演奏会時の予備楽器
演奏会本番には、予備楽器を持っていくことをお勧めする。特に弦楽器はもし余りがあるのなら持って行った方がいい。パーカッションなどは予備楽器がないことの方が多いので、その場合は不要である。社会人のオーケストラなら、もし壊れても近くの楽器屋さんに駆け込むこともできるし、最悪、その人が出演しないということも可能であるが、スクールオーケストラでは、楽器が壊れたから出演しないという選択はできないだろう。そうならないためにも予備楽器をホールに持っていくことをお勧めする。
弦楽器は、本当に楽器が壊れるのではなく弦が切れることが多い。弦を張り直すには時間がかかるので、予備楽器と交換するという手段を用いる。予備楽器は舞台袖にいつでも弾けるような状態にして置いておく。つまり、ケースを開けチューニングをして置いておく。その際、弓の毛を張る必要はない。予備楽器をステージ上に持ち込む必要はない。ステージから遠い楽屋に置いておくと、いざ使おうとする時に大変なので、舞台袖に置いておく。
弦楽器で弦が切れる以外で多いトラブルは、弓の張りすぎによる損傷である。ステージは乾燥して暑くなるため、弓の毛が縮み木の張りが強くなりがちである。こまめに注意して様子をみなければならない。弓の反りが真っすぐになったり逆反りになったりすると、木が折れたり、毛を止めるために埋め込まれているブロックが外れたりする。木が折れてしまったら応急処置はできない。ブロックが外れただけなら埋め込めば元には戻るが、埋め込むといっても、毛が絡まないように真直ぐ固定するのは至難の業である。本来は楽器屋の職人が行うことであるので、どうしようもない緊急時以外は演奏者が行うべきことではない。
もし本番中に楽器に異常が起きたら、ステージマナーとしては、その楽器を後ろの人と交換して、さらに後ろの人と交換して壊れた楽器を一番後ろに運び、後ろの座席の人が舞台袖まで取りに行き、今度は前の人と楽器を交換しながら予備の楽器を前に運ぶことになっている。しかし、それは結構手間がかかる方法である。曲の最中で舞台袖に取りに行くのは難易度が高い。本来の手順とは違うが、不調のおきた楽器の持ち主が、一番後ろの人に目や手の合図で楽器の不調を知らせ、一番後ろの人が舞台袖に楽器を取りに行き、予備の楽器だけ前の方に順に送るようにすると楽である。チェロやコントラバスの場合は通路のスペースを考えながら臨機応変に袖に下がる人を決めた方がいい。本人が直接取りに行った方が早い場合もある。曲の終盤に異常が起きたのなら、曲が終わったタイミングで舞台袖に楽器を交換に行くといい。
弦楽器で予備楽器がない場合、ルール的には楽器を順繰りに送り、一番後ろの人が舞台袖に下がって演奏せずに待機となる。スクールオーケストラの場合、そのような措置はとるべきではない。スクールオーケストラに参加しているエキストラが舞台袖で待機となるのは問題ないが、楽器に問題がない生徒が待機となるのは不憫である。不調となった楽器の持ち主が舞台袖に下がった方がいいだろう。
弦が切れる以外にも、ちょっとした本番中のアクシデントは意外と存在する。よくある事故は、小型のパーカッションが転げ落ちることである。バチやマレット程度なら誰も気づかないかもしれないが、トライアングルやシンバルが落ちるとものすごく目立つ。大太鼓奏者が本番だからと言って張り切りすぎたのか、叩いた勢いで大太鼓のスタンドが倒れるのを見たことがあるし、ドラの紐の結び目がほどけてはずれるのも目撃したことがある。打楽器以外の楽器では、譜面台を直すために一旦自分の横に置いた時に倒してしまうことが多い。演奏会の時にアクシデントが起きないように日ごろから楽器管理をしっかりし、予備楽器を使わないで済むように心がけてもらいたい。
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