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客席設営

 コンサートホールで演奏するのに客席を設営する必要はないが、学校内の体育館や地域の公民館で演奏会を行う時は客席を自分達で並べることになる。客席の設営を知識無しに適当に行うとグチャグチャな椅子並べとなりがちであり、見た目も快適性も悪くなる。少しでもお客さんに喜んでもらえるようにするなら、たかが客席の椅子並べといえども知識と経験が必要である。

 幕張メッセや国際フォーラム等でイベントスタッフのアルバイトをすると客席のセッティングについて学ぶことができる。このような場所ではロープを使って客席を整列させている。ロープを使った椅子並べの方法は体育館等の椅子並べでも使用できる。

 ロープを準備するのは大変なので、新聞を縛るようなビニール紐を3本以上準備する。3本のうち2本は縦用であり、1本は横用である。縦用の紐の長さは、客席となるスペースの奥行以上の長さが必要である。横用は設置しようとしている客席の幅以上の長さが必要である。客席の縦の間隔は90センチメートルくらいがおすすめであるので、縦用の紐には90センチメートルごとに目印をつけておく。目印をつけるために45センチメートル幅に切った段ボールなどの板に紐をグルグル巻きつけ、板の端をマジックで塗っていけば90センチメートルごとに印がつく。この作業を縦用の紐2本分について行う。

客席設営用の紐の目印のつけ方
45cm幅の段ボールに紐を巻き付け、片側をマジックで塗ると90cmごとの目印がつく


ここまでの作業は事前に準備しておくといい。客席となるスペースに縦用の紐を客席の幅で2本張りガムテープ等で床に固定する。横用の紐を作成した目印に合わせピンと張り、その横紐に合わせて客席を1列並べる。1列並べ終わったら横紐を次の目印のところに移動させ、また客席を並べる。横紐は作業する人数が多ければ複数本同時に張って作業することができる。そのようにしていけば等間隔に直線的に並べることができる。通路は椅子を適宜抜くことで作成すると楽である。折り畳み椅子の幅と前後の長さはどちらもだいたい45センチメートルである。なので、縦通路を作るためには椅子2席分を取り除けば90センチメートルの通路となるし、横通路についても縦紐の1列分飛ばせば90センチメートル幅の通路を作成できる。横通路は90センチメートル幅だと狭いので椅子2列分を飛ばすようにした方がいい。縦通路の幅も広くするなら椅子3席分の幅とすれば135センチメートル幅の通路ができあがる。

紐を使用した客席設営の手順

客席のセッティング方法。
① 目印を付けた縦紐を固定する。
② 横紐を張る。
 (ステージから2mあけるため3番目の目印に張った。)
③ 椅子を並べる。
④ 通路にあたる部分の椅子を取り去る。
⑤ 次の列に横紐を張る。
⑥ 椅子を並べる。(あとは同じ作業の繰り返す)


 演奏者から客席最前列までの距離は2メートル以上あけることをお勧めする。1列目の前を歩く場合を想定した距離が必要であるし、あまりにも近いとたまにお客さんがステージに置いてある譜面などを触ってしまうことがある。

 座席の並べ方について、法令による規定やガイドラインが存在する。法令やガイドラインは客席常設のホール等が対象であり、体育館等に設置する臨時の客席については本来この法令に則らなくても構わないが、規定に従った客席配置の方が快適な空間となる。これらの規定は自治体ごとに定められている。自治体間の規定の差はほとんどないのでその点は安心してもらいたい。規定は難解なイメージがあるかもしれないが、実際に読んでみると慣れない言い回しがあるだけであり、平易な言葉に置き換えることができれば単純明快な内容である。客席の並べ方については常識的な座席配置としておけば大幅に規定を踏み外すことはない。もし興味があれば「建築安全条例(条例中の「興行場等」)の項目」あるいは「火災予防条例(条例中の「劇場等 の客席」の項目)」を検索してもらいたい。どちらも観客が安全に移動することができるように、あるいは避難することができるようにするための基準である。

 規定を守るなら、座席の前後の間隔は80センチメートル以上としなければならない。横に21席以上続けて並べてはならなく、縦通路は80センチメートル以上にする。また縦に並べる客席は連続で20席までとし、それごとに横通路を設ける。実際、前後が80センチメートル以下では前の椅子に膝がついてしまうような狭さとなるし、縦通路を作らずに横に30席も並んでいたら中央の席には座りにくくなってしまう。法令を読まずとも、そのような客席配置にはしないと思われる。通路幅の80センチメートル以上というのは、人がすれ違えるギリギリの幅である。一般家庭のドアが90センチメートルくらいであることを基準に考えれば通路幅の想像がつくと思う。法令はこのような規定となっているだけであり、常識的な客席配置なっていればたいていは問題ないはずである。

 ビニール紐を使用する方法を紹介したが、他の方法で綺麗に並べている団もある。例えば、床のタイルのマス目で椅子の位置を合わせる方法をとることもある。紹介した椅子の並べ方は、それぞれの事情に合わせて色々な応用ができる。幕張メッセなどのイベント会場ではビニール紐ではなく太いロープを使っているが、考え方は同じである。紐を使用した椅子並べの方法は、特段難しい作業ではなく知っていればできることである。目視だけで椅子を整列させているようなら是非取り入れてほしい。

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