「オランダの囚人にして亡命者」となったグロティウス
グロティウス 『ホーランドおよびウェスト・フリースランドの合法政府弁護論』 オランダ語版初版 1622年 ホールン刊
Groot, Hugo de, Verantwoordingh van de Wettelijcke Regieringh van Hollandt ende West-Vrieslandt. [Hoorn, I. Willemszoon], 1622 <R19-427>
First Dutch edition. Small 4to, 15, 299, [[1]p., contemporary vellum. Meulen, 872.
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オランダの宗教・政治紛争で大逆罪に問われて逮捕、拘禁、亡命を余儀なくされたグロティウス。彼がルーフェステイン城から脱獄し、亡命先のパリで主要著作「戦争と平和の法」に取り組むに先立ち、まず自らの無罪を証明するために発行したのが本書「ホーランドおよびウェスト・フリースランドの合法政府弁護論」です。
本書はグロティウスの弟ウイレムの協力得て、オランダのホールンにてまずオランダ語版が出版され、続いてフランス王ルイ13世の許可の下でラテン語版がパリで出版されました。
グロティウスの見解によれば、オランダはユトレヒト同盟条約に基づけば連邦国家ではなく国家連合であり、ホーランド州の官僚として活動する彼が訴追を受けるなら、ホーランド州政府またはその裁判所でなければならない。従って、オランダ連邦議会による逮捕、訴追の権限は無く、特別裁判所の有罪判決も違法であり無効であると訴えました。
これに対してオランダ連邦議会は本書を中傷文書として、発禁本扱いとして、所持も読書も禁止されるという処分が下されました。この「弁護論」の出版によってグロティウスは「オランダの囚人にして亡命者」として生涯オランダに帰国できない永久追放の身となってしまいました。
ただこの「弁護論」自体は、発禁処分にもかかわらずオランダで翌年には第二版が出版され、パリで出版されたラテン語版も売り切れるというベストセラー作品になりました。
本書はグロティウスが政治家・官僚としての失敗を決定づけるものとなりましたが、皮肉にも彼が著述家としては成功する第一歩となったといえる作品です。
参考文献:
松隈清『国際法史の群像』 1992年 酒井書店 144⁻147頁
柳原正治『グロティウス』 2000年 清水書院 67-70頁
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