一目惚れ病の成仏記
もうすぐ12月ですね!
平成育ちの私にとって、12月と言えば恋人たちの季節。田舎の街でも「クリスマスまでに彼氏・彼女を作れ!」なんて風潮が根強くあり、全員が恋愛市場に強制召集されていましたよ。(たぶん)
2000年代中盤の冬。近所のイオンやディスカウントストアでは、どこからともなくBoAの「メリクリ」やオレンジレンジの「花」が流れてきます。それらをBGMに、「私たちのクリスマス物語」とやらを勝手に作り上げている同級生カップルたち。モテるヤンキーの友人たちは当然のように年上の恋人と過ごし、私はというと「今年の彼氏いない組」でこじんまりと集団戦を繰り広げる日々でした。
そこに母が、気を利かせたつもりで(余計な)バンホーテンのホットココアを差し入れにやってくるのです。これがまた、空気の読めない盛り上げムーブを炸裂させるから、多感なティーン女子の繊細な心を刺激しまくる。「ありがとう、お母さん。でも頼むからそっとしておいてくれ!」と心で叫んでいたのも、今となっては懐かしい思い出です。
最近では「価値観が多様化した」と言われるようになりましたが、現代の若者たちが12月をどう過ごしているのか、正直わかりません。それでも、職場の新卒男子が「クリスマス予定なくて寂しいっす」と呟いていたり、百貨店に手を繋ぎながらウィンドウショッピングを楽しみに来る若いカップルを見たりすると、案外「あの感じ」、まだ息をしているのかもしれません。
そんな私も、かつては重度の「一目惚れ病」を患っていました。
後ろの席の男子、マッチョな部活の先輩、郵便局のガタイの良いおじさん、港区系のお客さん…。挙げ句の果てには、あのエディ・スリマン時代のディオールオム店員のお兄さんにも惚れたんです。惚れたというより、今でいう「推し」のような存在でした。あの兄さんの前髪は、もう芸術でした。目元を完全に隠す長さ、矢沢あい漫画の男性キャラさながらのシルエット、カリカリに細く長い脚に映えるスキニーパンツ。「これが私の運命の人!」と勝手に燃え上がり、ドラマの主人公気取りでした。
とはいえ、田舎からたまに出てくるレベルのド田舎娘にできるのは、せいぜい店の周りをうろつくか、ここってメンズだけですか?とか適当な質問をしてみることくらい。いやー、怖い怖い…。若さの暴走って、罪深いですよね。
結婚を機に恋愛の舞台からは一応退場し、一目惚れも強制引退せざるを得なくなりました。でも最近、ふと「あの頃」を思い出すことがありました。それは、若かりし頃に出会った東京から遊びに来た彼の話です。
⇩2ヶ月前に書いてみた彼の話です🐤
彼は、田舎女子を釘付けにする都会的な空気感をまとい、私は例に漏れず一目惚れしました。
(実際は彼も地方出身の上京組というオチ)。若さと勢いで一晩だけ深い仲になったものの、その後は「なんだこれ?」な関係に突入。年に何度か「元気?」とLINEが来るたびに、「いや、進展ないだろうけど…もしかして?」と勝手に期待する自分。今考えると滑稽なやり取りです。
彼とは友人とも恋人ともセフレとも言えず、「何かよくわからない食事する関係」が長年続きましたが、結婚を機に彼からの定期連絡を何度かスルーしているうちに、あっさり終了。LINEの苗字が変わったから何か察したのか?と思いつつも、「結婚しました!」なんて報告するのもなんかダサい。よって、そのままフェードアウトしました。まぁ、それでよかったのでしょう。
彼の存在は記憶の奥にしまい込まれた…はずでした。ところが最近、なんと職場で彼の話が出たんです!「え、嘘でしょ!?これドラマ?」と心の中で叫ぶ私。先輩と雑談中、話が脱線に脱線を重ねる中、先輩の親友の話になり、発覚しました。
その先輩の親友にとって、彼は長年の戦友のような親しい男友達的な存在だったそうです。
ところが最近、久々の再会を喜んで食事に行ったら、突然ナチュラルに「男女の関係を求めてきてビックリした」という事件があったとのこと。話を聞いているうちに、とあるコミュニティの名前が出てくる。「あれ?この人ってもしかして…」と気づき、恐る恐る名前を聞いてみると、やっぱりその彼でした。普段は喉からポソーっと喋る小声な私がその時ばかりは「げっっ、嘘だろ、おまえか!!!」と、顔をのけ反りながら腹の底から大きな声を出すものだから、先輩もびっくりした表情をしました。
「草食ぶってやっぱり誰にでもそんなことやってる奴だったんか!ぶつぶつ…」と一瞬心の声がそのまま口から出ましたが、先輩に「いやいや、勝手に一目惚れ補正モード入ってただけで元からそういう人だったんだって〜。てか、自分だって楽しませて貰ったんなら相手だけ悪いってないよ。クズ両成敗じゃん!」って言われて、妙に納得しました。うん、確かに一理あるね。そしてこの日、ようやく私の中の「あの頃」が綺麗さっぱり成仏したのです。
確かに耳障りの良いことばかり言っていた彼。でも先輩の言ってくれた話を思い出すと、不思議と「騙された!」とか「クズ!」とか思わなかった。むしろ、あの頃の自分に「あんた、夢見るほどの男じゃないよ。ただその何になる事もない微妙な関係をそのままストレートに楽しみなよ」と言いたい気もします。でも、それを言ってしまうと、青春の醍醐味が台無しになる気もする。だって、無駄に迷走して勝手に意味付けして燃え上がっていたあの時間も、今思えばめちゃくちゃ楽しかったんだから!