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Big4税理士法人で相続税法の試験は役に立つのか考えてみる

Big4税理士法人は法人が主なクライアントのため、一般的なイメージとして相続の知識はあまり役に立たないと思われているかもしれません。
もちろん事業承継部署などに配属される場合は別ですが、コーポレートタックス部門の場合はどうなのか?
自身の経験を踏まえて整理したいと思います。


税理士試験で相続税法を選んだ経緯

私が税理士試験の最終科目に「相続税法」を選択したのは2014年です。
相続税法に大きな改正が行われた2015年の前年でした。この大きな改正というのが基礎控除額の引き下げです。
改正前は「5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)」でしたが、この改正により「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」になりました。
この改正により、相続税の課税対象となる人の割合は4.4%から8.0%に2倍近く上昇しました。

私は当時TKC全国会に加盟する会計事務所に勤務しており、主なクライアントは中小企業や個人事業主が多く景気もあまりよろしくなかったため、顧問料の値下げ交渉などもあるような状況でした。
そんな中、相続税の基礎控除が改正され、世間が「相続はお金持ちしか関係ない」という風潮から、「もしかしたら我が家にも?」という風潮に変わり、会計事務所も「今後は相続税申告が大きなビジネスになる」という空気感でした。

そんな状況から、「相続税は当然受けるよね?」という無言のプレッシャーもあり、選択の余地なく相続税法を選択したような気がします。
(結果的に合格まで3年かかりすごく苦労しましたw)

相続の知識を活かせたケース

Big4税理士法人に入所したての頃はスタッフとして主に申告作業ばかりアサインされていたので、まったく相続税の知識を使う場面がなく、せっかく合格したのにほぼ忘れてしまいました(^-^)

ただ、アドバイザリー業務もアサインされるようになってくると、相続税の知識も絡めた相談などがぽつぽつと入るようになりました。

例えば、法人クライアントから「所有する非上場株の売却を検討してるんだけど、税務上いくらなら問題ないの?」という相談がありました。

「時価で売却してください、以上」で終われれば簡単ですが、そもそも時価がないから相談しているわけで、そんな時に相続税の知識が役に立ちました。備忘も兼ねて当時の対応を下記にまとめてみます。

税務上は時価取引が原則ですが、法人税法上は「時価」について具体的な定めがないので通達の取扱いを参照することになると思います。

通達を参照する場合、非上場株式については法基通9-1-13に以下の評価方法が定められています(簡略化/平易な表現にして掲載します)。

  1. 売買実例のある株式…直近の売買価格

  2. 公開途上にある株式…公募価格等を基にした価格

  3. 類似企業の株価がわかる株式…類似企業の株価を基にした価格

  4. 上記に該当しない株式…純資産価格を基にした価格

ただし、上記3.および4.は少し抽象的なため、一定の条件を付した上で、課税上弊害がなければ財産評価基本通達に基づく評価方法を認めています(法基通9-1-14)

これで法人税において準用が可能になり、財産評価基本通達に基づいて非上場株の評価額を算定しました。

なお、上記の通達は非上場株式の評価損を計上する場合の期末時価について定められたものですが、財産評価基本通達に基づく評価方法は実務上定着し、認知もされていることから、課税上の弊害がない場合には、これを時価と捉えても不合理ではないと考えられます。

また、財産評価基本通達に基づく評価方法はあくまでも評価方法の内の1つに過ぎず、これ以外にも種々の方法が考えられるということも頭の片隅に置いておかなければならないと思います。
極論を言ってしまえば、第三者間においてお互いが種々の経済性を考慮して交渉した結果として決められた取引価格であれば、これを時価ではないと否定されるリスクはあまり高くないのではないでしょうか?

最後に

相続税の知識が役に立った場面について簡単にまとめてみました。
あまり深く考えずに、相続税の規定をそのまま他の税目に準用するのではなく、異なる税目に準用しても問題ないか?という意識を持つことが重要なポイントなのかなと思います。
余談ですが、公認会計士の同僚と話したときに、「相続税は仕訳で考えられないから理解できない」と言っているのを聞き、やっぱり相続税は税理士にとって武器になるのかも?と思ったのでチャンスがあればまたチャレンジしてみたいです(^-^)

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