第7章 彼女と彼
ミリヤ視点
演説が終わった後を確認し、会見場を後にする。
タバコを取り出し、ライターで火を付ける。
廊下の向こうからムーアが駆け寄ってくる。
”ジャイデル.ムーア”
諜報活動のエキスパート。
情報活動やハッキング、情報戦については天賦の才能を発揮する。
もっぱら、彼の最近の立ち振舞はおどおどして周りを不安にさせるような、はっきり言って挙動不審だが、それは彼の自信の無さや、果たして自分がこの役職に適しているかなどの葛藤から来ているのだろう。
彼を最初に見た時、ピンと来た。
(彼は優秀だ。)
多くの死線を通り抜け、その経験を若手に伝える優れた人材育成能力。”元”書記長が国をまとめるに至って多くの有益な情報を提供したのもまた彼だ。
(彼は使える。)
そして彼は、自身を導いてくれる強いリーダーを本能的に渇望していることも理解していた。
だから彼に対し取引を提案した。
そして今に至る。
彼は今後とも私についてくるだろう。
(後は邪魔な蛮族共をどう叩き潰すか?)
そんな事を考えながら司令室に向かう。
その後ろを乱雑に突っ込んだせいで折れ曲がったタバコをポケットから取り出し、丁寧に伸ばしながら火をつけようとするムーアが付いてくる。