演奏者の写真の撮り方①
ここでは、演奏者の撮影の全体的なことを書いてます。楽器別の撮影のコツについては下の記事をご覧ください。
演奏者の写真を撮るのは慣れていないと意外と難しい。撮影時の注意点、撮影機材、コツについて書いていく。普段の部活動中の友達同士の写真は好きに楽しくすればいいことであるが、本番等での撮影は気を使わなくてはいけない。また、全員がステージに乗っている状況を写真におさめるためには、誰かに撮影を依頼しなければならない。保護者やOB、手伝いの新入部員等に依頼する際は、最低限のルールを説明しながらお願いし、トラブルを防止する。
次の3点については撮影者が最低限守らなければいけないルールである。
・撮影のためにステージに入り込んではいけない。
・演奏が止まっている瞬間、音が静かな時にシャッター音を鳴らしてはいけない。
・フラッシュを使用してはならない。
それ以外のことは中級者、上級者向けのこととしても良いと私は思っている。
撮影時の注意点としては、演奏の邪魔をしないことが最も重要である。撮影のためにステージに入り込んではいけない。それは本番中だけでなくステリハ等の練習中においてもそうである。もちろんオーケストラ側から依頼された場合であってステージにも上がって撮影してくださいと言われ、指揮者とも合意の上であったらかまわないが、撮影のために勝手にステージに上がるのは基本的にはマナー違反である。また本番中に撮影する場合、お客さんの視界に撮影者ができるだけ入りこまないようにすべきである。シャッター音に関しても注意を払うべきである。一眼レフカメラのシャッター音に関して寛容な人はある程度いるが、スマートフォンの電子的なシャッター音に寛容な人はほとんどいないことを念頭に入れておくべきである。今は「無音モード」を備えているミラーレスカメラも存在するのでそういった機材を使用するのも一つの手である。
撮影するタイミングとしてNGなタイミングが存在する。それは、オーケストラの音が無音になる瞬間である。曲の演奏が始まる前、指揮者が構えてから振り下ろすまではシャッター音をだしてはいけないだけでなく、撮影者が動くこともNGである。また「G.P.」等で一瞬音が止まるとき、静かに曲が終了する時なども撮影禁止である。また、演奏が静かな時にシャッター音を鳴らしながら連写するようなことも避けるべきである。撮影者としては、被写体の動きが少ないタイミングで撮りたいのが本音であるが、「動きが少ない=音量が静か」でもあるので悩ましい問題である。
私は演奏会の撮影に一眼レフを使用しているが、一眼レフにこだわる必要は全くない。ホールなど広い場所で撮るには望遠レンズが必須である。また、カメラをブレさせないように固定するには、モニターを見るタイプより、目にカメラを固定させてファインダーを覗き込むタイプの方が安定する。ステージ近くの両サイドから撮るのであれば300mm程度の望遠レンズが必要となる。ホール後方からアップショットを狙うとなると、450mm等の望遠レンズと三脚が必須となる。ステージからホール後方までの距離はホールにより様々である。ホールの図面がネットに公開されていれば距離がわかる。図面がない場合、椅子の前後の間隔を80cm程度と想定し椅子が何列あるか数えればだいたいの見当がつく。ステージの左右の幅は、どこのホールもだいたい15~20mくらいである。その距離感があればカメラ好きの人なら適切なレンズを選べると思われる。撮影の距離があるため、三脚や一脚を持ち歩くと安心して撮影できる。移動しながら撮るのであれば三脚ではなく一脚の方がいい。
撮影は常にシャッタースピードを気にして撮る必要がある。経験上シャッタースピードは1/15秒よりも短い必要があると感じている。速い曲だと1秒間に約10回音を刻んでいる。バイオリンの弓の長さは70cm程度なので、最大で1秒間に7m動くようなものを被写体することになる。この速さは100mを14秒で走るのと同じ速さである。その動きを光量の少ない室内でとるのだからとても苦労する。このように速い動きの場合、1/15秒のシャッタースピードでは弓は確実にぶれることになるのでもっと短いシャッタースピードが必要である。ゆっくりの曲、あるいは人物を小さく撮る時(引きの構図)のシャッタースピードは、1/15秒で十分である。指揮者や打楽器奏者も動きが速いのでシャッタースピードに注意しなければならない。
フラッシュを使えばシャッタースピードを上げられるが、演奏会の撮影でフラッシュは使用してはならない。。フラッシュの光は演奏者の邪魔にもなるし、お客さんにも目障りとなる。そもそも300mmもの望遠で使用できるカメラ付属の内臓フラッシュは存在しない。プロのカメラマンが使うような専門的な物を除いて、フラッシュは基本的にカメラから数メートルの距離に被写体がある時にしか使用できないものである
撮影枚数は1回の演奏会で300枚程度は撮るように私はしている。300枚というと多いように感じるかもしれないが、オーケストラは60人ほどの団員がいるので単純に割り算すると1人あたり5枚程度にしかならない。人数×5くらいの枚数を目安にしておけば、たいてい全員を撮ることができる。各個人の顔の表情が見えるようなアップショット、プルト二人での写真、パートの写真、セクションの写真、全体の写真と撮影していくとどうしてもそのくらいの枚数になる。300枚撮ったとしても、ピンボケやブレてる写真があるので、最終的には枚数は減ってしまうものである。フィルムカメラではないのだから、シャッター音が邪魔にならない限り、多めに撮影しておいた方がいい。
いい写真を撮るには、撮影する場所を予め下見しておくべきである。どこから撮影すればどのような写真が撮れるかを事前に試し撮りしておくのである。その時にカメラのセッティングについても確認する。欲を言うなら、ステージリハーサル時に事前撮影をして本番で本撮影としたい。オーケストラではステージ内の人は意外と重なって写るので、上の方から撮るのがお勧めである。客席の2階や両サイドのバルコニー席からだと撮りやすい。1階席からの撮影だと、人の顔は見えても楽器が写らないことが多い。演奏者の目線がレンズの方に向いた写真とするためには、被写体を指揮者経由となるような位置で撮影すると目線を確保できる。要するに、演奏者は指揮者を見るので、その延長線上にカメラがあれば、自然と視線をキャッチした写真となる。しかしながら、指揮者を見るタイミングというのは意外と少ない。楽譜を見ようとすると視線が下がる。そういう場合は、少し下からあおり気味に撮ると視線をキャッチできることがある。
動画を何台ものカメラを使用して撮影する場合はたいていプロの専門業者に頼むことになる。1台のビデオカメラを固定で撮影するだけなら自分達でもできる。自分達で撮影する場合、どこまでのレベルを要求するかによって必要な機材は変わる。スマホをスタンドに立てて置いておくだけの方法が一番簡単であるが、音質はいいものを望めない。ビデオカメラに付いているマイクも音質はいいものを望めない。特に、ビデオは客席後方から撮影するため、客席内のノイズが大きく聞こえてしまうことに注意しておかなければならない。また、安価なビデオカメラは、モノラルの音を疑似的にステレオ音としているものもあることに注意しなければならない。スマホでもビデオカメラもマイクを外付けで接続すれば音質は良くなる。プロの業者に依頼するならクラシックの演奏会の撮影に慣れた業者に依頼した方がいい。何台のカメラで担当者が何人くるか、撮影して編集したDVDは何枚作製するかで撮影料は大幅に変わる。業者に依頼する際はスコアを事前に渡すこともある。業者は、スコアを見ながらアップショットを狙う人を決めるからである。アップショットはその音が始まってから慌ててそのパートにビデオカメラを向けるのではなく、音が始まる前からそのパートを狙ってかまえている。アップショットを狙ってほしいところを団の方で予めマーキングしたスコアを求められる場合もある。業者がどこを狙っていいかわからないという訳ではなく、団の希望に沿うためのサービスである。その辺は依頼する時に業者と相談するといい。
自分たちで撮影した写真を共有するのは、現代のインターネット環境では非常に楽である。様々なクラウドサービスがあるので上手に利用すればいい。撮った写真をアップロードする前に、下のような観点で必ず写真をチェックすべきである。
・「写ってはならない物」が写りこんでないか。
・ピンボケやぶれている質の悪い写真がないか。
・被写体の人が見てうれしくないような表情をしている写真はないか。
・同じような写真が何枚もかぶってないか。
上記の観点の中でも、「写ってはならない物」のチェックだけは絶対に行わなければならない。時間がなかったら他の観点については省略してもかまわないが、例え写真の公開のタイミングが遅れるとしても「写ってはならない物」のチェックだけは念入り行う。普段気にしないような一瞬の出来事でも、写真の場合は拡大してゆっくりと見ることができてしまう。ステージを下から見上げるような角度で撮った場合は要注意であるし、ステージに立って撮影していたとしてもひな壇上に座っている人の写真は要注意である。
私が写真を撮る時は、写真は記念に保存するだけではなく使えるような写真を撮るように気を配っている。例えば、SNSに気楽にアップロードできるように顔が写らない写真も混ぜることにしている。本人だけは自分だとわかる首から下だけの写真とか、背後から撮った写真とか、である。私が撮った演奏会の写真が、SNSのプロフィールアイコンになっている人が実はたくさんいる。また、結婚式で学生時代の思い出のアルバム中で使われることも結構あるらしい。使ってもらえるのはとても光栄なことである。
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