パンは楽しい
January 26、2019
「パンがなければお菓子をお食べ」とのたまっても、誰もなんとも思わない時代、パンとお菓子との境目があやふやな国。わたしたちは、パンがなければお菓子を食べてもいいし、米の飯や蕎麦を、あるいは糖質は抜きにして、肉や魚や野菜だけを食べてもいいのだ。もはや日々の糧でなくなったパンが多様化し、美食化した話は、昨年書いた。
そしてわたしは、日々の糧としてのパンに想いをよせてきたけれども(愛しているとかそういうことではなく)、パンがレジャーになり、休日のイベントになりうるという話は、それはそれでいいなと思う。きょうがまさに、そんな日だったから。
きょうは北浦和のタロー屋さんを訪れた。取材以来だ。取材でなくて高速を飛ばして一時間以上もかけてパンを買いにいくのだから、これがレジャーでなくて何であろう。そして、一年ぶりにもかかわらず、温かく迎えていただいて、いい匂いのたちこめる店内で、レモングラスのお茶を再びご馳走になった。このほっとするような、柔らかな空気が好きだ。パンの酵母たちも、この空気を吸って幸せに息づいているのだ。冬の日に照らされた店先に、金柑やレモンやイチゴの入った瓶が美しく並んでいた。
自転車で乗り付けた常連さんだろうか、年配の男性が迷わずカンパーニュを買う姿が素敵で、そういえば以前も、同じようなシーンが展開されていたのを思い出した。カフェでなくても、ちょっと腰かけてお茶をのみながら世間話をすることが普通な店の、なんと素敵なことよ!
そのお客さんと、タロー屋の真弓さんと、スタッフの方に、おいしい鰻屋さんなどを教えてもらって、だからきょうのお昼は鰻になった。このあたりはおいしい鰻屋さんがたくさんあるのだ。
タロー屋さんではレモン、イチゴ、リンゴ、柚子の酵母のパンを買った。ほんとうに、その果物の匂いがすることに、あらためて感動する。タロー屋さんのパンには、本物の季節がある。