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お正月は、初詣ではなく、病院へ駆け込みました

それは1/1(水)夕方に起こった。

本来であればおせち料理をつまみながら
ゆっくり過ごすその日に
夫が急に寒いと震え出した。
こたつや湯たんぽでは解消できない寒さらしい。え、怖い。

そういえば前日から咳をしていた。
あわてて熱を測ってみたら39度もあった。
さっきまで箱根駅伝の話を楽しそうにしていたのに。いつのまに。

「病院へ行きたい」

風邪は寝て治す派の夫が、そんなことを言うのはよっぽどのことである。

しかし、その日は1/1(水)。
初詣でいける神社は思いつくが
診察している病院は思いつかない。

ひとまず、近所の会報誌にのっていた
休日診療の病院へ電話をするが
通話中か、長いコール音のあとに
一方的に切られるかで
スタートラインに立つことさえ
叶わなかった。
1/1はスタートをきるのにふさわしい日だというのに。なんてことだ。

そうこうするうちに
夫の顔がみるみる赤くなってきた。

これはまずい。
ヤブでも、遠方でもいいからと
ネットで病院を探した。
休診、休診、休診が並ぶ中、1件だけ診察中の文字が。神々しく光り輝いて見えた。

すがるような、祈るような気もちで、その病院へ電話をかけた。
今日の予約は終わりましたパターンもあるので油断できない。
受付のお姉さんに、恐る恐る今から診察してもらえないか聞いてみたところ、予約はいらないので、直接来てくださいと言われた。

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
夫に親指を立てる。
弱っているので全然こちらを見ていない。

ニットやコートで彼をぐるぐる巻きにし、タクシーで病院へ向かった。
私も部屋着にコートを羽織っただけだ。

病院についたらすぐに、夫は検査室へ連れていかれた。
その結果、巷で大流行のインフルエンザでもコロナでもなかった。なかったんかい。

多くの人は、ここで一旦安心するのかもしれないが、私の性格上、じゃあ何でこんなに熱が出るのだろうと、別の不安が襲ってくるので厄介極まりない。

不安と薬を手に、再びタクシーで家へ向かった。
行きは気が動転していて気が付かなかったが、メーターがすごい金額をたたき出している。
良い先生だったよと、夫が小さい声で呟いたのが、唯一の救いだった。

タクシーの中で義母へ連絡をした。
お正月に義家族総勢12名で集まることになっていたのだが、この状態では無理なので、欠席の連絡を入れた。
義母がひどく残念がっていた。
こちらも残念である。

数日たっても、夫の熱は下がらなかった。
咳もひどい。

念のため夫と私は別の部屋で過ごしていたので、箱根駅伝もお雑煮も別々に味わった。

神奈川県にある箱根駅伝ミュージアムに行った際、観光そっちのけで、ミュージアムで半日過ごし、「え?あんな小さいところに、そんな長時間いたの?」と、友人を驚かせたことがある。復路のゴール地点で選手に握手をしてもらったこともある。嬉しすぎてもう絶対手を洗わないと言っておきながら、家に帰ったら速攻手を洗っていた私を見て、夫が笑っていた。
それくらい夫婦で箱根駅伝が大好きなのだが、今年は一緒に見ることができなかった。
こんなに静かで心細いお正月は初めてだ。

途方に暮れていたら、義家族のグループLINEが鳴った。

その日は義家族が集まった日で、LINE上では、久しぶりに会えた喜びや、おせちを楽しむ姿が飛び交っていた。

もちろん、夫を気遣う言葉もあったが、暗い部屋でおせちだかなんだかわからぬものを
ひとり寂しく食べている私には、その光景は眩しくて目を開けてられなかった。

義家族のことは好きだが、こういう心がしぼんだ状態で返事をしたら、絶対にやらかしてしまうので、通知をオフし、LINEは無視することにした。

そして翌日。
太陽の光をあびて邪悪な心を浄化したあと、義家族のグループLINEへ返信した。

ただ、返事を書くだけじゃつまらないので
家族の集合写真に夫と私を手描きで加え、それも送った。

嫁、ピースしています


すぐに義母からハートマークのスタンプが、義姉からは来年は一緒に撮りましょうとメッセージが届いた。

良い家族なのだ。優しいのだ。
だから嫌いにならないように、何かあった時は好きでいられるラインで立ち止まるようにしている。

夫の熱は相変わらず高いままで、このまま熱が下がらなかったら、もう一度病院へ行こうと決めた日の夕方に、やっと微熱になった。

普段は喜怒哀楽が乏しく、AIみたいな夫が、テレビ電話で、体温計の写真を掲げてきたときは笑った。やっと笑うことができた。
これが我が家の初笑いである。

微熱の体温計


1月になると、その年の目標を掲げる。
商売繁盛。夫婦円満。早寝早起。
文章上達。性格改善。腹黒鎮圧。

よくばりなので広範囲にわたって目標を立てるが、「健康」はいつもぶれずにそこにある。

しかし、あまりに一般的な願望なので、それを掲げるときは、どこかからコピペしてくるような気持ちだったが、今年は心の底から、のどの奥から、健康でいたいと思った。

ということで、今年は身体に気を付けながら、みなさんと楽しいことをたくさん共有できたら嬉しいです。

今年もよろしくお願いいたします。

夫と私は、これから録画していた箱根駅伝を見ます。





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