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部活動がなくなった学校はどうなるのか?

 地域移行は、どのように部活動が地域移行するのか、生徒と保護者の対応はどうなるのか、という点ばかり注目されている。では、部活動がなくなった後の学校はどのようになるのだろうか?

 設備の面では余剰な設備が残るだろう。設備の一部は地域移行した団体に使用されるのかもしれないが、学校自身がその設備を持つ必要性はなくなる。例えば、広大なグラウンドは学校には必要なくなる。体育をしたり生徒が遊ぶためのグラウンドは必要である。しかしながら、サッカーと野球を並行して行うことができるようにと2面もグラウンドを持つ必要はなくなる。

 また、テニスコートも必要ないだろう。昼休みにテニスを遊びとして行う習慣はないと思われる。体育の授業で使う程度だったら専用のコートを持つ必要もない。マルチな役割を果たすグラウンドにコートの線を引いてネットを張ればいいだけである。

 武道場は中学の学習指導要領で必修化されたのを機に整備された学校が多いと思われる。しかし、畳を体育館に敷き並べて行うということもできるし、実際そのようにしている学校もある。武道場が部活動で使用されなければ、空き時間が非常に多い空間となってしまう。

 人的なことは、先生方が本業の教育に集中できる時間が増える。また、部活動がなくなったことにより残業が減る。そのことはとてもいいことである。一方で、部活動を熱心に指導したいという先生にとっては部活動がなくなることは残念なことである。部活動は人間性を高めるためにも必要なものという認識が高い。だからこそ、学校から部活動を切り離したとしても別の場所で部活動に代わるものを立ち上げようとしているのである。

 部活動の活発さをアドバンテージとしていた学校はどうなるのだろう?よく「祝 ~~部 全国大会出場」という旗を掲げている学校があるが、それは今後一切なくなることになる。公立の中学は学区制なのでその地域にいる人が集まるだけだが、高校になると学校の魅力に惹かれてその学校を受験するのである。部活動の魅力がない学校はどのようにして選べばいいのだろうか?高校ではよくその部活動を目当てに入学してくる生徒がいる。全国大会常連校では部活目当てでの入学は日常的なことである。それが無くなったら、その学校の魅力は何が残るのだろうか?結局は、施設の綺麗さ、制服のかわいさ、進学率の高さだけになってしまうのではないだろうか?

 部活動は生徒が学校に行く目的の一つである。部活が楽しいから学校に行くという人はかなり多い。それは強豪校だけの話ではない。楽しいことがあるから学校に行くのである。その楽しみの部活がなくなってしまったら学校が楽しいものでなくなってしまうかもしれない。もちろん、部活以外にも楽しいことは色々とあるはずである。それらが残るからまだいいものの、勉強が楽しみで学校に行くという殊勝な人はほとんどいない。

 これまでの部活動で使用されてきた資産はどうなるのだろうか?金銭に交換できるようなものは交換してしまえばいいし、価値がないものはゴミとして廃棄してしまえばいい。各部活動が持っているノウハウはお金には替えられない。賞を取った記念品なども、その部活があってこそ価値のあるものである。吹奏楽では、楽器、楽譜などもお金に替えられない価値を持つものとなる。誰がそれを管理し利用するのだろうか?以前の記事にも書いたが、校歌の楽譜はその学校にとって無くしてはいけない重要な資産である。どうなるのだろうか?

 学校の校風というのも部活の消失で大きく変わることになるだろう。どのように変わるのか具体的なことはわからないが、生徒の活動(行動)が変われば当然のように校風も変わってくる。

 部活動がなくなることで、学校の価値が変わると思われる。価値が変われば人気校というのも変わるはずである。人気校が変われば各学校の偏差値も変わることになる。私立学校とのバランスも大きく変わる可能性がある。私立学校は部活動が受験生に対する一つの宣伝材料である。教員の働き方改革が必要なので部活動の在り方を私立学校でも変えていく必要はあるが、公立学校のように全てを地域に委ねることはしないという選択肢を残すだろう。

 「部活のある私立」対「部活のない公立」という構図ができてしまうかもしれない。もしかしたら、私立学校がアウトソーシング的に公立の生徒の部活を受け入れるかもしれない。私立なので、部活専門の教員を雇うことも可能である。優秀な生徒を集めて部活動を活発にするということができる。その優秀な生徒は地域移行活動のための費用を受け入れの私立学校に払えば、経営としては問題ないことになる。多少の赤字は、大会でいい成績を収めてくれたら宣伝費として処理することも考え方によっては可能である。

 部活が無くなった後の学校についてどうなるか色々と想像してみた。部活がない学校についても今のうちに議論しておいた方がいいと思っている。

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