演奏会のチラシの作成
チラシは演奏会の宣伝のために重要な媒体である。以前は、チラシは紙に印刷して作成するものであったが、デジタル化のおかげでチラシをPDFや画像ファイルにしてSNSにアップロードする機会が増えている。これからはそういうことにも対応していかなければならない。
デジタルと紙、どちらのチラシにしても、デザインよりも先にチラシに記載しなければならない事項について確認すべきである。チラシに記載しなければならない事項は下記の通りである。
演奏会のタイトル、主催者(演奏者)、日付、開場時刻、開演時刻、
場所、作曲者名と曲名、問い合わせ先、チケット価格(購入方法)、
指定席か自由席か
以上の事にプラスして、下記の事を記載することもある。
指揮者名、アクセス(交通経路、地図)、注意事項、当日券の有無、
付随するデジタル情報(QRコード、SNSのURL)
スクールオーケストラの場合、主催者は記載しないことがある。主催者の情報は演奏会タイトルに含まれることが多いからである。例えば『〇〇高校フィルハーモニー部 第〇回定期演奏会』となっていれば、主催はその高校の部活であることが推察されるからである。日付を書き忘れることは少ないと思われるが、開場時刻と開演時刻のどちらかしか記載されていないチラシをたまに見かける。両方の時刻を記載しなければならない。そうしないと、朝早くからお客さんが来場してしまう可能性もあり混乱が生じる原因となる。場所はホール名が記載されていれば通常は問題ないが、より丁寧にするためにホールの住所も記載することがある。演奏者の学校と演奏会が開催されるホールが違う県になる場合などは住所も記載した方が親切である。
作曲者名と曲名はセットで記載しなければならない。曲名だけ記載し作曲者名がないのは良くない。たくさんの曲を演奏する場合は、「主な曲」と記載するか最後に「等」をつけることによって一部のプログラムの記載を省略してもかまわない。作曲者名と曲名は、メインのプログラムから書いていく場合と、実際に演奏する順で書いていく場合がある。作曲者名と曲名は正確に記載しなければならない。J-POPや編曲された曲を演奏する場合は特に注意が必要である。J-POPでは演奏しているアーティストを作曲者と勘違いしていることがよくある。演奏者と作曲者は別物である。編曲されている場合は、作曲者と編曲者の氏名を記載しなければならない。
問い合わせ先は団員の誰かになることもあるし、学校の事務室となることもある。現在はまだ電話番号を記載することが多いが、近い将来メールアドレスの記載がメインとなると思われる。メールアドレスを記載する場合は、捨てアドと呼ばれるようなアドレスではなく、団のメールアドレスであることが一目瞭然なアドレスを記載すべきである。各学校の事情もあるとは思うが、未成年の団体の場合、学校や顧問の先生が窓口となった方がいいと思っている。チケット価格は値段を記載すればいいが、入場無料の場合、事前申し込みが必要な入場無料の場合と事前申し込みが不要な入場無料とがある。事前申し込みが必要な場合はその旨を記載する。また、チケットの購入方法についても記載しておいた方がいい。
指揮者名は記載しなくても構わないが、お客さんが指揮者目当てに来場することもある。プロの指揮者に依頼しているなら記載した方が集客はよくなる。生徒や顧問が振っている場合は記載してもしなくても集客にはあまり影響がない。注意事項には、写真撮影不可や未就学児不可などが記載されることがある。最近は団員に招待された人のみ入場可という演奏会もあるので、そのようなことは注意事項として記載する。
付随するデジタル情報は記載されている方が安心する人が増えている感じを受ける。一枚の紙には記載しきれないような情報を発信できるのがデジタルのいいところである。チラシは形式的なものとしてとらえ、SNS等で団の魅力や曲の聴き所の解説を発信することもできる。
チラシに記載されなければいけない事項の確認がとれたら、次はチラシのデザインである。デザインを専門のデザイナーに依頼することもあるが、スクールオーケストラでは団内の誰かが作成することが多い。まずは文字の大きさに注意して作成するようにしてもらいたい。紙に印刷することを主眼とするなら、一目みただけで主な情報が飛び込んでくるような大きさの文字を使うべきであるし、デジタルでの宣伝を主眼にするなら、スマートフォンの一画面で拡大しなくてもある程度の情報が見られるように文字の大きさを工夫すべきである。チラシと同じデザインで大きなポスターを作製するなら、1~2メートル離れた位置から主な情報を読めるような文字の大きさにしなければならない。全ての文字を可読できなければならないわけではないが、チラシやポスターをチラ見してもらえたとしても1秒未満の時間しかチャンスはないことを頭の中にいれておくべきである。その1秒未満の時間で興味がわいたら、近づいたり拡大したりして他の情報を見られるように工夫すべきである。
文字の大きさと配置を考えると同時に背景のデザインも考えることになる。印刷屋にチラシ印刷を発注する場合はあまり気にしなくていいが、学校内で印刷して作成する場合は、印刷機の性能が良くないことを想定して細かいデザイン、写真、色の濃淡が絶妙なデザインは避けた方がいい。
紙に印刷する場合、用紙はある程度厚さと光沢のある紙を使用することが多い。印刷のコストを削減するためにわら半紙のような質の悪い紙を使うというようなことは避けるべきである。現在、ほとんどの団体がコート紙を使用しているので、紙質を極端に落としてしまうと、それだけで印象が悪くなる。紙の厚さは「原紙」と呼ばれるサイズの紙を1000枚重ねたときの重さで表現されるが、100kg以上の用紙を用いたい。チラシの表面は目立つようにカラー印刷とすることが多いが、裏面は一色刷りが多い。カラー印刷は高価格なので、印刷コストのことも考慮してカラー印刷か一色刷りかを決めなければならない。
デジタル画像では必要な情報を一枚に集約するが、紙の場合、裏面に団、指揮者、演奏者、曲目の紹介を書くことも多い。こちらは必須ではないが上手に活用してもらいたい。
近年デジタル化の進歩のおかげで、原稿作成完了から印刷物の完成までの時間は短くなってきている。一昔前は印刷屋に入稿してから納品まで1か月近くかかったが、現在は3日あれば印刷物が納品されるようになってきている。そうは言っても、早めに作成しておくべきである。演奏会2か月前くらいからチラシを配り始めることを前提に3か月前にはチラシ原稿を完成させ印刷屋に入稿すべきである。チラシの印刷部数は、各団員が配布する目標枚数と、ホールに挟み込みに行く予定の部数とを合わせた数が目安となる。足りなくなるのは問題なので多めに印刷すべきである。
昔ながらの印刷屋では、実際の紙に試し刷りをし、それを依頼者がチェックしてから本印刷に進むという手順をとるため、入稿から納品まで1か月近くかかる。近年のネット入稿の安価な印刷では試し刷りの確認をしないため納期が短い。モニターで見た原稿と実際に紙に印刷された原稿では受ける印象が大きく違う。もし印刷屋による試し刷りの確認ができないなら、自分達のプリンターでコピー用紙でも構わないので一度実寸大で印刷して確認すべきである。
チケットを作成する場合もチラシと同様なことを記載する。チケットの方が紙面が狭いので記載しきれない情報もでてくるはずである。チケットに曲名や指揮者名は記載しなくても問題はない。チケットには、演奏会タイトル、日時、場所が記載されていれば大丈夫である。チケットにはミシン目が入ることが多い。印刷屋にミシン目の加工も依頼すると、単に印刷するだけよりも納品までに数日余計に必要となる。また、チケットに通し番号をふったり指定席の番号を記載したりすることもある。その辺のことも印刷屋で対応できるか相談してみるといい。