつプレスをずらして、左でシティのプレスを集めてCBファンダイクの右への大きなサイドチェンジを織り交ぜ、一気にシティのプレスをひっくり返したゴールへ雪崩込むシーンも作り出した。
③.チアゴのサリーダ
やっぱりこの選手の戦術眼も飛び抜けていた。中盤のチアゴが下がってボールを引き受ける。マークにつくシティの選手のプレスを把握しながら、駆け引きしながらポジションを下げる。
マークが付いてこなければボールを引き受けて、マークに付いてくると次に説明するフィルミーノへのパスコースを作り出した。
ボールを引き受けると迷わず長いボールでサイドチェンジ。ボールへ集まるシティのプレスを逆手にとっていった。
④.フィルミーノの中盤落ち
最後はこの選手。中盤に落ちてボールをピックアップするのが世界一巧いフィルミーノの登場。
右サイドとのポジションチェンジを加えながら、フィルミーノが中盤に落ちてボールを引き受けて前進していった。
IHのエリオットは右サイドへ流れる→右WGサラーが前線中央へ→トップのフィルミーノが中盤に降りてボールを受ける。
フィルミーノはシティのCBがマークに付いて来れないギリギリのラインまで下がってボールを引き受けて、後方と前線の繋ぎ目となった。
この4つの対応を用いながら、リヴァプールがシティのハイプレスをかいくぐり押し込み返して行った。
▪️ハマらない3-2-2-3ビルドアップ
シティはハイプレスから序盤ペースを掴んでいったが、そのハイプレスはリヴァプールの4つの対応によって状況は五分五分に。しかし忘れちゃいけないのはペップシティの1番の強みはボールを保持した時の振る舞いだ。
ハイプレス同様に、この試合の為に準備されたビルドアップはリヴァプールのプレスを何度も空転させていった。
シティはボールを保持すると配置を3-2-2-3へと可変させていった。
右SBのカンセロが非常に高い位置へ上がり右WGへ変貌。中央ハーランド、左WGフォーデンと3トップを形成した。後方は右からアカンジ、ルベン・ディアス、アケの3バックを形成。中盤の底にはロドリ1人ではなくベルナルドも加わり2CHを形成。そしてデ・ブライネとギュンドアンが両サイドのハーフスペースに立ち、3-2-2-3の配置でリヴァプールのプレッシングを交わしていった。
リヴァプールは4-3-3.4-2-3-1.4-4-2の陣形でのプレス。シティは3-2-2-3の配置。両チームの配置を噛み合わせてみると、噛み合ってしまうエリアが。それがシティの3バックに対して、リヴァプールの3トップが噛み合う。
これでは後方からボールを繋ぐシティの最終ラインに時間とスペースがなくなってしまう事に。しかしそこはもちろん想定済みだったペップ。
なぜ3-2-2-3配置なのかの理由がひとつずつ分かってくる。
シティの中盤にはロドリ、ベルナルド、ギュンドアン、デ・ブライネの4人が並ぶ。対するリヴァプールは3人と中盤のエリアはシティが数的優位に。
最終ラインと中盤のエリアで人数配置を考えるとシティは7人の選手が配置され、リヴァプールは6人と数的優位に。ここにGKエデルソンも当たり前のようにビルドアップに関わるので実質8vs6の状況でシティがビルドアップを実行する形が出来上がった。
2CHのロドリとベルナルドは最終ラインに落ちてボールを受けるシーンも。このアクションにリヴァプールの中盤がついて来なければフリーとなり、中盤がついて来れば、ハーフスペースで待つギュンドアンとデ・ブライネがフリーになる。
特にデ・ブライネはビルドアップに関わることはほぼなく、右ハーフスペースで待つシーンが目立った。
なぜならリヴァプールの中盤3人が前に出ると、数的優位を活かしてデ・ブライネがフリーになるからだ。何度も左から右のハーフスペースで待つデ・ブライネにパスが入ってゴールへのギアを上げまくった。
またハーランドもトップから中盤へ列を降りてCBからの縦パスをポストプレー。自分が潰れて中盤を前向きにさせるアクションも見せた。
これによりリヴァプールのプレスはなかなかかからない。前線3トップが前に出ると中盤2CHがフリーに。連動して中盤が前に出るとIHに待つギュンドアンとデ・ブライネが中盤の1つ奥でフリーに。
それでは前からのプレスをやめてラインを下げてミドルブロックを作れば?そうなるとシティのCBたちはいつものように、当たり前のようにゆっくり「運ぶドリブル」で前進されてしまう。
そしてシティは畳み掛けるかのようにリヴァプールに他の問題を突きつける。
▪️デ・ブライネの斜め落ちとベルナルドとギュンドアンの入れ替え
常にこの試合、右サイドを主戦場としたデ・ブライネが動き出す。彼は右のサイドの斜めに落ちるアクションを繰り出す。
3バックの右へ落ちてフリーでボールを引き受ける。中盤数的優位のシティ。リヴァプールのプレスが彼どうしてもに届かない。デ・ブライネがフリーで前向きになれば、その後どうなるのかは皆さんもう知っているはず。
長短鋭いキックからチャンスを作り出し、何度もリヴァプールの最終ラインを後ろ向きにさせるパスを供給していった。
そして前半30分を過ぎたあたりから、ギュンドアンとベルナルドの中盤縦関係を入れ替えたペップ。
ロドリの脇にギュンドアンが下がり、フォデンの近くにベルナルドが立つ事に。ギュンドアンよりもよりダイナミックに動けるベルナルドが、さらにリヴァプールの中盤をかき回していった。ベルナルドは頻繁に中央からサイドに流れる。このアクションにアンカーファビーニョが釣り出され、シティの前線にスペースを与えにいく。
実にペップシティらしく、交代カードを使わずに、ピッチに立つ選手のポジションを入れ替えるだけで攻撃の色合いを変える。リヴァプールは次々と色とりどりに変わるシティの攻撃に手を焼いたはずだ。
対リヴァプールの3-2-2-3ビルドアップを採用したチームは他にもあった。それはデゼルビ監督のブライトンだ。ご参考にコチラもよかったら覗いてみてください!
結末は一瞬
試合は後半に入るとよりスピードアップ.オープンな展開となり両チーム決定機を作り出していった。そして76分試合が一瞬で動いた。
75分リヴァプール陣内でフリーキックをゲットしたシティ。これをデ・ブライネがリヴァプールの守るペナルティエリアへ蹴り込むとそれをGKアリソンがダイレクトキャッチ。するとすかさず前線へパントキック。このボールに反応したのはリヴァプールのエース。浮き玉に反応したサラーが対応したカンセロと身体を入れ替えて一気にGKエデルソンと1vs1を演出。これを冷静にゴールへの流し込みホームチームが待望の1点をもぎ取った。
このシーン確かにカンセロの対応には問題はあった。身体を入れ替えられるのは絶対にしてはいけないプレーだったはず。ボールを奪えずに前をむかせない事。最悪ファールをしてでも止めるべきだった。
しかしカンセロ以外にもチームとしても問題はあったと思う。デ・ブライネのGKアリソンにダイレクトでキャッチされたキック。GKアリソンにキャッチされた後の対応。前に立ってパントキック遅らせる。サラーをカンセロとの1vs1に持ち込んでしまったのも問題だったかもしれない。
このレベルになれば本当に細部の駆け引き.準備.ミスが試合の結果を左右する。それを肌で感じる結果となったシティ。試合はその後動かずにリヴァプールがもぎとった1点が試合を決めた。
やはりリヴァプールは強かった。ここまで中々調子が上がらなかったチームとは思えないほど強く分厚かった。
シティもそれと同じくらい強かった。赤い要塞で見せた勇敢なハイプレス。何度もプレスを空転させた3-2-2-3ビルドアップ。
しかし結果はリヴァプールの勝利。しっかりこの結果は踏まえて、今回の一戦で得た教訓を学びにさらに強く強く美しいチームになってもらいましょう!
そして今回も最高のゲームを繰り広げてくれたペップシティとクロップリヴァプール👏大きな拍手を両チームに送りましょう!