団員の勧誘
団員の勧誘は本番以上に重要な行事かもしれない。学年が変わり最初の仕事が募集である。団員が集まらなければ何もできない。新しく上級生になった人にとって緊張の瞬間でもある。全てはそこから始まるので精一杯頑張ってほしい。
新入生を勧誘する前に、受け入れの体制を整えておかなければならない。学校により新入生が部活動を決めるためのシステムは異なる。いつでも部活動の様子を見に行ってもいい学校もあるし、決められた時にだけ見学に行くスタイルもある。いつでも部活動の見学がOKとなっているところでは、誰が待ち受けているのかを決めておかなければならない。また、勧誘時に受ける質問を想定し、想定した質問に対する答えをある程度統一しておくべきである。そういった事前準備なしではとりこぼしの人が増えてしまう。
勧誘するためには、まずは部の存在を知ってもらう必要がある。新入生の教室に出向いて声をかけることもあるし、ポスターを学内に掲示することもあるし、SNSを駆使することもある。また、新入生歓迎コンサートを開くこともある。ヤマハの吹奏楽応援のホームページにも記載されていることであるが、楽器を持って登下校するというのも一つの宣伝となる。楽器の経験がない人にとって、校内で楽器を持ち歩いている上級生を見るということは非常にインパクトの強いことである。入学式で演奏したり、楽器を持ち歩いたり、オーケストラにしかできない宣伝方法はいくつもある。まずは、部活の存在を知ってもらうためにはどうすればいいか、について考えるところから始めるといい。
楽器の未経験者にとって音楽活動というのは非常に敷居の高いものである。やってはみたいけど敷居の高さから一歩を踏み出せない人が世の中にはたくさんいる。そういう人達をどれだけ取り込めるかが新入生勧誘の肝である。どれだけ部活動が初心者に開放されているのか、初心者フレンドリーなのかをアピールすることが重要である。スクールオーケストラは7~9割が初めて楽器に触る人であることを知らない人の方が圧倒的に多い。未経験者は不安なことがとても多い。その不安を丁寧に取り除くことが入部につながる。
経験者は部活にオーケストラがあるということを把握さえすれば、あとは自分に合うかどうかが一番の関心事となることが多い。ミスマッチなのを無理に勧誘してもトラブルの元であるが、部活としてはうまく取り込みたいものである。どんな事を希望しているのか、どんな疑問点があるのか等をよく聞いてどれだけ真摯に対応するかがポイントである。
楽器の経験者の場合、オーケストラ部に入ることを前提にその学校に入学する人も多い。そういう人達は一刻も早くオーケストラの一員として楽器を弾きたい人が多い。運動部みたいに2軍からスタートなどということは全く考えてない。初心者の相手にかかりっきりで悠長なことをしていると逃げられてしまうことがある。そういう人たちを飽きさせない工夫や体験プログラムが必要である。
新入生にとって部活動を決めるのは入学式前から始まることである。希望する部活動があるかで受験する学校が変わることもある。オーケストラの場合は特にその傾向が強い。オーケストラ部への入部を考える場合は、文化祭などの演奏を見て希望することが多い。ようするに、前年度までの演奏会がそのまま宣伝になるのである。そういうつもりで定期演奏会や文化祭を行うことも重要である。例えば、演奏会を聴きに来てくれた人の中にいる入部を希望する人へメッセージや練習の様子が伝わるようにするのも一つの宣伝である。また、合格したら、インターネット検索ですぐに部活動を検索が始まる。入学式が終わってから部活動の探索が始まるわけではない。入学式以前の人に対してはSNS等での発信が強力なツールとなる。学校がSNSを禁止している場合は別として、今の時代、団で運営しているSNSが一つもないというのはかなりのデメリットである。興味があってもSNSがないからという理由だけで入部をあきらめる人も大勢いる。それはもったいない。SNSは演奏会の観客動員にも影響を及ぼすものなのでうまく運営してほしい。
入部を希望する人には2つのタイプがある。大勢で楽しくしたい人と上手になりたい人である。どちらのタイプなのかを見分けるのも一つの勧誘のコツである。楽しみたい人にトレーナーがどのくらい来て、コンクールの成績がどのくらいで、などの説明は心に響かないし、逆に上手になりたい人にとっては、休暇の日数がたくさんあることにはあまり関心がない。タイプによってアピールするポイントが変わってくるのである。
新入生歓迎コンサートを行う学校は多い。その時は是非、入部を全く考えてない人にも来てもらえるようにしてほしい。入部しなかったとしても、そのオーケストラのファンになってくれたら嬉しいことである。もしかしたら定期演奏会に来てくれるかもしれない。そういったことまで考えて広く部活を宣伝することが重要である。
新入生歓迎コンサートと合わせて楽器体験会が行われることも多い。楽器体験会は、各個人と楽器の相性を見るというより、いかに楽器の音を出してもらえるかがポイントである。初めての人にとっては楽器の音を出せるということは感慨深いものである。まずは、パート決めの事を頭の中から除外して楽器を楽しんでもらうのがいい。パート決めはその後でも遅くない。
余談であるが、葉加瀬太郎はライブで楽器未経験者をステージに上げ、バイオリンの弾き方を簡単に説明しながらいきなりその人と合奏をしてしまう。楽器を初めて持って3分で超一流の人と数千人のお客さんを前に合奏をしてしまうのである。バイオリンの弓の持ち方なんか後回しで、とりあえず開放弦で「D-A」の音を順番に2分音符のテンポで音を出せたら、それだけでいつのまにか「エトピリカ」の伴奏になっているのである。こんな体験を部活の体験会でもできたらきっとその人は間違いなく入部してくれると思っている。
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