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初心者と経験者の練習

 経験者も初心者も一緒に練習をするのが望ましい。しかし、それが効率的な場合と非効率な場合がある。初心者はどこの学校に行っても最初の頃は誰もだいたい同じくらいのレベルであるが、経験者はプロ並みにうまい人から初心者よりほんの少し引ける程度の人までいる。そのため一概にどのように練習を進めたらいいのかを端的に述べることはできない。経験者が経験者であることの自覚を持ちながら初心者と一緒に練習し、うまく初心者のサポートをしている場合はオーケストラ全体のレベルがあがる傾向にある。

 上級の経験者、パートリーダー、将来パートリーダーとなることが期待されているような人は、部活時間中に自身の個人練習の時間はないと覚悟するくらいのつもりでいてほしい。初心者と同じように個人練習しているようでは、初心者とみなされてしまう。常に経験の浅い人のフォローに徹するようにしていれば、立派な経験者と周りが認めてくれるだろう。といっても、経験者も練習は必要である。初心者よりも短時間で仕上げるか、人知れず練習すべきである。

 初心者は演奏会本番の日までに弾けるよう練習をすすめていくことが多い。だが、経験者の場合は初見会の時には本番と同レベルに弾けているようにしておくのが理想である。初心者と同様に本番までに弾けるようになればいいと思っているのは間違いである。

 パート練習、全体練習の時の並び順を工夫することによって練習がはかどるようになる。要するに経験者の位置をどうするかである。初心者と並べる場合もあるし、経験者だけ一か所に集める場合もある。例えば、指番号を確認する練習や、弓の奏法を練習する場合、経験者と初心者をペアにして並べた方が経験者によるサポートをひきだしやすい。逆にある程度弾き方は理解しているが音量が出てこない時の練習は、初心者同士を近くにしておいた方が音を出すようになる。ちょっと難しいリズムや休みの数え方など、人に頼らずに弾けるようになってほしい場合も、初心者同士を近くに集めておいた方が経験者に頼らずに弾くことを覚えるようになる。経験者については、経験者同士で固まっている場合に自分と他人の弾き方の差を感じやすくなるはずである。

 経験者は常に初心者のことを考えて練習する姿勢をとってほしい。個人練習の時間に経験者があまりにも大きな音で弾き続けると初心者は練習がしにくくなる。弓の動かし方についても、曲想的にはこう弾きたいとか、プロならこう弾くだろうとかいう考えは少し控えめにし、初心者がどのようにすれば弾きやすい弓となるのかを考えながら練習してほしい。弓の動きというのは、単に弓順のことではなく、弓のどの位置で弾くのか、弓をどのくらい使うのか、なども含めた動きである。左手の指順にしても、あまり奇抜な指順ではなく初心者にも使いやすい指順を普段から使うようにしてほしい。初心者にとって、経験者が自分と違うタイミングで移弦するだけで戸惑うものである。ポジション移動も、ついうっかり目に入ってしまうと、それにつられてポジション移動しようとしてしまうことがある。初心者にはそのような習性があることを経験者は理解しなければならない。練習時の譜面への書き込みについても、経験者は本当に重要な点のみ書き込めば弾けるが、初心者はそうはいかない。初心者は経験者の楽譜を見て写す機会が多いことを考慮するならば、経験者の楽譜にも初心者と同じことを書き込んでおくべきである。特に弓順はたくさん書き込むべきである。一音だけのアーフタクトは上げ弓で始めるのが経験者にとっては当たり前の常識かもしれないが、初心者は弓順が書いてなければ迷うことになる。指番号も、ポイントとなるところは先に自分の楽譜に書き込んでおくのが親切である。またプルトを組んで練習するならば、より経験の浅い人の楽譜を使うようにした方がいい。その方がより経験の浅い人が自分の書き込みをみながら練習できるからである。ただし、最前列のプルトについては、パートリーダーの楽譜を使った方がいい。様々な変更点はパートリーダーから発出されるのと、練習中に発生した新たに書き込むべき事項をパートリーダーの楽譜に間違いなく書き込む必要があるからである。上級生と下級生とでプルトを組む場合、忖度して上級生の楽譜を使いがちである。しかし、経験の浅い人の楽譜を優先させるルールを用いるなら、下級生の楽譜を使うことになる。

 初心者中心で動いていればオーケストラのレベルがあがることを、経験者は理解してもらいたい。経験者だけが弾いているような団体の演奏を見かけることもあるが、観客として見ていて悲しくなる。そういう団体はたいていまとまった響きにならず、経験者が好き勝手に同時に弾いているだけというような音となってしまう。噂で聞く話だが、弾ける人が音を出すようにし、弾けない人は邪魔をしないようにと指導している学校もあるらしい。そのような方針は合奏として最悪な手である。

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