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「壁を築くつもりはない」ドイツ民主共和国による対案書

ドイツ統一委員会編 『何が起こっている?』 1961年 ベルリン刊
Ausschuss fuer Deutsche Einheit (Hrsg.), Was ist los? 10 Fragen und Antworten zu einem lebenswichtigen Thema. Berlin, 1961 <R18-384>
20,5x14,5cm, 16pp, original stapled bound

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表紙

本書は1961年6月または7月に、ドイツ民主共和国政府(東ドイツ、以下DDR)によりドイツ統一問題を扱う部局として設立されたドイツ統一委員会により発行されたパンフレット資料です。本書の内容は、直前に行われたアメリカ大統領ケネディー(John F. Kennedy)とソビエト連邦首相フルシチョフ(Nikita Khrushchev)とのヴィーン会談の影響を強く受けており、同会談でフルシチョフが提案を行った米ソ英仏戦勝四か国とドイツとの平和条約締結を支持しています。

ドイツは講和条約を必要としているのか

尤もフルシチョフの狙いは、平和条約の締結により戦勝四か国の軍隊を撤収させ、その後にベルリン全体をDDR管理下に置くことであり、これにより最終的には西ベルリンを通じて続いていたDDRの人口流出を阻止しようという意図があったといわれています。

もしボン政府が拒絶したら何が起こる

「壁を築くつもりはない (Niemand hat die Absicht, eine Mauer zu errichten)」1961年6月15日、DDR国家評議会議長ヴァルター・ウルブリヒト(Walter Ulbricht)は記者会見の席上で記者からの質問に対してこのように答えましたが、この発言はDDRがフルシチョフの路線に最後まで忠実に従っていたためといわれています。

重要な国民的意義

しかし、フルシチョフの提案が西側諸国により完全に否定されたため、その2か月後の8月13日にはベルリンの壁の建設が始まりました。壁がDDRによる人権弾圧と不当な独裁支配の象徴を見られたこともあり、ウルブリヒトのこの発言は現在でもドイツ史の中で最悪の政治的虚偽発言の一つとして記憶されることになりました。

ドイツは講和条約を必要としている!

DDRおよびソ連の政策転換に伴ってか回収されたのか、本書自体もあまり古書市場での流通が見られないものとなっています。そう行く意味で、本パンフレットは1961年という冷戦が頂点を迎える中にあって、めまぐるしく変化する国際政治を象徴する資料であるといえます。

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