ジョナサン・ハイト『社会はなぜ左と右にわかれるのか』
【本書概要】
1. 社会道徳の基盤は直観であって理性ではない。直観は理性で制御できないがゆえに拘束力を発揮する。
2. 人間の脳は、社会維持のための自己抑制をこの拘束性の高い直観道徳で身につけるように進化した。
3. 直観の源泉はその社会が慣習的に育んできた社会的事実である。リベラルはそれを変更しようとする。
4. 直観道徳を失った社会は社会道徳を理性道徳により多く依存せざるを得なくなるため不安定化する。
5. 社会の基底的秩序を理性によって組み立てられると考えるのは合理主義者の妄想である。
一般に「道徳」というと理性の領分というイメージがあるが、本書ではそうではない。本書では道徳を、理性によってコントロールできるものとそうでないものの2つに分類するところからはじめる。
たとえば<交通ルールを守る>という道徳は、「誰も見ていない」「少しくらい大丈夫」などと適当な理屈を作ることによって、それを破る心理的ハードルを簡単に下げることができる。
一方たとえば<食べ物を粗末にしてはならない>という道徳は、たとえ賞味期限が切れていても(理屈)、おにぎりを踏むのはなんとなく抵抗を感じる。(ハードルが下がらない)
著者は前者のような道徳を理性道徳(思考道徳)、後者を直観道徳(感情道徳)と呼んで区別する。
そして著者は「直観道徳」の方に注目する。なぜなら直観道徳は理性(理屈)でコントロールできないがゆえに「守られやすい」(破られにくい)という特徴があるからである。そして著者は世界各地の社会における美徳に注目して、それが次の5種類の直観道徳の成分でできていることを発見する。