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反省会

 反省会が重要なことは誰でもわかってはいる。でも、何をどのように反省すればいいのかがわからないのである。会社などの組織なら、第三者の外部チェックが入りそのコメントに従って改善をしていく、あるいは予め具体的な目標が定められていて、その目標の達成度を評価する形式がある。しかし、部活動ではそこまでのシステムはない。また、演奏会は芸術の分野であり正解を定められないことも反省を難しくする。

 反省会は、定期的に行われるもの、合宿中に行われるもの、演奏会後に行われるもの、その他イベントの後に行われるもの、などがある。継続性のあるものに関しては比較的反省会を行いやすい。例えば、合宿でその日にあったことを反省し翌日への改善点とする場合は、すぐにその効果を確認できるので反省会の意義もわかりやすい。しかし、演奏会の反省会となると、その演奏会を持って引退となる最上級生にとって反省は自分のためのものではなくなりがちであり、また、次回までの期間が長くメンバーも変わるので反省を生かしきれないことが多いのではないだろうか。反省は単に失敗を思い出すことではなく、次回改善するためのステップである。「〇〇君が間違えて一拍早く音を出しました!」も反省かもしれないが、それは普段の練習やゲネプロでの反省なら次回間違えないようにという意味になるが、本番の後の反省としては次につながらない失敗の思い出でしかない。反省会では次につながるようなことを挙げていくようにすべきである。

 反省点は演奏面とそれ以外に分けて考えるといいと思っている。演奏以外のこととして、日々の生活だったり、部活の運営だったり、演奏会の運営だったりがある。反省の材料としては、目標に対する出来具合、外部からのコメントが重要である。演奏会ではアンケートをとることが多いので、そのアンケートをキーポイントとすることができる。お客さんはあまり具体的な改善点を書いてくれないが、取り組めそうな指摘があれば大いに活用すべきである。アンケートに書かれてなくても、自分達から聞きに来てくれた親友や家族にヒアリングするという手もある。うまく聞き出せばいい改善点を得られるはずである。

 自分たちから反省点を言い出すのはなかなか大変である。友達のことを指摘しなければいけないと思ってしまうためなかなか言い出しにくい。また、反省をするには部活内の上下関係も邪魔するものである。「先輩がこう言ったのでその通りやりましたけど、こうした方がよかったと思います。」とは発言できない。

 いいものを知らないがために、何が悪かったのかがわからないということもある。それは、経験を積んだり勉強をしたりすればわかるようになるはずである。他の人の演奏会に一度も見に行ったことがない人が、自分たちの演奏会が良かったか悪かったか評価できるはずがない。是非さまざまな演奏会に足を運んでもらいたい。ある一つの演奏会しか見ていないとその演奏会が基準になってしまうかもしれない。標準的なものを見定めるためには、たくさんの演奏会を見るしかない。もし、コンクールや他の学校と交流があるなら、是非その時に他校の様子を観察してほしい。上手か下手かではなく、何をどうやっているのか、というふうに見るのである。

 反省は悪かった点を見直すだけでなく、良かった点についても反省として顧みるべきである。良かった点は継続する努力をしなければならない。その良かった点が定着し他の団にできないようなことであるなら、それはその団のアピールポイントであり特徴となる。

 反省会で団員に反省点を挙げてもらうコツは、漫然と問うのではなく、具体的なポイントを挙げながら聞くことである。例えば、「昨日の演奏会の反省点を挙げてください」と言っても何も話が進まないので、「ステージセッティングについて思っていたのと実際とで違ったことはありましたか」とか「ステージセッティングは効率よくうまくいきましたか」とか、「ステージセッティングでトラブルはありませんでしたか」というふうに言葉巧みに一個ずつのことについて聞いていくと意見があがりやすい。

 反省は自分たちに合ったレベルで行うべきである。あまりにも高い理想を基準に反省してはいけない。プロの演奏会を見慣れてしまうと自分たちが何もできていないと感じてしまうかもしれないが、それはしかたがないことである。反省したところですぐにはプロレベルになれない。遠い目標はいくら高いものでもかまわないが、そこに至るまでのステップとして、自分たちにあった目標も必要である。また、スクールオーケストラでは、高いレベルを目指している人ばかりではないことも理解しておかなければならない。音楽の入り口として初めて楽器に挑戦した人もいるし、単に帰宅部となるのが嫌でオーケストラ部に入っただけの人もいるはずである。部活動としては常に上を目指すべきであるが、様々な考え方の人が入り混じっていることを忘れてはならない。もちろん、各個人もそれぞれに適した理想や目標を持って取り組むべきである。帰宅部回避のためにオーケストラに入っている人も、「楽しく演奏する」くらいの目標は持っているはずである。間違った目標ではあるが、「サントリーホールでウィーンフィルより高い評価の演奏をしてスタンディングオーベーションを受ける」などという理想像を掲げてしまうのは問題である。もしもそのような目標を立ててしまいうと、それに対して行われる反省は、全く意味のないものとなってしまう。もう少し身近で具体的な目標、あるいは自分達のレベルにあった目標を立てた方が、次回につながるような反省ができるはずである。

 反省会で挙げられた項目は議事録として保存しておき、いつでも見返せるようにしておくべきである。あるいは、反省会を終わった時点で、次いつこの反省記録を読み直すかを決めてしまうといい。そうでもしないと、せっかくの反省が無意味になってしまう。次に生かしてこそ反省が有効になる。そして、反省と一緒に考えなければならないのが、次回の目標である。反省をしながら目標を立てられたら非常にすばらしいことである。

 「苦言」を呈してくれる人は大事にしなければならない。「何もうるさいことを言わない人が優しくていい先生である」と勘違いしている人がものすごく多い感じがしている。教育の世界ではクレームを恐れて教師が授業内容のこと以外何も言えないような環境になりつつある。生徒の側の感覚としても、「優しい」「甘い」「厳しい」「怖い」の組み合わせがおかしなことになっているのではないかと思うことがある。進歩するためには、時には自他ともに厳しくすることも必要である。

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