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裏方担当者の役割と必要人数

 演奏会時に表回りの裏方として、受付(もぎり、花束贈答品受付、チケット販売、置きチケット)、クローク、誘導係、ドアマン、連絡係、などがある。舞台袖に待機する人員としてステージマネージャーと舞台へのドアの開閉担当者、花束贈呈係、影アナウンス係が必要である。団によっては楽屋担当者を置くこともある。受付等に必要な人数はホールや集客の規模によって異なる。ホール側から必要人数を指示される場合もある。事前に入念な計画をたてて必要人数を確保しなければならない。演奏会の2か月前くらいから人集めをして1か月前には担当者が決まっていることが望ましい。

 人数調整で最も難しいのがもぎり(チケットテイク)担当者の人数である。少なすぎるのは混乱の原因となるが、多い分には問題はない。もぎり担当者の人数は受付ゲートのレーン数に比例する。使用しようとしているホールで開催される他団体の演奏会を事前に見に行くことができれば受付ゲートの様子をつかめる。理想的には、開場時刻前に並んだお客さんが5分以内にゲート通過できるようにレーン数を調整するのを目標とする。5分以上待たされてしまうと、遅いと感じるお客さんが多くなる。ゲート数が少なければ時間がかかるし、多いと人員が必要になる。チケットレスなら1分間に20~30人がゲートを通過できる。それ以上の速さとするためには、お客さんに前にどんどん進むように声かけをしなければならない。ゲートの通過スピードを上げるよりゲート数を増やした方がいい。お客さんの年齢層が高かったりゲート前後に階段があったりする場合のゲート通過速度はもう少し遅くなる。自由席制の場合、開場時刻より前に列をなして待っているお客さんの人数は、その演奏会の来場者数の1/5~1/3くらいの人数であることが多い。100人程度の行列でチケットがないなら、入場ゲートの数は1レーンでも5分程度でお客さんを通過させることができる。入場ゲートを通過しても、ホールロビーで混雑してしまうのは避けるべきである。ホールロビーが狭かったり階段を上らないと客席扉にたどり着けなかったりするようなホールは要注意である。また、受付ゲートのレーン数は、開場時刻以前に集まったお客さんが整列する列数にも影響される。3列で並んでいるのにゲートが4レーンだったりすると混乱する。その辺についても、事前にホールのルールを問い合わせておくといい。

 もぎり担当者はどのようなタイプのチケットがお客さんに配布されているのか知っておかなければならない。全員が紙のチケットを持参すると担当者が思っていたら、実は主催者が数人の招待客だけにチケットレス(顔パス)の案内状を出していた、というようなトラブルはよく聞く話である。紙のチケットの場合、それを回収するのか見せてもらうだけで回収しないのかについても事前の確認が必要である。回収した場合、待ち合わせや喫煙やコンビニへの買い物に一時退出した後の再入場についても考えておかなければならない。近年のチケットは従来の紙のものだけでなく、スマートフォンの画面表示のQRコードを読み取って確認するペーパーレスタイプのチケットもある。QRコードを読み込む場合、各個人のスマホで行うのはあまり好ましくない。お客さんからの印象が悪くなる。専用のバーコードリーダーを準備することは難しいかと思うが、学校が備品として保有しているようなノートパソコンやタブレットPCを使用した方が印象はよくなる。チケットを忘れた人への対応方法も事前に協議しておくべきである。基本的には入場をお断りするが、入場無料であったり空席が十分にあったりする場合は入場を認める場合もある。スクールオーケストラの場合はご両親が来客することが多く、我が子の晴れ姿を見ることができなくなるような状況はできるかぎり避けたいのが心情である。

 花束贈答品受付、チケット販売、寄付金募集の担当は、一人では行わない方がいい。特に金銭の授受が行われるチケット販売担当と寄付金募集担当は二人以上で担当すべきである。集客数が500人程度であれば花束贈答受付は二人でたりる。1000人規模の場合はもう少し人数が欲しい。花束等贈答については近年コロナの影響で減っており、また、主催側から断りを入れる場合も多い。花束贈答品受付では、お客さんから預かった物に、宛先である出演者のパート名および氏名と、お客さん自身の氏名を書いた札をつけていく。チケット販売はWebで完結するものが増えており、当日の開演時刻後でもWebで販売できるため、以前よりその重要性は減少している。当日券を販売するなら、おつりを十分に準備しなければならない。どのくらい準備すればいいかは簡単には決まらない。売るチケットの枚数とチケットの単価によって考えなければならない。現金はむき出しにしておかずに封筒などに入れ目立たないようにしておく。領収書も事前に必要事項を記入して準備しておくべきである。置きチケットを管理する人も必要である。置きチケットは、団員からお客さんに事前にチケットを渡せなかった場合に、当日受付にチケットを置いておきお客さんに取ってもらうシステムである。置きチケットは封筒に入れ、封筒には渡すお客さんの名前と差出人にあたる団員の名前を書いておく。置きチケットをお客さんの名前の五十音順に並べておけば一人でも対応はできる。

 ドアマンの必要人数は、ドアの数かその2倍の数である。ドアの内外に担当者を配置する場合もあるし、内側だけの場合もある。お客さんが演奏会に慣れているような客層であるのならドアマンがいなくても問題はない。演奏に支障を引き起こしやすい1階席前方だけドアマンを配置することもある。

 誘導担当者は、開場時刻前に集まったお客さんの整列を促したり、演奏中のお客さんの出入りをコントロールしたりする。開場時刻前の整列を誘導する人員の人数はホール側から指定されることがある。それ以外の誘導については主催者側の自主的な判断となるので、必要人数はケースバイケースである。客席が満席になるようなら、空席をわかりやすく案内するのも誘導係である。客席へはホール横側あるいは後側から入るが、後方からだと空席は非常に探しづらい。前方に立つと空席を探しやすいので、誘導係が前方から空席を探して空席の側に立ち手で合図を送るとお客さんはスムーズに座ることができる。また、誘導はドアマンとも協力して行うこともある。空席のそばで空席数を指でかかげ、合図された空席数をドアマンが見て扉付近でお客さんにその場所に行くように伝える、という手順を使う。逆にドアマンが指で必要客席数を指で合図し、その数の空席を誘導係が客席前方から探すというテクニックもある。連絡係が充実しているようなら、空席の多い位置を受付に伝え、受付の時点でどの扉から入るのがいいのかを案内することもできる。

 足腰の不自由なお客さんを適切に客席へと案内するのも誘導係の役割である。エレベータの把握はもちろんのこと、段差なしで客席まで到達できる経路を把握しておくべきである。バリアフリー化されたホールでは、エントランスから客席まで段差なしで到達できる経路が必ず1か所以上ある。車椅子用の場所が客席にあれば、その近くの扉へ向かう経路に段差がないことが多い。

 小さい子供は上の階からの方が見やすく、背丈が低いと1階席前方からでは全く見えないことがある。ただし、2階席、3解席の最前列は、前方の手すり位置が低いので動き回ってしまうような子供を案内するには不適である。
連絡担当者は少人数でかまわない。そのような役割を置かない場合の方が多い。連絡担当者はステージ袖、受付、各ドア間の伝令に走り回ることになる。各役割の担当者が自身の仕事を十分に理解し、突発的なトラブルがなければ無用の役である。伝令の担当者が動き回らなければならない状態は、事前打ち合わせに何か抜けが生じていたのではないかと反省しなければならない状態なのかもしれない。

 スクールオーケストラではクロークを設置しないことが多く、担当者も置かれないことが多い。荷物を預かっても傷をつけてしまったり演奏終了時に正しく返却するのが難しかったりするからである。できることならクロークを開けない方が楽である。クロークには貴重品や高価なものを預けないことが原則であるが、時々楽器を預かってほしいというリクエストをお客さんからもらうことがある。楽器の預かりに関しても指定席制であったり満席で客席内に余分なスペースがなかったりする場合を除いて丁寧にお断りした方が安全である。

 ステージマネージャーは最低でも一人は必要である。ステージマネージャーを置かなくても自動的に演奏会は進行していくが、それでは突発的な出来事への対応はできない。ステージマネージャーがいい仕事をすることによって演奏会の会としてのレベルは上がるものである。有能なステージマネージャーと一緒に仕事をしたことがないとその必要性を感じないのかもしれない。

 舞台への扉の開閉係は上手側と下手側の二人が必要である。下手側についてはステージマネージャーが兼務するということでかまわない。演奏会中に演奏者が自分で扉を開け閉めしないように常に扉の舞台袖側にいる必要がある。演奏中は扉が開いてしまわないようにロックをすることもあり、その場合、そのロックの管理をしっかりとしないと演奏者が舞台から袖に下がることができなくなってしまう。逆に、演奏者が出入りする時は扉を開放状態でロックする場合もある。ロックと表現しているが、フックをひっかけたり砂袋で固定したりするタイプであることが多い。本番開始時に演奏者が出終わったら担当者は扉を閉めなければならない。演奏者が極度に緊張していると、扉と壁を区別できなくなってしまうことがある。演奏者が間違えて壁を押して開けようとしないように注意ぶかく見ておき、演奏者が扉に近づいたら、まるで自動ドアのように開閉することが望ましい。

 楽屋担当者は、指揮者、ゲスト演奏者、エキストラなどの付き人的な役割を果たすこともあるし、単なる鍵番であることもある。その他、各楽屋に備品(ゴミ袋等)を配布したり片づけたり、お弁当の配布をしたりする。大学のオーケストラでは楽屋担当者を配置することが多いが、高校生以下のスクールオーケストラでは楽屋担当者を置かないことが多い。

 花束贈呈係は、文字通りの仕事をする。指揮者、コンサートマスター、部長などに渡すことが多い。花束を渡す人数分必要である。最近は花束を渡さない演奏会も増えている。ステージ上に上がるのできちんとした洋服を着るべきだが目立ってはいけないので、たいていは地味な色のスーツを着用する。花束を渡すためにステージに出るタイミングはステージマネージャーが指示してくれる。ステージに出るタイミングを躊躇してしまうと指揮者が戻ってきてしまうので、指揮者がステージの中央にいるときに渡せるように思い切って行くことが肝心である。花束は受け取る相手が花を見やすいように渡すのが本来の形式だが、ステージ上ではお客さんにきれいに見えるように持ち運ぶといい。要するに、下手側から出ていく場合、左手で花束の根本をもち、右手で花束の頭の方を支える。そのようにすれば、受け取る人が右手で花束を持つことができるという利点もある。コンサートマスターが花束を受け取る際は楽器を一度置くか片手で受け取ることになる。楽器を持っていると両手で受け取れないので配慮が必要である。花束を渡すときは一言会話を交わすのが慣例である。花束贈呈係の担当者は慣例として団にゆかりのある人が行う。スクールオーケストラだと前任の引退した先輩が行うことが多い。適当な人員を確保できない時は、舞台袖の扉の担当者や外回りの受付担当者などが行えば大丈夫である。

 影アナウンス係も文字通り影アナウンス(影アナ)を担当する。一人いれば十分である。女性が担当することが多い。予め録音されたものがホールに準備されていれば、スイッチを押すだけでアナウンスが流れることもある。影アナの原稿は形式化されているので、一般的なことを原稿に書き出しておけば済む。形式化された原稿例は、「コンサート 影アナウンス 例文」をキーワードにインターネット検索すればたくさん見つかる。ホールから決められた原稿を渡されることもある。形式化された原稿を使わず自分たちの手作りとする場合は、誰か詳しい人に添削してもらうことをお勧めする。アナウンスを行う際は、マイクに口を近づけ、ゆっくりと話すのがコツである。原稿が書かれた紙は、マイクの下に置くのではなく、マイクの向こう側で持った方がマイクに対して口が正面を向くし、姿勢もよくなるので発声もよくなる。音量は、普段の話しやすい音量で話せばよく、ボリュームのコントローラーで音量は調節する。練習時にボリュームを決めたら、その位置にメモリをつけておく。メモリをつけるためにマスキングテープや養生テープを小さく切ったものを準備しておくといい。また練習時にマイクと口の距離感をつかんでおくようにする。ボリュームのコントローラーの位置を決めても、マイクと口の距離が変わってしまうと放送される音量が変わってしまう。

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