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アボカドトーストはダサい?という話から

「アボカドトーストというのはミレニアル世代が好んで食べたもので、Z世代から見るとcheugy(時代遅れでダサい)なのだそうです」

週末になると地元のカフェで朝食をとり、街の定点観測をしているEさんが先日、アボカドトーストを前にして、感心したふうに投稿していた。

わたしも「へぇ〜」となった。
「じゃ、彼らにとってcoolな(イケてる)食べものって何だろう?」

Eさんはわたしの疑問に答えるのは難しい、とした上で、Z世代はミレニアル世代と健康やセルフケアに対する意識は同じでも、みんなが一斉に同じことをするのに抵抗があるのかも、と言って情報源を教えてくれた。

それが『世界と私のAtoZ』(竹田ダニエル著 )だった。

その本によればZ世代とは、ざっくりいうと1990年代中頃〜2000年代に生まれた世代。1981〜1996がミレニアル世代、1965〜1980がX世代、1964以前がブーマー世代と呼ばれるそうだ。

わたしは一般論に抗うあまのじゃくなので、自分が「世代」という言葉で括られるのはたまらないな、といつも思う。みんなが一斉に同じことををするというのも……。だから読みたくなった。

そして、カリフォルニア在住のZ世代、日系アメリカ人のダニエルさんの目を通して、今のアメリカの若者が見ている世界を見た。

これはアメリカでの話だけれど、なかなか興味深かった。
Z世代は手元のデバイスでいつでもどこでもワールドワイドな情報にアクセスしてきたので、狭義での「普通」や「ルール」や「常識」をそのまま鵜呑みにしないというところなど、とても共感する。

SNSと人種問題、SNSと美学など、並ぶタイトルもおもしろい。デジタルネイティブというだけでなく、パンデミックもあって、ネットというのがツールとしてであれ、舞台としてであれ、彼らの日常にとってとても重要な位置を占める。

勉強になったのは、文化の盗用の話だった。
とくに黒人コミュニティの言語文化「AAVE(African American Vernacular English)」(簡単にいうと、黒人ならではの言葉づかい)を、クールでファッショナブルだからと、白人やアジア人が真似して流行語のように消費してしまい、やがて「ダサくて時代遅れの言葉」にしてしまうことの危険性について書かれていたその視点がよかった。

ブラックカルチャーはネット上でその言葉が、音楽が、ダンスやファッションが、かつてないほど人気な一方で、人種差別もいまだ根深くあるという矛盾。

ダンスの振り付けをした黒人に敬意を払わず、白人が踊ってヒットさせてしまうことや、著名人が自分のルーツではない異文化の上澄みをすくって商売にして叩かれたエピソードなども、なるほど、そうだよねと思う。文化の盗用について、ゆっくり考えてみなくてはと思う。

ところで、Z世代に「買い物は投票」と思っている人が多いということ、これにも共感する。素晴らしい。

この5年ほど、立教大学の観光学部でパンとガストロノミーの話をさせてもらっている中で、まさにその投票、「パンを買うのはその店の考え方やつくり手に一票を投じること」という話をしているのだけれど、うれしいリアクションをしてくれる学生がたくさんいたことを思い出す。彼らもまた、Z世代だ。

話は戻って、アボカドトースト。
わたしは好きで、おいしいアボカドが手に入ったときに、トーストにのせて食べる。日本でアメリカのように流行った記憶はないけれど、わたしにとってこれは流行云々ではなく、個人的な好みだ。

そしてこの本はもちろん、INとOUT(流行り廃り)をテーマにしたものではなく、現実を直視してしっかりと言語化している、頼もしいZ世代の話だった。「絶望の世界に生きながらも、未来が楽しみです」なんて書いていてドキッとするけれど、この本は多種多様なたくさんの人々に読まれ、人々の心を動かしていると思う。それは日々の生活の中で、それでいいのか?と立ち止まって考えるきっかけとなる。その影響力。それは絶望とはちょっと違うと思う。


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清水美穂子
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