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アンケートの集計

 演奏会のアンケートは重要な情報源である。スクールオーケストラでもほとんどの演奏会でアンケートが行われている。アンケートは何を目的に収集するのかを考えながら行わないと、せっかくのデータが無駄になってしまう。また、アンケートは経年的に連続してとることをお勧めする。1回だけのアンケートではその評価をしにくいが、前年、さらにその前のアンケートと比較することで有意義な情報を得られることが多い。スクールオーケストラの場合、一年ごとに団員が変わるので経年的にデータを蓄積していくのは難しいことかもしれない。過去のデータも大切に保存しておき、是非以前のデータと比較してアンケートを解析してほしい。

 旧来は紙を用いてアンケートが行われており、パンフレットにアンケート用紙が挟まっていることがほとんどであった。近年はデジタル化のおかげでパンフレットに掲載されたQRコードを読み取るとアンケートのWEBページに飛ぶ形式のアンケートが増えてきた。Googleフォームなどを利用すれば無料でアンケートをとることができ、集計作業もほとんど不要となってきている。紙でのアンケートの回収率は20%もあればいい方で、だいたい10%程度ある。WEB形式のアンケートの回収率はもう少し高いような感じを受けているが、まだ数回しか経験がないので平均的な回収率はわからない。

 アンケート項目は、各曲目の採点評価とコメント、全体的な印象の採点評価とコメント、来場きっかけ、次回以降の演奏会の曲目のリクエスト、個人属性、などである。紙のアンケートの場合、1枚に収まる程度の分量とするが、WEB形式の場合、分量の制限がなくなる。たくさんのことを質問できるので喜ばしいことなのかもしれないが、分量は紙のアンケートと同じくらいに収めるべきである。回答にかかる時間を考えてみると、手書きよりスマートフォンで入力する方が時間がかかる。そのことも頭に入れておいた方がいい。

 各曲目の採点評価は5段階くらいで行われることが多い。評価の段階を奇数の5段階とするか偶数の4段階とするかでは、そこから得られる平均の意味合いが大きく異なる。5段階の場合は真ん中が「可も不可もない」あるいは「普通」と表現されるような良し悪しがつかない評点となる。その真ん中の評価点があるかないかは解析上重要な点である。真ん中に近い評価だとお客さんが感じたとしても真ん中がない場合、心理的な傾向がとして高い側に評点をつけがちなので全体的な平均点は高くなる。評価点の他に自由記述欄が設けられることもよくある。自由記述欄の大きさもアンケートを作成する際のポイントとなる。自由記述欄が小さければコメントはもらえなくなるが、大きくしても1行以上書いてくれるお客さんは少ない。また、「良かった」とか「楽しかった」とかの漠然としたコメントを書いてくれるお客さんはいるが、具体的に良かった点や改善点を書いてくれるお客さんは非常に少ない。

 全体的な印象は、主催者側としてはお客さんの入場から退場までの全てのことを含む印象のアンケートを取っているつもりでも、言葉をうまく使わないとお客さんにそのイメージが伝わっていない。アンケートの問に「全体的な印象はどうでしたか?」と書かれてもピンとこないので、場合によってはもう少し具体的に質問した方がいいかもしれない。例えば、「受付の対応はいかがでしたか?」、「会の進行はどうでしたか?」、「客席環境は快適でしたか?」などの質問とするとわかりやすい。

 評点は、毎回同じ段階数のものを使用した方がいい。単回の点数だけでは、どの曲が人気だったかの解析しかできないが、これまでのアンケート結果と比較することで様々な解析を行うことができる。ホールの場所が変わったらどうなるのか、雨天と晴天の影響はあるのか、どのような曲の評価が高いのか、などのことが解析できる。

 アンケート回収数が数百枚あるなら、年齢階級別に解析することもできるし、高評価をつける傾向のお客さんと低評価をつける傾向のお客さんをわけて解析することもできる。お客さんからの評価は、西日本より東日本の方が優しいと言われている。実際に東西日本で同じ団体同じ曲目で演奏した経験がないので本当なのかは私にはわからないが、そのように言っている人は多い。

 来場のきっかけに関する質問は、次回以降の演奏会のマーケティングのために重要である。どのような媒体で宣伝すればお客さんが増えるかを解析するのに使用する。スクールオーケストラの場合は団員からの情報で来場するお客さんが圧倒的に多いが、地域のファン、卒業生、その学校を受験することを考えている人、なども来場しているはずである。プロの商業オーケストラではないので満席にならなくても赤字になるという感覚はなく、客席が埋まることは単に演奏者が嬉しいだけと考えがちであるが、お客さんが少ない団は、いずれ団員数も減ることになると自戒すべきである。そのためにも、来場のきっかけに関するデータは団員全員がしっかりと把握しておくべきである。

 個人属性は性別、年齢階級、個人情報などが含まれる。個人属性も次回以降の演奏会のマーケティングに使用することができる。若いお客さんがある程度いるのならデジタルでの情報発信が有用であるし、お年を召された人が多いようならどのようなことがきっかけで来場されたのかを解析することによって宣伝効果が高まる。スクールオーケストラの場合、日曜日に演奏会が開催されることが多いが土曜開催となったらどうなるのか、などの想定にも個人属性の情報は有効である。住所氏名などの個人情報を記載してくれたお客さんには次回以降の演奏会の案内状を送付することが多い。そのようなことを行っていない団体は個人情報を無暗に収集すべきではない。性別や年齢階級の情報のみで十分である。個人情報を収集する時は個人情報保護法に則って行われなければならない。収集時に利用目的を説明し、収集後は管理を徹底しなければならない。以前は少人数の個人情報しか扱っていない事業者は個人情報保護法の適応外であったが、2017年からは全事業者が対象である。そのため、アンケートで個人情報を収集したことのある各オーケストラ団体も法の適用内に入っている。個人情報保護法は罰則も存在する法規定のため順守できないと罰金などの刑罰を受けることもある。法的にも個人情報の取り扱いは厳しくなっているので、使う見込みのない個人情報は集めない方が無難である。

 もしチケットを回収しているなら、アンケートの集計に合わせてチケットの解析を行うといい。チケットに番号がつけておき、それをどのように流通させるかを把握しておけば、どの経路で届いたチケットのお客さんが来場したのかがわかる。団員が配ったチケット、WEB等からの申し込みのチケット、当日販売チケットなどが番号でわかると次回の集客のための参考となる。

 アンケートの集計結果を用いてPDCAサイクルを回せるようになることが望ましい。PDCAサイクルは、計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→アクション(Action)のことであり、このサイクルを循環させることによって物事がいい方向に変化するという考え方である。このPDCAサイクルの中で、アンケートは評価(Check)の段階になる。アンケート結果から改善点を洗い出して次回につなげることが重要である。なので、手厳しい指摘をしてくれるアンケートは大事にしなければならない。アンケートに褒め言葉が並んでいると嬉しいが、それだけでは団として成長できない。もちろん、褒めてもらえたことは次回以降も続けるように努力し、褒めてもらえる個数を増やしていけば改善とはなる。具体性のない指摘は改善が難しいが、具体的に書かれていることはきっとお客さんが団に何かを教えようとしているはずである。アンケート結果は見て終わるのではなく、次につなげるための材料として活用してほしい。

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