【映画感想】「#スージー・サーチ」承認要求の暴走とその成れの果て(ネタバレ無し)
こんちには、電影雑記@横浜森林です。
今回紹介したい映画は、自己承認欲求を暴走させる主人公の狂気を描いた、ダークスリラー映画『#スージー・サーチ』です。
作品情報
あらすじ
ポッドキャストで未解決事件にまつわる考察などを配信する大学生・スージーは、自身のポッドキャストがバズって人気となり、一攫千金することを夢見ているものの、フォロワーは一向に増えない日々を送っている。そんなある日、同じ大学に通い、動画配信でインフルエンサーとして人気を集める同級生・ジェシーの失踪事件が発生する。
未解決事件のポッドキャストを配信するスージーは、「ジェシーを発見すれば、私のポッドキャストがバズり、脚光を浴びることができる!」と、ジェシーの失踪事件の真相を探るために動き出すのだが、事態は予想もしていない方向へと転がっていく。
自己承認欲求の暴走がもたらす狂気
まずこの映画のスゴイところは、承認欲求の暴走とそれによって狂気的な行動に走る主人公・スージーが最初から最後まで「ポップで何だか可愛らしい」ところにある。
SNSに亡くなった恋人や子供の亡骸の写真をアップして、「俺達の絆は永遠」とか「私達のところに生まれてきてありがとう」とかツイートしちゃう人がいますよね。
あぁいう承認欲求の肥大化とその成れの果てみたいなものを、狂気的でなかなかエグいのに、一貫してポップでちょっと可愛らしさすら漂わせて描いている、そんなギャップを感じさせるのがこの映画の魅力。
たとえば、映画の中盤くらいに、登場人物の一人が不慮の事故で亡くなってしまう場面があるのですが、そういった場面でもBGMが妙にポップで、主人公のスージーの狂気的な立ち振舞も、全然エグい感じに見えない演出になっている。
全然ジャンルも内容も違いますけど、『キック・アス』のヒット・ガールが超可愛らしい見た目には反して、襲いかかってくる敵たちを、ひとり残らず残虐にぶっ殺していく、誰しもが痺れたであろう、あのシーンをちょっと思い出した。描かれていることは残虐だけど、BGMがすごいポップで楽しげで、そのギャップが『キック・アス』のヒット・ガール、そして『#スージー・サーチ』の主人公のスージーの、混じりっけのない「狂気性」を引き立たせていると思った。
『#スージー・サーチ』を見ている時に、「なんか、こういう承認欲求の暴走とその成れの果て、みたいなタイプの映画をちょっと前に見たな」と感じて思い出したのが、2023年10月に公開された『シック・オブ・マイセルフ』。
『シック・オブ・マイセルフ』も、自己承認欲求の暴走が巻き起こす狂気を描いた映画であり、主人公の女性・シグネは、最初から最後まで不快感と嫌悪感を感じさせるキャラクターでしたが、『#スージー・サーチ』の主人公スージーは、それとは正反対で、最後まで何だか憎めないのが彼女の不思議なところ。
『#スージー・サーチ』の前身作品が気になる
監督のソフィー・カーグマンが主人公スージーを演じた、『#スージー・サーチ』の前身となる『Susie Searches』という短編作品があるらしく、そちらのバージョンもぜひ見てみたい。
ただ、主人公のスージーはカーシー・クレモンズが演じたからこそ、あの妙なポップさと可愛らしさ、そしてその裏にある狂気性とのギャップみたいなものが出たのかもしれない。