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シュツットガルトの惨劇、もう一つの楽しみ方「古舘アナの実況」
ローラン・ボックの試合が始めて「ワールドプロレスリング」で流れた日、1978年12月29日(金)。
異様に暗い会場で、観客の男たちがボックを讃える歌を大合唱し、アントニオ猪木が敗北した試合です。
実況はテレビ朝日入社2年目の若手アナウンサー、古舘伊知郎アナ。テレビ朝日がモスクワ五輪独占放送権を獲得したため、スポーツ実況アナを急遽育成しなければならない事情があったとしても、アントニオ猪木のプロレスの実況をするために西ドイツに派遣されるとは大抜擢です。
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実況に後の古舘節の片鱗
■まずは、会場周辺の風景描写
古舘アナ実況)「森と教会の街、シュツットガルト。伝統的な建造物と緑の織りなす美しさ、それはそのままここに住む人々の心を映し出しています」
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➡5年後の大阪大会では、
古舘アナ実況)「浪速の街に少しずつ春の気配がやって参りました。日中は御堂筋から道頓堀の街角に春の予感を告げる淡い日差しが差し込めておりましたが、一転夜の帳がおりました今、この館内にタイガーマスクのそのマスクが光り輝いております」
という名調子に進化しています
■難しい地名を一気に読み上げるのがカッコいい
古舘アナ実況)「西ドイツ、バーデン・ビルデンブルク州シュツットガルト・ギルスベルクホール。5500人の観衆が詰めかけました」
➡5年後のメキシコ大会では、・
古舘アナ実況)「すでに2万5千人の大観衆に埋まりまして、大声援が不思議なハーモニーを奏でております、“メキシコシティ・トレオ・デ・クアトロカミノス”であります」
一気にしゃべってちょっと得意顔なのが、プロレスファンにはたまりませんでした。
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■この他にも古舘節の片鱗が
ローラン・ボックの攻撃に「おーっと、バックドロップ!」と、すでに古舘アナの代名詞「おーっと」が披露されています。また「バックを取る、バックを取る」「カウントが入ります、カウントが入ります」と印象づけたいシーンを繰り返して緊張感を出す言い回しも。
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実況の中に、後年の話題になる疑問の答えが
■古舘アナ実況)この欧州世界選手権シリーズ、猪木は西ドイツ、ベルギー、オランダ、オーストリアと、各国を休む間もなくサーキット。昨日のドルトムントまで、猪木はヨーロッパ第一線級のレスラーと16戦を闘い抜いて参りました。これまで、10勝6引き分け、無敗であります。
➡2012年に那嵯涼介氏の取材で、これまで日本で報道されていない1978年11月18日の西ドイツ・バーデンでの試合記録が発掘されるまでは、ここまで15戦とされていました。しかし、古舘アナの実況は「ここまで16戦を闘い・・・・」と、正しい試合数を伝えていたのです。プロレス者なら、日本に伝わっているデータは“1試合忘れられている”と気が付かなければなりませんでした。ちょっと悔しいですね。
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■古舘アナ実況)そして10ラウンドフルに闘った場合は、3人のジャッジが判定をいたします。判定で勝敗が決まるわけです。
➡後に藤原喜明氏や新間寿氏が「あれは騙し討ちだった。判定があるなんて聞いていなかった」と証言しています。しかし、古舘アナの現場取材にもとづく実況から、“騙し討ち”というのは記憶違いだったことがわかります。
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■古舘アナ実況)3人のジャッジの裁定は、3-0、ストレート勝ち、文句なし、ローラン・ボックが勝ちました。猪木敗れました!
➡これも後に、「ジャッジには通訳のケン田島氏が入っていて、判定は2-1だった」という証言もありますが、それも記憶違いの証言。古舘アナの現場の実況が正解だと考えるのが理にかなっています。
このように古舘アナの実況に注目してこの試合を見ると、もう一つの楽しみ方ができます。
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「クラウドファンディングに協力をお願いします」だけじゃなくて、本当はこんな記事で楽しみたいんですよね。しかし、これもボック自伝の翻訳出版ありき、なので、今は全力で目標達成を目指します。
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