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オーディションと人気投票

 一つのパートに募集人数よりも大勢の入部希望があった場合、パート替えのお願いをするかオーディションをするか、あるいは別の方法できめるかなどの対応を取らなければならない。管楽器でこのような状況となることが多い。弦楽器においてもこのようなうれしい悲鳴があがることもある。例えば、コントラバスは団の楽器を個人に貸し出すことが多く楽器の台数が足りなくなってしまうこともある。足りない場合は個人で購入してもらえれば済む場合もあるが、個人の大型楽器の置き場所が学校にない場合もある。購入すれば済む場合でも誰が購入することになるのか決めなければならず、大変に難しい問題である。

 パートの人数を適正になるようにふり分ける方法として、オーディションという手段を用いる事は可能な限り避けるべきである。ごく一握りの全国的に有名な団においてはオーディションをすることが当然となっているが、そういう団体以外は他の方法を模索し、どうしてもという場合の時以外はオーディションという手段を使うべきではない。オーディションという手段をとる前に、他の楽器への転換の説得を行うべきである。

 オーディションの課題曲の設定や演奏の評価を顧問やトレーナーなどプロの音楽家が行うなら問題ない。上級生が行うことは避けるべきである。オーディションの形式をとった単なる人気投票になりがちだからである。オーディションは客観的に技術評価や演奏評価を行える人が行うべきである。感覚的に上手下手を判断するものではない。

 もしどうしても上級生が審査をするのであれば、誰もが同じ評価基準となるようにチェックリストなどを用いた方がいい。チェックリストは、例えば「〇小節の音を間違えなかった」「〇小節のフォルテピアノを正確に表現できた」など〇×で評価する方法である。このような評価項目リストを20個くらい作っておき数人で採点をすれば客観的な評価となるだろう。チェックリストだけでは評価できない項目については概略評価として5段階くらいの評価を合わせて行うといい。例えば「ワルツらしい雰囲気で演奏した」「楽器のメンテナンスはされていた」「全体的に音程は正しかった」などを5段階評価とするのである。このチェック項目と概略評価の組み合わせによる評価方法は医療系の大学の実技試験でも用いられている方法である。

 オーディションを審査するにはそれなりの技術と経験が必要である。それなしで行えば単なる人気投票となってしまう。もし私が素人審査員のオーディションを自由曲で受けるなら、難しい技術を要する曲ではなく明るくて軽やかで簡単な曲を気づかれないくらい微妙にチューニングを高くとって弾くだろう。そうすれば人気投票では得点を稼ぎやすいからである。逆に音楽の内面的表現が重視される曲、一見簡単そうに見えるが正しく演奏するのが難しいような曲、スローテンポでも臨時記号が多いような曲は私なら選ばない。これらの意味が分からないようなら審査はできない。

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