演奏会までの練習量
初見会から演奏会までの間に必要な総練習時間を定めることはできない。先に本番の日程が決まってしまっているし、曲の難易度も様々であるし、奏者のレベルもバラバラだからである。決められた日程の中でやりくりするしかない。しかしながら、演奏会で弾く時の演奏レベルの目標は何となく雰囲気として決めることは可能である。その目標から逆算して練習時間を割り振るのがいいと思っている。
演奏レベルの目標を端的な言葉に表すことは不可能である。イメージとして各自こんな感じというのはあるはずである。その個人個人のイメージが団の中で統一されているのが望ましい。演奏レベルとは少し違う考え方だが、演奏会の目標となる標語みたいなものを考えるのも一つの手である。一方で演奏技術に的を絞ってしまえば目標は定めやすくなる。例えば、テンポいくつで間違えずに弾ける、どこどこのリズムをぴったりと合わせられる、などである。
目標は、全体での目標と個々の目標の二本立てにすることをお勧めする。経験者と初心者とでは、弾ける内容が違うからである。初心者が弾けない箇所が多少あってもしょうがないことではあるが、だからといって練習を適当に行うことはよくなく、初心者なりの目標も必要である。
全体練習を行える時間に限りはある。しかし、個人練習はその気になれば無制限にできる。高校生や大学生の場合、暗譜で弾けるくらいの練習を目安にしてはどうだろうか。実際に暗譜をする必要はない。しかし、暗譜で弾けるくらいでないと指揮を見ながら合わせるのは難しいはずである。本番の時に譜面がなければ全く弾けないようでは練習不足と判断されるだろう。重要な箇所だけでもいいので自然と暗譜で弾けるくらい練習した方がいい。
個人練習は楽器を持たなければできないというものではない。CDやYouTubeを聞きながら自分の楽譜を見るのも個人練習の一部である。楽譜をみながら、楽器を持たずに指だけ動かすのも個人練習である。そういうことを繰り返していれば、楽器を使わなくてもある程度は弾けるようになってくる。
部活は楽しんで取り込むのが一番である。無理な上達目標を立ててしまうと、練習というより訓練になってしまう。そうはいっても、演奏会を開催するために最低限しなければならないこともある。演奏会ではお客さんに時間を割いて来場していただくものであるので、そのお客さんに対し失礼のないようにしなければならない。演奏会はお客さんに楽しんでもらう場であるので、そうなれるように最低限の練習はしなければならない。
各個人が、本番の時に自信を持って演奏できるというのは重要なことである。練習不足だと自信を持つことができなくなり、その心情が演奏にも表れてしまう。胸を張って、自分ができる最大限の練習をしました、と言えるようであればいい演奏になるはずである。自信を持って弾けるようになるまで練習をするというのも一つの目安である。一方で、どんなに練習しても一向に自信を持って弾けるようにならない性格の人もいる。その辺のフォローは、お互いに励ましあっていくものではないだろうか。
オーケストラはチームプレーで行うものである。全体練習で休みの人が多いと練習に支障をきたし真面目に出席している人に迷惑をかけることになる。そのことを各自が自覚してなければならない。オーケストラに限ったことではないが、欠席するときは事前に連絡すべきである。団によって欠席に対するポリシーが違う。学校の授業に関することと体調の問題以外の理由での欠席を全く認めないような厳しいところから、緩いところまである。どちらにしても無断での欠席はいいことではない。
どれだけ熱心に練習をしたのかは、不思議なことに演奏会で観客に伝わってしまうものである。練習時間が十分だったかどうかではなく熱心に取り組んだかを感じ取られてしまう。それどころか、団の仲間同士で仲が悪いような状態も演奏会を見ているだけで感じることがある。そのようにはならないでもらいたい。
参考的な情報であるが、社会人のアマチュアオーケストラでは、本番までに10~15回程度の合奏を設定している団体が多い。事情が違うのでこの回数をそのままスクールオーケストラに当てはめてはならない。社会人のオーケストラではパート練習やセクション練習はないし、個人練習は自主的に家で行うだけである。プロのオーケストラとなると練習は3回程度となる。部活動の演奏でたまに見かけるのが、本番の入れすぎ、過密スケジュールによる練習不足な演奏である。各個人の基礎的な弾き方はとてもうまいのに、明らかに練習不足、という演奏に出会うことがある。そういう演奏を見かけるのは、たいてい何かのイベントでの出張演奏である。それを一概に悪いことだとは言い切れないが、もう少し別の方法もあるのではないかと思ってしまう。
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