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夢の中で、レタスを植える
今は穀雨。
種を蒔いた後、恵みの雨が降り注ぐ時期🌱
畑の土づくりをする前の雨は、「しばらく畑に入れないじゃん…」とヤキモキしたけれど
種まき・定植後の雨は「いいお湿りだ」とありがたく思う。
恵みの雨は信州に美しい新緑をもたらします。
どこへ行ってもため息をつくくらい美しい景色が楽しめる、
私の大好きな季節がやってきました。
野菜の成長も早く(雑草も)これからは畑から目が離せません。
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農家は景色をつくる
いい出会いがあった。
上田市にある畑は元田んぼ。周りも田んぼに囲まれている場所です。
GWが始まってから、多くの人が田んぼの作業に出ています。
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昨年は、近くの田んぼで数人集まって話しているおじさん農家がいても
「なんだか話しかけづらい…」
と思い、会釈程度で過ごしてきました。
私は畑の前を通る人にはなるべく挨拶をするようにしているし、近隣の人とすぐ仲良くできる。
なので珍しいことなのですが。
たぶん、去年は別で研修をしながらの畑作業だったので、
草刈りがちゃんとできていない、とか畑の管理が行き届いていないことが
先輩農家に対して後ろめたかったせいもあるかもしれません。
昨日ネギを植えに夫と畑へ。
するとお向かいの田んぼの方も作業に来ていて、がっつり目が合った。
こんにちは!と思い切って挨拶したらぐんぐんこちらへ近づいてくる…
な、なんだ…?
と思っていると
「なあ、今年もここに豆作るの?田んぼやる気はねえだかい?」
と超フレンドリーに話しかけてくれた…!
田んぼはやりたい、自分で食べる分のお米が作れたら最高だな、とずっと思っていました。
だけど、
農薬や化成肥料を使わないやり方がわからないし、
そもそも田んぼのやり方も知らない。
今年から始めてしまったら、わからないことだらけで
水の管理に手がまわらないだろうな、と思い
来年くらいかなと思っていました。
ですが、向かいの田んぼのおじさんが私の話をしてくれて
この地域の田んぼ一体のまとめ役的な人と繋がることに。
この人は、なんと無農薬で米を作っていて辺り一体の空いた田んぼをどんどん引き受けているらしい。しかも、若手農家(50代)や有機のイネ作りを始めたい人の指導もしている。
70代くらいの、昔から地域にいる人が無農薬で米を作っているなら、大手を振って有機のイネ作りができるじゃないか…!
薬を使わないと、周りに迷惑がかかる、とか有機でやりたい人は煙たがられがちな農村で、こんないい条件のところある…?とちょっと感動。
しかも、お向かいの田んぼの人はまとめ役の人を「ちょっと変わったことしてるやつ」と言いながらも、ともに田んぼを管理してる友として扱っていていいかんじ。まとめ役の人も、「こいつはすぐ薬に頼って〜!」と、冗談混じりに話していて、
こういう雰囲気なんかいいなあと。
「苗は誰か作った残りを買い取ればいい。」
「機械はみんなが貸してくれる。」
「やり方も、困ったら教えてやるからいつでも声かけて。」
そんなありがたい言葉の数々。
「とりあえずやったらいい、先のことは心配せんでもなんとかなる!な、田んぼやるかい?」
と言われて
「はい…!」
と答えてしまった。笑
私、手が回るのか…?と不安が一瞬過ぎったけど、今後のことは、今後の自分がなんとかする。きっとなんとかなる。
なにより今年から田んぼを辞めてしまった地主さんの空いた田んぼがある。
これはやれってことでしょう。
まとめ役の人が農薬を使わずにやっている田んぼでは、トウキョウダルマガエル(近年数が減っているらしい。貴重な種)がいたり、夏場は蛍が観れると言う。
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「俺はな、この5年10年のうちに、ここの田んぼ一帯を、夜に散歩して蛍観察できる場所にできたらいいなぁと、そう考えているんだ。」
なにそれ、素敵。
幾つになっても、「みたい未来」があり続けて、キラキラ活躍しているの、素敵すぎる。
そして、やっぱり、里山の景色を生み出し、維持しているのは、農家なんだよな、と思う。
そもそも、美しい田園風景を楽しめるのは、有機栽培か否かに関わらず、お米を作りつづける人がいるから。
田植え前の水のはった風景はとっても美しい。
稲刈り前のこうべをたれた黄金色の稲穂も美しい。
2-3週間に1回は丁寧に草刈りをして、畦が青々と美しい。
農薬を使わなければ生息できる生き物も増える。
私もその風景をつくる、一端を担えるんだ。嬉しいなあ。
夢の中で、レタスを植える
気づいたら、15日間休んでなかった。
4月から研修先を卒業して独立。「畑作業のリズムは、やりながら掴めばいっか」そんなふうに考えていた。
でも、リズムを掴める日は延々とやってこない。
だって昨日は晴れ予報だと思ったら朝雨降ってるから段取りが変わるし
この日終わらせる予定だったことは一日で終わらないし、…
そして、何よりも
畑に植え付けたレタスがちゃんと育つか、
苗床にある苗が枯れずに健康的に育ってくれるか、
そんなことばかり心配で
夜は夢でレタスを植える始末…笑
最後の5日間くらいは、どうやって生活してたかあまり記憶にない。
夕飯ちゃんと作ってたっけ?なに食べてたっけ。
正常な判断も、多分できてなかった。
とある日、ついにやってしまった。
その日は曇り。最高気温18℃。午後から夜まで予定があった。
曇りなら、強い日差しでハウス内の温度も上がることはないだろう、と
昼前に踏み込み温床の上で育苗している苗床にもシートもかけ、ハウスも閉め出かけた。
温床のシートをかけたのが大失敗だった。
今朝見たら温床の上にあった苗は9割が萎れて葉が茶色に…
まだ小さかった食用ほおずきやセロリアックはもう枯れていた。
「大丈夫だろう」という気持ちと
休めてなくてかなり疲れていたこともあって
夜わざわざ行って苗床を閉める気力がなくサボってしまった。
しばらくショックで立ち直れず文字通り膝をついた。
温床の横で体育座りして泣いた。
とりあえずまだ生きていそうな苗は底面給水させる。
枯れたものは諦めて蒔き直すことにする。
気温上がってきているので生育も早いだろう。と願う。
ちなみに写真は大きくなっていたので
温床から外に出しておいたから生き残っていた苗。
他もうまく発芽して綺麗だったのにな
可哀想なことをしたな。
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苗が枯れてしまったら、
「やばい!植え付けが遅れて、収穫期にも遅れが出る…!」
と農業経営の方に頭がいくと思っていた。
でも実際は
「さっきまで確実にそこにあった命」
が私のせいで消え去ってしまった事実が頭から離れなかった。
命を、枯らした。
戒めのために枯れた苗の写真を取ったけれど、辛すぎで見返せない。
起きたことは受け入れるしかないので、
痛い、痛い勉強だったと思って切り替える。
苗が枯れた次の日はお休みをとって一日のんびりした。
しっかり休んで、しっかり働く。
当たり前のことをやらないと判断ミスが起きる。
ちなみに、15日間休んでいなかったと気づいたのは、
お休みをとって作業記録をなんとなしに見返していたからだった。
そんなことに気づけないくらい突っ走っていたんだなぁ。
まだまだ不慣れで一年生な私は、これからも夢の中でレタスを植えるかもしれない。
そして、あれも「しなければ」こうでなければ「いけない」という厳しさに目を向けがち。
でも、現実で苗を枯らすことはもうしたくない。だから、日々の植物の美しさにハッとたり、ホッとしたり。適度に息を抜きながら、忙しさと上手に付き合って農家として成長していきたいです。