プルト(座席順)の決定
本番の時のプルトは一般的にはそのオーケストラの在籍年月が長い人や演奏がうまい人、経験歴が長い人が前に座る。前方にあまり弾けない人が座って演奏中に間違えてしまうと、後ろに座っている人がそれに連れられて間違えてしまうので前方に上手な人や経験の長い人が座る。しかし、そのルールを絶対に守らなければならないということはなく、様々な作戦により柔軟に決めた方が全体の音がよくなる。
初心者の多い団においては、練習時は誰がどこに座るのかを固定せずにローテーションした方がいい。座る場所によって指揮の見え方、他のパート音の聞こえ方が異なる。また、ローテーションさせると隣に座る人も変わる。弾き方にどうしても個性があるので、色々な弾き方を聞いてお互いに合わせるということをしていくと、全体の音がだんだんとまとまってくる。経験者の隣にローテーションで初心者が順番に座るようにすることで初心者の指導を均等にできるし、初心者も上手な弾き方を真横で見ることができる。また、パートリーダーの横の席に座る人がローテーションすることによって、パートリーダーは各個人の弾き方のチェックを行うことができる。このように多々なメリットがあるので練習時の座席はローテーションさせることを勧める。ローテーションの仕方はジャンケンであったり阿弥陀くじであったり、パートリーダーの権限で割り振ったり色々である。ランダムな決め方でも問題ないが、時々は何か意図を持った配置とすることも必要である。本番の座席順のリハーサルであったり、あえて初心者を前方にかためたり、経験者を飛び飛びに配置したり、パート練習時の弾き方を見て気になる人を前に配置したり、様々な配置を練習時に試すべきである。
本番の時の席順は、上手な順に座るのが一般的で第一選択なのかもしれない。しかし初心者が多い団では、経験者をうまく散りばめることで初心者を牽引することができるようになるということも知っておいてほしい。例えば、パートトップ以外に経験者が一人しかいなく、パートの人数が10人を超えるような状況なら、経験者をトップサイドに配置するのではなく3プルトあたりに配置すると、指揮やトップの合図が遅滞なく後方に届きやすくなる。経験が長い人が前に座るという基準を守るなら、上級生が前方で下級生が後方となってしまう。そのような配置では後方の下級生が演奏から取り残されてしまう。その対策として、経験の長い人が前方という考えにこだわらずに上級生を表側、下級生を裏側の席に配置することが多い。この並び方はどこの団でも行われているメジャーな配置方法である。
本番時の座席はパートリーダーあるいはトレーナーなどの指導者が責任をもって決めるべきである。一人で決めなければならないというわけではなく、責任者としてパートリーダーやトレーナーが最終決定すべきである。なので、パート内で話し合いをして、それをパートリーダーが承認するという形でも問題ない。
練習時の座席配置はじゃんけんでもかまわないが、本番の座席順は演奏を最適にするための作戦として理論的に決めるべきである。ペアを組む二人の相性や、経験者と初心者の配置のバランスや、背丈や演奏の見た目なども考慮に入れる。身長が高い人の真後ろの席に身長が低い人が座ると前方が全く見えなくなることもある。そういう点にも配慮が必要である。作戦の一環で、経験者を後方に配置する場合、なぜそのような配置にしたのか丁寧な説明をしなければならない。そうしないと、後方に配置された経験者は自分の技術を認めてもらえなかったと思ってしまうからである。
本番時の座席を考える時は、業界用語でいう「折り返し」についても考慮しなければならない。また、パート内の人数が奇数の場合は一人プルトをどこに配置し誰を充てるかも考えなければならない。折り返しは、ホールの幅の制限からプルトを縦一列に並べられずに裏側に並列に配置することである。両翼の一番客席に近いパートについて言う表現であり、ステージ中央付近のパートに関しては折り返しという言葉は使わない。折り返しはパートの人数が何人いてホールの広さがどのくらいか、ということがわからないと決まらない。一人プルトは表側(客席側)には設置せず裏側(内側)に入れる。それが原則でありもし5人が横に並ぶなら一番内側(ステージ奥側)の端が一人プルトになる。しかし、スクールオーケストラでは5人のうち中央の座席を一人プルトにしてもかまわないと私は考えている。一人プルトに座る人が自力で弾けるならそのような配慮をする必要はないが、自分のパートの音に囲まれてないと不安な人が座る場合は中央を一人プルトにした方がいい。
各弦楽器の人数配分は何となく理想的なものがある。ファーストバイオリンの人数が基準で、セカンドバイオリンはファーストバイオリンと同じプルト数か1プルト少なく、ビオラ、チェロ、コントラバスは順に1プルトずつ少なくなるぐらいが基本である。表にプルト数の例を示す。この数にしなければならないということは全くない。曲目により、あるいは演奏者の音の出し方により増減があって当然である。指揮者が希望プルト数を指定するのが一般的である。スクールオーケストラでは、入部した人数によるので理想の人数になることは少ない。大学でエキストラ奏者をお願いする時は理想の人数比となるように調整する。スクールオーケストラの場合、ファーストバイオリンとセカンドバイオリンの人数は同じにしてしまうことの方が多い。それは、曲によって人員を入れ替えたり均等な方が練習場所を平等に使えたりするからである。
各人数の時のプルトの椅子の並べ方を例示する。あくまでも一例である。ステージの広さにより変わるものである。