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長谷川英文ちりめん本の翻訳に多大な貢献をしたジェイムズ夫人の娘による日本昔噺

グレース・ジェイムズ / ゴブル画『青柳、その他の日本のおとぎ話』 普及版初版 1910年 ロンドン刊
James, Grace / Goble, W. (Illustrated), Green Willow and other Japanese Fairy Tales. London, Macmillan and Co. Limited, 1910. <R18-446>
First trade edition, 4to, (iv), viii, 280pp, dark blue cloth binding, title and front cover lettered in gilt, the gilt illustration on front cover, all edges blue. 40 colored plates with captioned tissues.

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平紙本 ヂェイムス夫人 (小林永濯画) 『松山鏡』 明治19年 東京刊:弘文社 英文日本昔噺10号
James, T. H., Matsuyama Kagami. (Japanese Fairy Tale Series, No. 10). Tokyo, Kobunsha, T. Hasegawa 1886 <R20-144>
18.2x12.5cm, [18pp], original plain paper with silk ties. the other silk tie is loosened. The front cover and the title page are soiled, foxing throughout pages.

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ジェイムズ夫人(Kate Margaret James、旧姓Rankin:1845-1928)は長谷川武次郎が発行していた英文日本昔噺のうち14編を翻訳した人物です。夫で海軍士官であったトーマス・ジェイムズ(Thomas H. James)が転勤のため1876年より東京に移る住むことになりました。夫の勤務する海軍兵学校で英語教育を担っていたチェンバレン(Basil Hall Chamberlain: 1850-1935)との交際を通して長谷川と知り合うことになり、ちりめん本の英訳を引き受けるようになったといわれています。

「青柳」版 松山鏡挿絵
「青柳」版 松山鑑本文

そのジェイムズ夫人の長女として誕生したのがグレース(Grase James)です。オックスフォード大学セント・ヒルダス・カレッジで英文学を学んだ後、1910年に本書を出版し、作家として本格的にデビューしました。日本の昔話三十八編を収めた本書で、『松山鏡』は母親のちりめん本の翻訳文がそのまま掲載されています。彼女はこの他にも児童書のJohn and Maryシリーズや自身の日本での体験を綴った”Japan: Recollection and Impressions”を出版しています。

松山鑑 長谷川武次郎/弘文社版
松山鑑 長谷川武次郎/弘文社版

本書の挿絵を担当したのが日本やアジアの文物の挿絵画家として知られていたウォリック・ゴブル(Warwick Goble:1862-1943)です。雑誌の挿絵を寄稿する水彩画家として頭角を現し、1909年からはマクミラン社の専属画家としてギフトブックの挿絵を手掛ることになりました。ゴブル自身は来日経験がありませんが、本書では彼の想像力を駆使した日本のおとぎ話の水彩画の美しい挿絵40点を寄稿しています。

桃太郎
花咲爺

本書は実際に日本に滞在しその文化を体験した著者と、イメージと想像の力で日本を描き上げた挿絵画家のコレボレーションにより誕生した作品です。

参考文献:大塚奈奈絵「ジェイムズ夫人とちりめん本 The Flowers of Remembarance and Forgetfulness -『今昔物語集』「兄弟二人殖萱草紫苑語」の翻案-」、『人文学研究所報』 No.68 2022年 85-95頁

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