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90度のまなざし

February19, 2019

数日前、待ち時間に初めて入った書店でふと、目にとまり、ぱらぱらとめくると、めくるめく世界があって、そのときは買えずに帰ってきてしまった本を、いつもの書店で探すも、なかったので、図書館で借りてきた。たまに、図書館のほうが早く読めることもある。

『90度のまなざし』。著者の合田佐和子さんは1940年生まれの画家で、年譜を見ると三年前の今日、他界されている。この本は生前の著作物を編纂したもので、偶然にも命日の今日、読み始める。

私の思い出の中の祭りはいつもゆれて遠ざかってゆく情景でしかない。

冒頭に置かれた「祭」という美しい詩に惹かれた。それは灯籠流しの回想だった。いつもうすぼんやりとして、祭の中に入っていくことができなかったかつての女の子は、大人になって夢想する。

もし自分が死ぬことがあったら、流れていくあの灯籠の中のろうそくの火のまわりを「嬉々とたわむれて水しぶきをあびながらゆれて遠ざかってゆくだろう。祭の中にとうとう入ってしまって」と。あるいは、かつての女の子が夢想したことだったか。

画家がそのまなざしで、遠い日に、さらに遠い日を見つめて書いたことがここにあり、わたしはそれをこれから眺めていく。







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